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バスルームで湯船に浸かりながらサーラに優しく髪を洗ってもらっていると、ようやく落ち着いてきて安心からまた涙がポロポロとこぼれてくる。
「ふぇっ…ふっ…。い…生きてるぅ…。よかっ…たぁ~。あっ…ひっく…。ふっ…。」
本当、今回は死ぬかと思った。
ポールさんが悪い人とか怖いとかじゃなくて、今までの運命的に100%死ぬタイミングだった!私生きてる…。信じられないっ!なんで?でも…嬉しいっ。今まで死にたくないって何回も思って、願って、願って…それでも危機は回避出来ずにいたのに…。今回はまだ生きてる!
私はこの転生の運命から初めて一歩抜け出した様な気がして感動さえ覚えていた。
「ミュラお嬢様っ!!申し訳ございません!わたっ…私がついていながらっ…。ミュラお嬢様に怖い想いをさせてしまって…。専属侍女失格ですぅぅ~っ。」
わぁーん、と盛大に泣き始めたサーラと一緒に私もわんわん泣いて…長いバスタイムを終える頃には二人とも目がパンパンに腫れていた。
バスルームを出て、サーラに抱っこされながら隣の衣装部屋へ行けばソファーにキュアネ様がゆったりと座っていた。
お…おぉお…王女様が何故私の部屋にっ!?
衣装部屋は広くソファーやテーブルが置かれているが、プライベートな空間で普段お兄様達もここには入ってこない。当然王女様をお招きするような部屋でも無く…。
なんといっても私、今バスローブ姿です。あ、中にパンツとキャミソールは着ていますが…。それでも王女様にお会いする格好では無い。
あれ?そういえばアレス王子様がポールさんの姿を見て不敬罪とか言ってなかった?え?服をきちんと着ていてもアウトなら、今の私はもっとアウトなんじゃない?
サーラもキュアネ様がいらっしゃる事に驚いた様で二人して無言で固まっていると、キュアネ様がこちらに気付き声をかけてくれた。
「ミュラ…。あまりに遅い故、心配して部屋に通してもらったのじゃ。こちらの部屋まで泣き声が聞こえてきたが…大丈夫かの?」
「は…はい。すみません、あの…こんな格好で…申し訳ありません。」
「あぁ、良い良い。女同士じゃ、気にするでない。ミュラ、こちらにおいで。」
サーラに下ろしてもらい、私はキュアネ様の側まで歩いて行き頭を下げる。
「この度はご心配をおかけして申し訳ありません。」
「謝らなくてよい。ミュラは何も悪くないのじゃ。さぁ、こちらに座って。」
えっと…どこに?キュアネ様の横は不味いよね。私は恐る恐るカーペットの敷かれた床にペタンと座る。
「ぷっ、ミュラ…、可愛らしいがそこでは無い。我の隣へおいで。」
キュアネ様にクスクスと笑われて、ボッと顔が赤くなる。うぅ、恥ずかしいぃ~っ。
「失礼致します…」消え入る様な声で、私はちょこんとソファーに座った。
「顔を…よく見せて。」
キュアネ様に優しく頬に手を添えられ、促されるようにおずおずと顔を上げれば、真っ赤な瞳に捕らわれて目がそらせない。
「可哀相に…泣きすぎて目が腫れているな。そこの侍女、サーラと申したか。お主も酷い顔じゃ。ここは我に任せて、お主も少し目を冷やしてくるがよい。」
「し…しかし、ミュラお嬢様のお支度が…。」
「大丈夫じゃ。我の侍女が扉の前に待機しておる。其奴に任せれば良い。さ、早う行きなさい。」
「は…はい。申し訳ございません。お気遣いいただきありがとうございます。」
サーラはペコリと頭を下げ、私をチラチラと気にしながらも部屋を出て行った。
サーラが出て行った後、すぐキュアネ様の侍女さんが入室されるのかと思いきや誰も入って来ない。
え…王女様と部屋に二人きりとか、この状況大丈夫なの?不敬罪とか、なんかよくわからないけど、ホラ、いろいろなんかヤバイんじゃない?
あぁ頭がパニックでぼーっとしてきた。長湯と泣きすぎたせいもあるかもしれない。
「ミュラ…」
ギシッとソファーが音を立ててキュアネ様がこちらに近づき、両手で頬を包まれる。
キュアネ様のお顔が近づいて来て思わず目をぎゅっと閉じれば、両瞼にキスをされた。
「ほら、もう大丈夫じゃ。目を開けてごらん。」
そっと目を開けると、さっきより目がスッキリしている気がする。ぼーっとしていた頭もクリアになった。
「簡単なヒーリング魔法じゃ。目の腫れは綺麗に引いたようじゃな。体調は悪くないか?」
「すごい…。ありがとうございます。」
「構わぬ。やっと笑ってくれたな。さて、我の侍女を呼ぼうか。(そろそろ兄上も限界じゃろうしの…。)」
最後はよく聞こえなかったけど、聞き返す前にキュアネ様の侍女の方々がすごいタイミングで入室してきて、私はあっという間に支度をされていく。
キュアネ様、なんの合図もしてなかったのに侍女の方々は何故わかったんだろう…。王家の侍女ってすごいな…。
「ふぇっ…ふっ…。い…生きてるぅ…。よかっ…たぁ~。あっ…ひっく…。ふっ…。」
本当、今回は死ぬかと思った。
ポールさんが悪い人とか怖いとかじゃなくて、今までの運命的に100%死ぬタイミングだった!私生きてる…。信じられないっ!なんで?でも…嬉しいっ。今まで死にたくないって何回も思って、願って、願って…それでも危機は回避出来ずにいたのに…。今回はまだ生きてる!
私はこの転生の運命から初めて一歩抜け出した様な気がして感動さえ覚えていた。
「ミュラお嬢様っ!!申し訳ございません!わたっ…私がついていながらっ…。ミュラお嬢様に怖い想いをさせてしまって…。専属侍女失格ですぅぅ~っ。」
わぁーん、と盛大に泣き始めたサーラと一緒に私もわんわん泣いて…長いバスタイムを終える頃には二人とも目がパンパンに腫れていた。
バスルームを出て、サーラに抱っこされながら隣の衣装部屋へ行けばソファーにキュアネ様がゆったりと座っていた。
お…おぉお…王女様が何故私の部屋にっ!?
衣装部屋は広くソファーやテーブルが置かれているが、プライベートな空間で普段お兄様達もここには入ってこない。当然王女様をお招きするような部屋でも無く…。
なんといっても私、今バスローブ姿です。あ、中にパンツとキャミソールは着ていますが…。それでも王女様にお会いする格好では無い。
あれ?そういえばアレス王子様がポールさんの姿を見て不敬罪とか言ってなかった?え?服をきちんと着ていてもアウトなら、今の私はもっとアウトなんじゃない?
サーラもキュアネ様がいらっしゃる事に驚いた様で二人して無言で固まっていると、キュアネ様がこちらに気付き声をかけてくれた。
「ミュラ…。あまりに遅い故、心配して部屋に通してもらったのじゃ。こちらの部屋まで泣き声が聞こえてきたが…大丈夫かの?」
「は…はい。すみません、あの…こんな格好で…申し訳ありません。」
「あぁ、良い良い。女同士じゃ、気にするでない。ミュラ、こちらにおいで。」
サーラに下ろしてもらい、私はキュアネ様の側まで歩いて行き頭を下げる。
「この度はご心配をおかけして申し訳ありません。」
「謝らなくてよい。ミュラは何も悪くないのじゃ。さぁ、こちらに座って。」
えっと…どこに?キュアネ様の横は不味いよね。私は恐る恐るカーペットの敷かれた床にペタンと座る。
「ぷっ、ミュラ…、可愛らしいがそこでは無い。我の隣へおいで。」
キュアネ様にクスクスと笑われて、ボッと顔が赤くなる。うぅ、恥ずかしいぃ~っ。
「失礼致します…」消え入る様な声で、私はちょこんとソファーに座った。
「顔を…よく見せて。」
キュアネ様に優しく頬に手を添えられ、促されるようにおずおずと顔を上げれば、真っ赤な瞳に捕らわれて目がそらせない。
「可哀相に…泣きすぎて目が腫れているな。そこの侍女、サーラと申したか。お主も酷い顔じゃ。ここは我に任せて、お主も少し目を冷やしてくるがよい。」
「し…しかし、ミュラお嬢様のお支度が…。」
「大丈夫じゃ。我の侍女が扉の前に待機しておる。其奴に任せれば良い。さ、早う行きなさい。」
「は…はい。申し訳ございません。お気遣いいただきありがとうございます。」
サーラはペコリと頭を下げ、私をチラチラと気にしながらも部屋を出て行った。
サーラが出て行った後、すぐキュアネ様の侍女さんが入室されるのかと思いきや誰も入って来ない。
え…王女様と部屋に二人きりとか、この状況大丈夫なの?不敬罪とか、なんかよくわからないけど、ホラ、いろいろなんかヤバイんじゃない?
あぁ頭がパニックでぼーっとしてきた。長湯と泣きすぎたせいもあるかもしれない。
「ミュラ…」
ギシッとソファーが音を立ててキュアネ様がこちらに近づき、両手で頬を包まれる。
キュアネ様のお顔が近づいて来て思わず目をぎゅっと閉じれば、両瞼にキスをされた。
「ほら、もう大丈夫じゃ。目を開けてごらん。」
そっと目を開けると、さっきより目がスッキリしている気がする。ぼーっとしていた頭もクリアになった。
「簡単なヒーリング魔法じゃ。目の腫れは綺麗に引いたようじゃな。体調は悪くないか?」
「すごい…。ありがとうございます。」
「構わぬ。やっと笑ってくれたな。さて、我の侍女を呼ぼうか。(そろそろ兄上も限界じゃろうしの…。)」
最後はよく聞こえなかったけど、聞き返す前にキュアネ様の侍女の方々がすごいタイミングで入室してきて、私はあっという間に支度をされていく。
キュアネ様、なんの合図もしてなかったのに侍女の方々は何故わかったんだろう…。王家の侍女ってすごいな…。
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