【R18】101回目の転生~天然無自覚少女は溺愛に気付かない~

しろ

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「まぁまぁまぁ!なんとお美しい!」
「お肌はシミ一つない絹のような白さで、お髪も艶やかでございますね!」
「全てが愛らしいですわ!まるで天使のよう」

先程から王家の侍女さん方にお世辞を連発されている。手際も良ければ誉め上手だ。プロだわ。

私はというと、そんな侍女さん3人とキュアネ様の前で完成した姿を見せるように立たされていた。モデルさんのようにポーズはとれないので、当然棒立ちデス。
ちなみに今着ている服は、私のクローゼットの物ではない。白地にレースがたっぷりついたプリンセスラインのワンピースで、胸元とウエストには赤いリボンがついている。髪にもお揃いの赤いリボンをつけてもらった。
どうやらキュアネ様がプレゼントしてくださった服のようだけれど、どうしてサイズがピッタリなんだろう?
キュアネ様とは1歳の誕生日に会って以来で、そもそも私の存在など覚えていないと思っていたのに…。こうして細部まで配慮してくださるなんて、なんて良い人なんだろう。

「あの…キュアネ様、お洋服ありがとうございます。侍女の方々も、ありがとうございました。」

照れながらもお礼を言えば、侍女さん方が「きゃ~可愛らしい」と更に誉めてくれる。

「気に入ってくれて良かったのじゃ。さぁ、では一緒に参ろうか。」

キュアネ様が手を取って自然とエスコートしてくれる。美しい笑みを向けられれば、女の子同士なのにドキドキしてしまう。


部屋のドアを出ればサーラが頭を下げて待っていた。
「キュアネ王女様、先程は申し訳ございませんでした。ご案内いたします。」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

客間へ入るとカインお兄様、アレス王子様に加えパパとママも一緒にいた。
そして見たことの無い使用人の方々が客間の中にも外にも待機している。アレス王子様のお付きの方々かしら?

予想外に多くの人を待たせていた事にびっくりして、私は入室するや否や頭を下げた。

「皆様、お待たせしてしまい申し訳ございません。」

「ミュラ嬢!全然構わないよ。さぁ、こちらへ座って。」

アレス王子様が満面の笑みで声をかけてくれる。キュアネ様といい、アレス様といい、王族の方々って皆様気さくで優しいのね。

私は部屋の中にいる使用人の方々にもペコリと会釈しながら、キュアネ様に手を引かれ着席した。アレス様とキュアネ様の間に…。

え?!私が真ん中?!
詰めれば5人ほど座れそうな大きなソファーの中央に、アレス様と私とキュアネ様の3人が密着して座る形になる。
なぜこの席順なの?しかも凄く距離が近い…。
不敬罪とか、不敬罪とか…えっと?貴族のマナーはまだよくわからないけれど、大丈夫なのかしら?

しかも着席してもキュアネ様は手を繋いだまま。でも、パパとママは何も言わないから大丈夫なのかしら?これが普通??普通なの?
ママはニコニコしてるけれど、パパは…笑顔だけどいつもとちょっと違う気がする…あれはどういう表情なの?カイ兄様はあからさまに嫌そうな顔をしているし…。

周りをキョロキョロしていれば、アレス王子様にもう片方の手を取られ、

「マジェスティ王家の第一王子、アレス・オブ・マジェスティだ。アレスと呼んで。ミュラ嬢とは1歳の誕生日に一度会っているけれど…覚えてはいかいかな?ふふ、これからよろしくね。」

チュッと手の甲に挨拶のキスを落とされる。
私も挨拶をしようと立ち上がろうとするが、左手はキュアネ様、右手はアレス様に繋がれたままで動けない。
失礼かとは思うが座ったまま挨拶をする。

「ロレイル公爵家の長女、ミュラ・ド・ロレイルです。お目にかかれて光栄です。どうぞよろしくお願いいたします。」

1歳の誕生日の事はしっかり覚えているけれど、それは私の中身が転生を繰り返しているからで、普通の子供は覚えていないだろう。だから私はあえてそこは濁して答えた。

「親しみを込めてチークキスをしたいんだけど、いいかな?」

カイ兄様にチークキスの方法を教えてもらっていて良かった!ちょっと恥ずかしいけれど、やはり挨拶の方法としては一般的なのね。
私が笑顔で頷くとアレス様は私の左側の頬にチュッとキスをしてくれたから、私もアレス様の頬にチュッとキスを仕返す。

その瞬間、ガタッと椅子の音を立ててカイ兄様が立ち上がる。
「ミューっ!」

「なんだカイン、マナーがなってないぞ?それに引き換えミュラ嬢は偉いな。チークキスの挨拶も完璧だ。」

「アレス…お前なぁ…。」
カイ兄様は何か言いかけたけれど口をつぐんでしまう。どうしたのかしら?

「コホン。マジェスティ王家の第一王女、キュアネ・オブ・マジェスティじゃ。改めてよろしくの、ミュラ。」

「ロレイル公爵家の長女、ミュラ・ド・ロレイルです。よろしくお願いいたします。」

キュアネ様は私の右頬にチュッとチークキスしてくれたので、私もキュアネ様の頬にチュッとキスを仕返した。

それを見たママは「きゃ~可愛らしいわね。」と一人はしゃいでいたけれど、パパとカイ兄様は笑顔だけど絶対笑ってない、怒りのオーラを発していた。
え?なんで??
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