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101.【ミュラ8歳】~ロイside~
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「ミュ~ラ~」
「ふふふ、どうしたんですか?ロイお兄様。」
小言を言うサーラを追い出し、ミュラの部屋に二人きりの時間を勝ち取った。今日はカイン兄様もラナンも居ない。そう、邪魔者は誰も居ないのだ!
ミュラが王宮に通うようになって2年が過ぎた。当然の如くミュラは皆に愛されるようになり、ミュラもまた交流を深めていっている。
以前は部屋を伺えば必ずミュラが居たけれど、最近は不在にしている事も多く、こうして二人きりで過ごせる時間は久しぶりだった。
ソファーで股の間にミュラを座らせ、後ろから抱き締める。ミュラの後頭部に頭をグリグリと押し付ければ、クスクス笑うミュラの声が心地良い。
「最近ミュラが構ってくれないから拗ねてるだけ。」
「えぇ~?そうかな??」
「そうだよ。昨日だってクロノスの所に行ってただろ。」
「あれは魔法の練習で…」
と言い淀むミュラの頬がポッと赤くなったのを俺は見逃さなかった。
「なに?…何かあった?」
「魔力の流れの練習で…ちょっとからかわれただけっ。」
「ふうん?」
その時、下を向いたミュラの髪がハラリと動き、白いうなじに赤いキスマークが見えた。
「ねぇ、これ何?」
赤い跡をトンと指で押し、左手はミュラをギュッと抱き締めた。
「え?何かある?」
「…ここ、クロノスにキスされた?」
自分でも分かるくらい低い声になった。
「ぅえっ?!な…なんで知って…?!」
「チッ…あいつ…」
クロノスの奴、絶対殴る。
俺だってまだキスマークつけた事無いのに。
ラナンといい、クロノスといい、己の欲望をミュラに押し付け過ぎだ。
キスマークに上書きしてやりたい。
だけど、それじゃあいつらと一緒だ。
ポールの件で俺は誓ったはずだ。もう二度とミュラを傷つけないって。
ぐっと我慢し、ミュラのキスマークをヒーリング魔法で消す。
「はぁ……。」
ミュラの後頭部に頭をグリグリと押し付ける。
「ロイお兄様??さっきから本当にどうしたの?大丈夫?」
「大丈夫じゃない…。でも、大丈夫。」
「えぇ~??」
「なぁ、ミュラ。もうちょい危機感持ってくれ。」
「危機感?」
「色んな奴にキスされ過ぎ。」
「クロノス様のは…魔力の流れの練習で…キスとかそういうのじゃないと思うけど?」
「それがダメ。男はみんなオオカミだと思いなさい。下心が無い奴なんて居ないんだから。」
「うーん…?ロイお兄様もオオカミ?」
クルッと振り向き上目遣いでじっと見つめてくるの…それ反則だから。そういうのどこで覚えてくんの?はぁ…無自覚でやってんだろうな。
「はぁ…俺もオオカミ。だから、食べられないように気を付けて。」
「食べられるの?痛いのはやだなぁ。」
「だから…。はぁ、もうお前はぁー。」
俺の気も知らないで…。ホント勘弁してくれ。
ぎゅうぅときつく抱き締めれば「きゃー」と笑いながら足をバタバタさせて喜んでるミュラに、惚れた俺の負けだなぁと思う。
「好きだよ、ミュラ。」
「私もロイお兄様大好き!」
迷うことなく言ってくれるミュラの『好き』は家族のなんだろうなと思う。
「俺の方が好きだから。」
「えー、私も大好きだもん。ロイお兄様の好きな所たくさん言えるよ。」
「恥ずかしいから言わないで…。」
何それ、俺を殺す気?
好き過ぎて胸が苦しくて死にそう。
「ロイお兄様照れてるの?可愛い。ふふ」
「ミュラの方が可愛い。可愛すぎてお兄さんは心配です。」
「あ、知ってる?こういうのシスコンって言うんだって。私はブラコン?」
「もー何でもいい。妹じゃなくても好きだし。どんなミュラでも好き。」
「愛の告白みたいだね。」
「そうだよ。」
童話に出てくる王子様みたい!と笑うミュラを抱き締めながら、いつになったらこの想いが伝わるのかな…と何度目か分からないため息をはいた。
「ふふふ、どうしたんですか?ロイお兄様。」
小言を言うサーラを追い出し、ミュラの部屋に二人きりの時間を勝ち取った。今日はカイン兄様もラナンも居ない。そう、邪魔者は誰も居ないのだ!
ミュラが王宮に通うようになって2年が過ぎた。当然の如くミュラは皆に愛されるようになり、ミュラもまた交流を深めていっている。
以前は部屋を伺えば必ずミュラが居たけれど、最近は不在にしている事も多く、こうして二人きりで過ごせる時間は久しぶりだった。
ソファーで股の間にミュラを座らせ、後ろから抱き締める。ミュラの後頭部に頭をグリグリと押し付ければ、クスクス笑うミュラの声が心地良い。
「最近ミュラが構ってくれないから拗ねてるだけ。」
「えぇ~?そうかな??」
「そうだよ。昨日だってクロノスの所に行ってただろ。」
「あれは魔法の練習で…」
と言い淀むミュラの頬がポッと赤くなったのを俺は見逃さなかった。
「なに?…何かあった?」
「魔力の流れの練習で…ちょっとからかわれただけっ。」
「ふうん?」
その時、下を向いたミュラの髪がハラリと動き、白いうなじに赤いキスマークが見えた。
「ねぇ、これ何?」
赤い跡をトンと指で押し、左手はミュラをギュッと抱き締めた。
「え?何かある?」
「…ここ、クロノスにキスされた?」
自分でも分かるくらい低い声になった。
「ぅえっ?!な…なんで知って…?!」
「チッ…あいつ…」
クロノスの奴、絶対殴る。
俺だってまだキスマークつけた事無いのに。
ラナンといい、クロノスといい、己の欲望をミュラに押し付け過ぎだ。
キスマークに上書きしてやりたい。
だけど、それじゃあいつらと一緒だ。
ポールの件で俺は誓ったはずだ。もう二度とミュラを傷つけないって。
ぐっと我慢し、ミュラのキスマークをヒーリング魔法で消す。
「はぁ……。」
ミュラの後頭部に頭をグリグリと押し付ける。
「ロイお兄様??さっきから本当にどうしたの?大丈夫?」
「大丈夫じゃない…。でも、大丈夫。」
「えぇ~??」
「なぁ、ミュラ。もうちょい危機感持ってくれ。」
「危機感?」
「色んな奴にキスされ過ぎ。」
「クロノス様のは…魔力の流れの練習で…キスとかそういうのじゃないと思うけど?」
「それがダメ。男はみんなオオカミだと思いなさい。下心が無い奴なんて居ないんだから。」
「うーん…?ロイお兄様もオオカミ?」
クルッと振り向き上目遣いでじっと見つめてくるの…それ反則だから。そういうのどこで覚えてくんの?はぁ…無自覚でやってんだろうな。
「はぁ…俺もオオカミ。だから、食べられないように気を付けて。」
「食べられるの?痛いのはやだなぁ。」
「だから…。はぁ、もうお前はぁー。」
俺の気も知らないで…。ホント勘弁してくれ。
ぎゅうぅときつく抱き締めれば「きゃー」と笑いながら足をバタバタさせて喜んでるミュラに、惚れた俺の負けだなぁと思う。
「好きだよ、ミュラ。」
「私もロイお兄様大好き!」
迷うことなく言ってくれるミュラの『好き』は家族のなんだろうなと思う。
「俺の方が好きだから。」
「えー、私も大好きだもん。ロイお兄様の好きな所たくさん言えるよ。」
「恥ずかしいから言わないで…。」
何それ、俺を殺す気?
好き過ぎて胸が苦しくて死にそう。
「ロイお兄様照れてるの?可愛い。ふふ」
「ミュラの方が可愛い。可愛すぎてお兄さんは心配です。」
「あ、知ってる?こういうのシスコンって言うんだって。私はブラコン?」
「もー何でもいい。妹じゃなくても好きだし。どんなミュラでも好き。」
「愛の告白みたいだね。」
「そうだよ。」
童話に出てくる王子様みたい!と笑うミュラを抱き締めながら、いつになったらこの想いが伝わるのかな…と何度目か分からないため息をはいた。
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