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国王陛下との面談を終え、私たちは再びパーティ会場の大広間へと戻ってきた。
扉が開いた瞬間、ざわめきが波のように押し寄せてくる。
先ほどの「横領騒ぎ」と、その後の「別室への呼び出し」。
貴族たちの好奇心は最高潮に達しており、まるで餌を待つ鯉のように口をパクパクさせながら、私たちの帰還を待ちわびていたようだ。
「……視線が痛いですね」
「気にするな。今からもっと痛くしてやる」
アレクセイ公爵は不敵に笑うと、私の手を引き、会場の最奥にある一段高いステージ――本来なら王族が挨拶をするための場所へと向かった。
「え、閣下? そっちは……」
「黙ってついてこい。お前の『時給』には、この茶番劇への出演料も含まれている」
「なら、やります」
私は即座に覚悟を決めた。
特別手当が出るなら、ピエロにでも何にでもなろう。
ステージに上がった公爵は、片手を挙げた。
たったそれだけの動作で、楽団の演奏がピタリと止まり、会場が静まり返る。
王族以上のカリスマ性。
いや、恐怖政治と言うべきか。
「諸君」
よく通るバリトンボイスが、ホールに朗々と響く。
「今宵、このめでたい席で、私の口から正式に発表したいことがある」
ゴクリ、と誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。
公爵は一呼吸置き、隣に立つ私を腕の中に引き寄せた。
「私、アレクセイ・ヴァン・ルークは、ここにいるメリーナ・アシュフォード嬢と婚約したことを報告する」
「おおぉ……!」
会場からどよめきが上がる。
ここまでは想定内だ。
すでに噂は広まっているし、陛下への根回し(脅し)も済んでいる。
だが、公爵の「重大発表」はここからだった。
彼は愛おしそうに私の肩を抱き、全貴族を見渡して宣言した。
「これは、家同士の政略結婚でも、王家の命令によるものでもない。……私自身が、彼女を渇望し、求婚したのだ」
「……は?」
私は思わず、公爵の横顔を見上げた。
渇望?
求婚?
いやいや、あれは「ヘッドハンティング」でしたよね?
条件闘争でしたよね?
公爵は私の視線に気づかないふりをして、さらに言葉を続ける。
「彼女は、私の凍てついた心を溶かした、唯一無二の女性だ。彼女の聡明さ、強さ、そして……愛らしさに、私は魂を奪われた」
会場の令嬢たちが「きゃあぁぁ!」と黄色い悲鳴を上げ、紳士たちが「あの氷の公爵が……!」と驚愕している。
私は冷や汗をかきながら、公爵の袖をちょいちょいと引っ張った。
「(……あの、閣下? 閣下?)」
私は極小の声で囁く。
「(設定が盛りすぎではありませんか? 契約書には『業務上のパートナー』としか書いてありませんが……)」
「(……シッ。黙っていろ)」
公爵は口元を動かさずに囁き返した。
「(これが一番、手っ取り早く周囲を黙らせる方法だ。それに……見ろ、あそこの柱の陰を)」
彼が目線で示した先。
そこには、亡霊のように青ざめたジュリアン王太子と、化粧が崩れたリラ男爵令嬢がへたり込んでいた。
二人は、公爵の「魂を奪われた」という言葉を聞いて、絶望的な顔をしている。
「(あいつらに『自分たちが捨てたものが、いかに価値あるものだったか』を理解させるには、私が狂ったように溺愛してみせるのが一番効果的なのだ)」
「(……なるほど。精神攻撃ですか。性格が悪くて安心しました)」
私は納得した。
これは演技だ。
完璧なビジネス・ロマンスだ。
そう思うと、恥ずかしさも消え失せ、私は「愛される婚約者」の顔を作った。
「アレクセイ様……嬉しいですわ」
私はうっとりとした表情で、公爵の胸に頭を預けた。
「私も、貴方様をお慕いしております……(特に財力を)」
「ああ、愛しいメリーナ……(特に事務処理能力を)」
私たちは見つめ合い、完璧な愛の劇場を演じた。
会場は感動の渦に包まれている。
「なんて素敵なお二人なの!」
「真実の愛だわ!」
「それに比べて、あっちの元婚約者は……」
空気は完全にこちらに味方した。
公爵は満足げに頷くと、再び会場に向き直った。
「よって、宣言する! 彼女は私の『最愛の婚約者』であり、ヴァン・ルーク家の次期女主人となる! 彼女に対する無礼は、私に対する宣戦布告と見なす!」
「ヒィッ……」
貴族たちが一斉に背筋を伸ばす。
「今後、彼女の過去(婚約破棄)について陰口を叩く者がいれば、即刻我が領地との取引を停止し、全鉱山の供給を止める。……覚悟しておけ」
脅迫だ。
愛の告白の皮を被った、国家規模の経済制裁予告だ。
しかし、その圧倒的な力強さに、令嬢たちはさらに熱狂した。
「素敵! 守られたい!」
「最強のスパダリだわ!」
公爵は勝ち誇った顔で、私に向き直った。
「さあ、メリーナ。誓いのキスだ」
「……はい?」
私は耳を疑った。
「え、誓いのキス? ここで? 契約書には『身体的接触は手繋ぎまで』と……」
「オプション追加だ。特別ボーナスを出す」
「金貨十枚」
「五枚だ」
「八枚」
「……よかろう。交渉成立だ」
小声での価格交渉が一瞬でまとまる。
公爵は私の腰を引き寄せ、ゆっくりと顔を近づけた。
会場の視線が一点に集中する。
ジュリアンが「やめろぉぉぉ!」と叫ぼうとして、リラに口を塞がれているのが見える。
(仕事よ、メリーナ。これは金貨八枚分の仕事……!)
私は目を閉じ、心を無にした。
触れるか触れないかの距離。
公爵の吐息がかかる。
そして。
チュッ。
唇に、温かい感触が落ちた。
それは予想に反して、とても優しく、甘く、そして長かった。
(……ん?)
長い。
契約では「フリ」か、一瞬の接触のはずだ。
これでは、まるで本当に……。
数秒後、ようやく唇が離れると、公爵は少しだけ顔を赤らめ、そして満足げに微笑んでいた。
「……悪くない」
彼はボソリと呟いた。
会場からは割れんばかりの拍手喝采。
私は呆然と立ち尽くし、熱くなった自分の唇に指を触れた。
「(……今の、本当に演技?)」
私の心臓が、契約外の速度で跳ねている。
これは不整脈だろうか。
それとも、糖分の摂りすぎだろうか。
「さあ、降りるぞ。主役の座は十分に堪能した」
公爵は何食わぬ顔で私の手を取り、ステージを降りていく。
その背中は、いつもの冷静な彼に戻っていたが、繋いだ手は痛いくらいに強く握られていた。
人混みの中、私たちはジュリアンの前を通り過ぎる。
彼は、魂が抜けたように座り込んでいた。
「兄上……嘘だろ……」
彼は譫言のように繰り返している。
「あんな……あんな顔、見たことない……。兄上が、女にあんな……」
彼には分かったようだ。
兄であるアレクセイ公爵のキスが、単なる演技や嫌がらせのレベルを超えていたことが。
ざまあみろ、と言いたいところだが。
今の私は、それどころではなかった。
(どうしよう……。明日から、どんな顔をして『定時退社』を主張すればいいの?)
公爵の「公言」と「キス」によって、私たちの関係(ビジネスライク)は、大きく狂い始めていた。
それは、私にとっても、そしておそらく公爵にとっても、「誤算」を含んだ甘いトラブルの幕開けだったのだ。
扉が開いた瞬間、ざわめきが波のように押し寄せてくる。
先ほどの「横領騒ぎ」と、その後の「別室への呼び出し」。
貴族たちの好奇心は最高潮に達しており、まるで餌を待つ鯉のように口をパクパクさせながら、私たちの帰還を待ちわびていたようだ。
「……視線が痛いですね」
「気にするな。今からもっと痛くしてやる」
アレクセイ公爵は不敵に笑うと、私の手を引き、会場の最奥にある一段高いステージ――本来なら王族が挨拶をするための場所へと向かった。
「え、閣下? そっちは……」
「黙ってついてこい。お前の『時給』には、この茶番劇への出演料も含まれている」
「なら、やります」
私は即座に覚悟を決めた。
特別手当が出るなら、ピエロにでも何にでもなろう。
ステージに上がった公爵は、片手を挙げた。
たったそれだけの動作で、楽団の演奏がピタリと止まり、会場が静まり返る。
王族以上のカリスマ性。
いや、恐怖政治と言うべきか。
「諸君」
よく通るバリトンボイスが、ホールに朗々と響く。
「今宵、このめでたい席で、私の口から正式に発表したいことがある」
ゴクリ、と誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。
公爵は一呼吸置き、隣に立つ私を腕の中に引き寄せた。
「私、アレクセイ・ヴァン・ルークは、ここにいるメリーナ・アシュフォード嬢と婚約したことを報告する」
「おおぉ……!」
会場からどよめきが上がる。
ここまでは想定内だ。
すでに噂は広まっているし、陛下への根回し(脅し)も済んでいる。
だが、公爵の「重大発表」はここからだった。
彼は愛おしそうに私の肩を抱き、全貴族を見渡して宣言した。
「これは、家同士の政略結婚でも、王家の命令によるものでもない。……私自身が、彼女を渇望し、求婚したのだ」
「……は?」
私は思わず、公爵の横顔を見上げた。
渇望?
求婚?
いやいや、あれは「ヘッドハンティング」でしたよね?
条件闘争でしたよね?
公爵は私の視線に気づかないふりをして、さらに言葉を続ける。
「彼女は、私の凍てついた心を溶かした、唯一無二の女性だ。彼女の聡明さ、強さ、そして……愛らしさに、私は魂を奪われた」
会場の令嬢たちが「きゃあぁぁ!」と黄色い悲鳴を上げ、紳士たちが「あの氷の公爵が……!」と驚愕している。
私は冷や汗をかきながら、公爵の袖をちょいちょいと引っ張った。
「(……あの、閣下? 閣下?)」
私は極小の声で囁く。
「(設定が盛りすぎではありませんか? 契約書には『業務上のパートナー』としか書いてありませんが……)」
「(……シッ。黙っていろ)」
公爵は口元を動かさずに囁き返した。
「(これが一番、手っ取り早く周囲を黙らせる方法だ。それに……見ろ、あそこの柱の陰を)」
彼が目線で示した先。
そこには、亡霊のように青ざめたジュリアン王太子と、化粧が崩れたリラ男爵令嬢がへたり込んでいた。
二人は、公爵の「魂を奪われた」という言葉を聞いて、絶望的な顔をしている。
「(あいつらに『自分たちが捨てたものが、いかに価値あるものだったか』を理解させるには、私が狂ったように溺愛してみせるのが一番効果的なのだ)」
「(……なるほど。精神攻撃ですか。性格が悪くて安心しました)」
私は納得した。
これは演技だ。
完璧なビジネス・ロマンスだ。
そう思うと、恥ずかしさも消え失せ、私は「愛される婚約者」の顔を作った。
「アレクセイ様……嬉しいですわ」
私はうっとりとした表情で、公爵の胸に頭を預けた。
「私も、貴方様をお慕いしております……(特に財力を)」
「ああ、愛しいメリーナ……(特に事務処理能力を)」
私たちは見つめ合い、完璧な愛の劇場を演じた。
会場は感動の渦に包まれている。
「なんて素敵なお二人なの!」
「真実の愛だわ!」
「それに比べて、あっちの元婚約者は……」
空気は完全にこちらに味方した。
公爵は満足げに頷くと、再び会場に向き直った。
「よって、宣言する! 彼女は私の『最愛の婚約者』であり、ヴァン・ルーク家の次期女主人となる! 彼女に対する無礼は、私に対する宣戦布告と見なす!」
「ヒィッ……」
貴族たちが一斉に背筋を伸ばす。
「今後、彼女の過去(婚約破棄)について陰口を叩く者がいれば、即刻我が領地との取引を停止し、全鉱山の供給を止める。……覚悟しておけ」
脅迫だ。
愛の告白の皮を被った、国家規模の経済制裁予告だ。
しかし、その圧倒的な力強さに、令嬢たちはさらに熱狂した。
「素敵! 守られたい!」
「最強のスパダリだわ!」
公爵は勝ち誇った顔で、私に向き直った。
「さあ、メリーナ。誓いのキスだ」
「……はい?」
私は耳を疑った。
「え、誓いのキス? ここで? 契約書には『身体的接触は手繋ぎまで』と……」
「オプション追加だ。特別ボーナスを出す」
「金貨十枚」
「五枚だ」
「八枚」
「……よかろう。交渉成立だ」
小声での価格交渉が一瞬でまとまる。
公爵は私の腰を引き寄せ、ゆっくりと顔を近づけた。
会場の視線が一点に集中する。
ジュリアンが「やめろぉぉぉ!」と叫ぼうとして、リラに口を塞がれているのが見える。
(仕事よ、メリーナ。これは金貨八枚分の仕事……!)
私は目を閉じ、心を無にした。
触れるか触れないかの距離。
公爵の吐息がかかる。
そして。
チュッ。
唇に、温かい感触が落ちた。
それは予想に反して、とても優しく、甘く、そして長かった。
(……ん?)
長い。
契約では「フリ」か、一瞬の接触のはずだ。
これでは、まるで本当に……。
数秒後、ようやく唇が離れると、公爵は少しだけ顔を赤らめ、そして満足げに微笑んでいた。
「……悪くない」
彼はボソリと呟いた。
会場からは割れんばかりの拍手喝采。
私は呆然と立ち尽くし、熱くなった自分の唇に指を触れた。
「(……今の、本当に演技?)」
私の心臓が、契約外の速度で跳ねている。
これは不整脈だろうか。
それとも、糖分の摂りすぎだろうか。
「さあ、降りるぞ。主役の座は十分に堪能した」
公爵は何食わぬ顔で私の手を取り、ステージを降りていく。
その背中は、いつもの冷静な彼に戻っていたが、繋いだ手は痛いくらいに強く握られていた。
人混みの中、私たちはジュリアンの前を通り過ぎる。
彼は、魂が抜けたように座り込んでいた。
「兄上……嘘だろ……」
彼は譫言のように繰り返している。
「あんな……あんな顔、見たことない……。兄上が、女にあんな……」
彼には分かったようだ。
兄であるアレクセイ公爵のキスが、単なる演技や嫌がらせのレベルを超えていたことが。
ざまあみろ、と言いたいところだが。
今の私は、それどころではなかった。
(どうしよう……。明日から、どんな顔をして『定時退社』を主張すればいいの?)
公爵の「公言」と「キス」によって、私たちの関係(ビジネスライク)は、大きく狂い始めていた。
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