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第一話 まずはプレイしてみましょう。

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 幼い頃から、わたしはゲームというものが苦手だった。

 人が聞いたら大笑いするだろう。実際、一番よく遊んだ幼馴染は、わたしがゲームすると横でゲラゲラと笑っていた。
 アクションゲームではジャンプのタイミングは合わず穴に落ち、レースゲームはいつの間にかコースを外れて最下位。格闘ゲームでは必殺技が出せず、乱闘ゲームでは自分のキャラが気付いたらいなくなっていた。

 両親が教育熱心だったせいもあるかもしれない。少なくともわたしが十二歳の頃まで、家にあったのは中古で買ったゲーム機が一台とカセットが数本あっただけだ。ゲームより、勉強のほうがよっぽどできた。勉強はやればやるほどできるようになるが、ゲームは少し触れただけでつまづいてしまう。

 とにかく、わたしはゲームという奴が大の苦手だった。

 ゲームに関しては、お姉ちゃんのほうが得意だった。家にあった数本のカセットはお姉ちゃんが全部簡単にクリアしてしまっていたし、お姉ちゃんは一度クリアしたゲームは見向きもしなかった。両親がお姉ちゃんには勉強を優先させたし、お姉ちゃんも機械的に、学業で優秀な成績を収める事に集中していた。わたしも十二歳まではそれにならっていたので、姉妹そろって勉強熱心だった。

 わたしが十二歳の頃、お姉ちゃんは十八歳だった。
 あの頃、お姉ちゃんは家にいて、わたしは中学生になっていた。あの頃、本千葉家ではゲームの事なんて考える余裕もなかった。

 わたしが十五歳の頃、お姉ちゃんは二十一歳だった。お姉ちゃんはまだ家にいて、私は高校生になる頃だった。お姉ちゃんが何をしていたのか、当時のわたしにはよくわからなかった。ただ、変わったゲームをしていたのは覚えている。

 わたしが十八歳の頃、お姉ちゃんは二十四歳だった。わたしは大学受験を控えていて、お姉ちゃんは一人で暮らしていた。
 その頃、お姉ちゃんはとっくに有名人だった。家にいた頃からは考えられないほど活発的で、いやもう、ほとんど暴走特急といっていいくらいの活躍ぶりで、両親が思い描いていた人生とは違っただろうけど、とにかく元気になっていた。

 ゲーム。
 ゲームだ。

『――私はこれで変われた。けいもやろうよ。二人で最強になろう。東京姉妹なんっつってさ』

 そう言って、お姉ちゃんはわたしに一枚のカードをくれた。
 ゲーム。
 わたしは、ゲームが苦手だ。

『いいよ。別に。ゲーム興味ないし。お姉ちゃん、好きにすればいいじゃない』

 わたしは背を向ける。お姉ちゃんを置いて部屋に戻る。
 その頃、わたしはお姉ちゃんが苦手だった。
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