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第二話 シャッフル・カット・ドロー。シールドセット、そして挨拶。

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【血によって贖われよ】 闇炎鋼
 クイック/シールド・2
 あなたはクリーチャーを一体生け贄に捧げ、三点のライフを失い、カードを三枚引く。

「こっちは?」
「通ります」

 わたしは答える。相手のアクションに対して対応しないという意味だ。一年前、動画でちらっと見たので覚えている。

「【量産型機械ゾンビ】を生け贄、三点ルーズ。ライフ三十七、三枚ドロー」

 ゾンビが生け贄に捧げられた事で、二個目の歯車トークンが場に出た。蘇我さんは新たなトークンを出す代わりに、六面ダイスを取り出し、二の面を上にしてトークンカードの上に置く。ライフカウンターの数字が動き、蘇我さんの手札が五枚になった。

「戦闘に入るよ! 狼で攻撃!」
「はい」

 狼をブロックするための二体目のクリーチャーがいないので、わたしの二枚目のシールドにダメージが入る。

「シールドチェック」

 二枚目のシールドをめくる。
 
【アクトロミネスの涙】 水
 クイック/シールド・5
 あなたはカードを三枚引く。

「げ」

 蘇我さんが濁った声を出した。

「入っていても不思議じゃないけど、制限カードもちゃんと入れてあるんだね」

【アクトロミネスの涙】はこのゲームの初期セットから存在するカードだ。何度も再録されているがコストのわりにリターンの大きいカードなので、デッキに一枚しか入れられないという制限カードになっている。

「デッキ組む時にちょっと勉強したからね」
「本気で組んだってわけね。このデッキが寝てたの勿体ないよ」
「何か、組んだら途端に冷静になっちゃって……。対戦相手もいないのになって……」

 やっても無駄になるだろうと思ったのだ。
 よりにもよって、最も強い相手を知っているゲームなんて。
 追いつけるはずもないのに。

「もっと早く声掛ければよかった」
「それならワイファイ、八か月詰まずに済んだかもね」

 わたしたちは笑い合った。不思議な事に、頭を過った暗い思いとは裏腹に、笑みは自然と浮かんでいた。

 シールドの耐久値であるシールド値が5であるために、今の狼の攻撃ではライフにまでダメージが通らない。わたしはシールドが受けているダメージを示す赤いマーカー四つを、【アクトロミネスの涙】の上に置く。

「ターン終了!」

 蘇我さんが言った。
 わたしは手札を見る。次いで自分の場を見る。【幻の卵】。それに公開された【アクトロミネスの涙】。
 次のターンが勝負だ。

「わたしのターン」
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