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第三話 蘇我瑞葉のプロローグ

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「今度の日曜、カード屋に行こう。本千葉さん」

 大学の食堂。遅めの昼休み。
 蘇我さんはわたしにそんな事を言った。

「カード屋?」
「そ。行った事ある? あ、いやデッキ組んでるから、カード屋は行った事あるか」
「いや、ないよ。デッキ組んだ時は店舗のネット通販で買ったから」

 カード屋。文字通り、カードを売っているお店だ。
 その実態は……よく知らない。デッキを組んだ当時でさえ、カードゲームに関する話題はあまり見ていなかった。デッキリストとカードの画像を確認して、買うものに間違いがないかを確認した程度だ。

「川崎にさ、通ってるお店があるんだよね。《ユグドラシル》っていうんだけど。本千葉さんにも一回紹介したくてさ」
「カード屋かあ」

 先日の誕生日以来、わたしと蘇我さんはちょくちょく予定を合わせては対戦をしている。おかげさまで、わたしは最近カードゲームの(少なくとも、彼方ノ国物語に関しては)コツを掴みかけていた。

「ちょっと興味あるかも」
「まじで! じゃあ行こうよ!」

 蘇我さんがきらきらした笑顔で言った。本当に彼方ノ国物語が好きなのだろう。
 行ってもいいかもしれないな。スケジュールを思い返す。今週は確か……。

「あー……でも、課題やらないと」

 書きかけのレポートの存在を思い出して、わたしは言った。
 蘇我さんががくっと肩を落とした。

「課題はあたしもある~~~……。本千葉さん、人文学科だよね。人文学科って課題どんなのやるの?」
「うーん。まあ色々あるけど、今やってるのは『ギリシャ神話が題材の文学作品を読み、作中でギリシャ神話がどのように扱われているかをレポートにする』ってやつ」
「カードのテキスト覚えてる人みたいだね」
「フレーズで覚えない? こういうの」

 蘇我さんはわからん……と言いながらパックのジュースをストローで吸う。

「蘇我さんは情報工学科だっけ。どんな課題があるの?」
「『隣接するスーパーマーケット三店舗の売上データから地域の需要を割り出す』ってやつ~~」
「テキスト覚えてるね」

 いずれにしても時間のかかる課題だ。まあ、金、土と大学の図書館に籠れば何とかなるような。

「ま、提出来週だし。土曜いっぱい頑張れば何とかなるよ」

 言いながら、蘇我さんは立ち上がる。
 そろそろ次の授業だ。

「行けたらでいいし。予定わかったら連絡ちょーだい」
「うん。わかった」

 じゃね~~~と言いながら、蘇我さんは席を立つ。
 頑張れば、課題は何とかなる。一年前は土日も課題や勉強に当てていたが……。

「カード屋か」

 行ってみてもいいかもしれない。新しい友達もできたのだし。
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