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レオン4
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サラとの関係はとても良好で、死の恐怖を感じたのは初対面の時だけだった。
嫉妬深いと思っていたが、常識的な範囲で私が女性と話をしても怒る様子はなかった。
それは、ある夜会の事だ。
大輪の花が綻んだような甘い香りが、会場の中でした。
まるで、身体がその香りを欲するように私はその匂いの先を辿った。
私の番だと本能的に感じたのだ。
「レオン様。どうなさいました?」
その一言に、スッと私は冷静に戻される。
事情を説明したとして、彼女は番もろとも私を殺すだろう。
嫌だ死にたくない!
私は運命よりも自分の生命を取った。
「いや、なんでもないんだ」
私は引きつりながらも、誤魔化すように微笑んだ。
怖い。何をされるのかわかったもんじゃない。
番よ。逃げてくれ。見つけないで。私は死にたくない。
「そう言えば、今日、初めて夜会に来る方がいらっしゃるそうよ。なんでも留学してらっしゃったとか」
「だからか……」
今までなぜそれに気がつかなかった理由がわかった。
お願い。私を見つけないでくれ!
「はじめまして!」
突然、場違いな明るい声がして私はそちらに目線をやった。見かけない少女だ。
燃え上がるような真っ赤な髪の毛をした少女は、恋する乙女のように頬を上気させて、私の方を見ている。
間違いない。番だ。
魅力的に見えるはずの少女が大鎌片手に微笑む死神しにか見えない。
頼む。その鎌を私の首に突き立てないでくれ。
死ぬ。間違いない。サラに殺される。
少女は、私の隣にいるサラを見てその笑顔を陰らせた。
「なんですか?貴女!私の番に馴れ馴れしくしないで!」
余計なこと言うな!
やめて。お願い。私殺されちゃう。
「え、あの、彼は私の婚約者で……」
サラは、震えながら訴えるが、私はそれが悲しみではなくて武者震いだと気がついていた。
やべぇぞ。ヤル気だ。
私の周囲の空気はあり得ないくらい冷え込み。
それに気がつかない。アホ番が羨ましく思えた。
こいつを生贄にして自分だけは助かる方法はないだろうかと、逡巡するが、きっと無理だろう。
少女は眦を吊り上げてサラを睨みつける。
「だったら、なんですか?」
サラは、不思議そうに首を傾けた。
「え?」
「番とは尊い存在なんですよ。なぜ、身を引かないんですか?」
身を引く。少女は何を言っているのだろう?
私は自分が何なのかと改めて考え直した。
竜の生贄になった私は、サラの物だ。身も心も彼女に捧げた。
サラが自分の物の為に身を引くなんておかしな話である。
「何を言ってらっしゃるの?たかが、番の分際で」
サラの余計な一言に、少女は周囲など目に入らない様子で怒鳴り声を上げた。
お願い二人ともやめて。
死んだふりがしたくなったけれど、やったら目が永遠に覚めなくなりそうな気がする。
「なんですって!?」
サラの一言に、少女が手を振り上げた。
私はその手を思わず受け止める。
「やめるんだ」
少女を止めたのは番としての情けだ。私のせいで殺されてしまっては目覚めが悪い。
あと、まだ私も死にたくない。
「なぜ、止めるのですか!私達は番なんですよ!」
「それがどうした?」
「信じられない。私を見てなんとも思わないの?」
何とも思わないどころか、存在が死の恐怖のでしかない。この死神め!
「思うわけがないだろう?私の身も心も婚約者のサラの物だ」
怖い。こいつがいる限り私はサラに色々と刈り取られる。
思わずサラに助けを求めるようにその袖を握りしめる。
助けて。赤い髪の死神のせいでサラに殺される。
「あ、いつに、に、こ、こ、こころうつりなどしない」
心移りしたと思わせたら、この世の終わりだ。
サラは私の気持ちなんて全く気がつかない様子で、両目から涙を出していた。
「れ、レオン様。愛しております」
「私もだ」
その念押しは、ただ、ただ、怖い。
目移りしていないだろうな?したら殺すぞ。と訴えかけてくるようにすら思える。
怖い。死にたくない。
「わ、わたしはつがいなど、に、めうつりなどしていない。だ、だから。ゆるしてくれ」
「わかっておりますわ」
サラに、抱きしめられると背骨がボキボキと折れた音がした。
彼女の婚約者が人間では務まらない理由が何となくわかった。
殺す気がなくても簡単に彼女は人を殺せる。
「ふぐぅ。グハッ」
私の意識は暗闇に包まれた。
めるで、私の結婚生活を表すように。
嫉妬深いと思っていたが、常識的な範囲で私が女性と話をしても怒る様子はなかった。
それは、ある夜会の事だ。
大輪の花が綻んだような甘い香りが、会場の中でした。
まるで、身体がその香りを欲するように私はその匂いの先を辿った。
私の番だと本能的に感じたのだ。
「レオン様。どうなさいました?」
その一言に、スッと私は冷静に戻される。
事情を説明したとして、彼女は番もろとも私を殺すだろう。
嫌だ死にたくない!
私は運命よりも自分の生命を取った。
「いや、なんでもないんだ」
私は引きつりながらも、誤魔化すように微笑んだ。
怖い。何をされるのかわかったもんじゃない。
番よ。逃げてくれ。見つけないで。私は死にたくない。
「そう言えば、今日、初めて夜会に来る方がいらっしゃるそうよ。なんでも留学してらっしゃったとか」
「だからか……」
今までなぜそれに気がつかなかった理由がわかった。
お願い。私を見つけないでくれ!
「はじめまして!」
突然、場違いな明るい声がして私はそちらに目線をやった。見かけない少女だ。
燃え上がるような真っ赤な髪の毛をした少女は、恋する乙女のように頬を上気させて、私の方を見ている。
間違いない。番だ。
魅力的に見えるはずの少女が大鎌片手に微笑む死神しにか見えない。
頼む。その鎌を私の首に突き立てないでくれ。
死ぬ。間違いない。サラに殺される。
少女は、私の隣にいるサラを見てその笑顔を陰らせた。
「なんですか?貴女!私の番に馴れ馴れしくしないで!」
余計なこと言うな!
やめて。お願い。私殺されちゃう。
「え、あの、彼は私の婚約者で……」
サラは、震えながら訴えるが、私はそれが悲しみではなくて武者震いだと気がついていた。
やべぇぞ。ヤル気だ。
私の周囲の空気はあり得ないくらい冷え込み。
それに気がつかない。アホ番が羨ましく思えた。
こいつを生贄にして自分だけは助かる方法はないだろうかと、逡巡するが、きっと無理だろう。
少女は眦を吊り上げてサラを睨みつける。
「だったら、なんですか?」
サラは、不思議そうに首を傾けた。
「え?」
「番とは尊い存在なんですよ。なぜ、身を引かないんですか?」
身を引く。少女は何を言っているのだろう?
私は自分が何なのかと改めて考え直した。
竜の生贄になった私は、サラの物だ。身も心も彼女に捧げた。
サラが自分の物の為に身を引くなんておかしな話である。
「何を言ってらっしゃるの?たかが、番の分際で」
サラの余計な一言に、少女は周囲など目に入らない様子で怒鳴り声を上げた。
お願い二人ともやめて。
死んだふりがしたくなったけれど、やったら目が永遠に覚めなくなりそうな気がする。
「なんですって!?」
サラの一言に、少女が手を振り上げた。
私はその手を思わず受け止める。
「やめるんだ」
少女を止めたのは番としての情けだ。私のせいで殺されてしまっては目覚めが悪い。
あと、まだ私も死にたくない。
「なぜ、止めるのですか!私達は番なんですよ!」
「それがどうした?」
「信じられない。私を見てなんとも思わないの?」
何とも思わないどころか、存在が死の恐怖のでしかない。この死神め!
「思うわけがないだろう?私の身も心も婚約者のサラの物だ」
怖い。こいつがいる限り私はサラに色々と刈り取られる。
思わずサラに助けを求めるようにその袖を握りしめる。
助けて。赤い髪の死神のせいでサラに殺される。
「あ、いつに、に、こ、こ、こころうつりなどしない」
心移りしたと思わせたら、この世の終わりだ。
サラは私の気持ちなんて全く気がつかない様子で、両目から涙を出していた。
「れ、レオン様。愛しております」
「私もだ」
その念押しは、ただ、ただ、怖い。
目移りしていないだろうな?したら殺すぞ。と訴えかけてくるようにすら思える。
怖い。死にたくない。
「わ、わたしはつがいなど、に、めうつりなどしていない。だ、だから。ゆるしてくれ」
「わかっておりますわ」
サラに、抱きしめられると背骨がボキボキと折れた音がした。
彼女の婚約者が人間では務まらない理由が何となくわかった。
殺す気がなくても簡単に彼女は人を殺せる。
「ふぐぅ。グハッ」
私の意識は暗闇に包まれた。
めるで、私の結婚生活を表すように。
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