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その6

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本当にいたんだ。絶対にいたんだ。
「……リリアナ!!!!!!!」
「はいいいいいっ」
「……お願いがあるの」
「何でしょう???????」
「……一緒に来て」
「どこへですか?」
「……あいつがいた場所」
「え? しかし、もう」
「いいから、早く」
「は、はあ。かしこまりました」
「……」
「……」
……わたしは、リリアナと一緒に小屋を出た。辺りを見回す。もちろん、何も見えない。
「……」
「姫様」
「……」
「姫様!」
「……」
「しっかりして下さいませ」
「……あ、あああああ??????」
……いけない。少しパニックになっていたみたいだ。……深呼吸をして気持ちを静める。
「……大丈夫です」
「よかった」
「……行きましょう」
「はい」
「……確か、この辺だったと思うのだけど」わたしは、目を閉じて、感覚を研ぎ澄ました。
……感じる。微かに、魔力を感じる。本当に小さな力……かもしれないが、これから世界を脅かすことになりそうな気配を内に秘めている……。さて、どうしたものだろうか?????そんなことを考えている内に、新しい声が現れる。
「……リリアナ」
「はい」
「……多分、ここからそんなに遠くない」
「そうですね」
「……行こう」
「はい」……それから、しばらく歩くと、開けた場所に出た。
「……ここだわ」
「間違いありませんか?」
「……うん」
「では、ここで何を?」
「……わからない」
「……そうですか」
「……でも」
……あれは夢じゃない。わたしは確信していた。
「……姫様?」
「……ねえ、リリアナ」
「はい」
「……わたし、これからどうなるのかしら?」
「それは」
「……わかっているわ」
「……」
「……わたしは、魔王の娘なのよね」
「……」
「……わたしは、人間ではないのね」
「……」
「……わたしは、化け物なのね」
「違います」
「……違わないよ」
「いいえ。あなたは、私と同じ人族ですよ」
「……」「……姫様」
「……ありがとう。慰めてくれて」
「いえ」
「……そろそろ戻りましょう」
「姫様」
「なに?」
「……私は、姫様にお仕えできて幸せでした」
「……リリアナ」
「……どうか、ご自分を卑下なさらないでください。あなた様は……少なくとも私が見てきた中では最も素晴らしい方であると信じとります……」
「……わかった。そうかそうか……」
「……さあ、帰りましょう」
「……うん」……わたしは、リリアナの手を握って歩き出した。
小屋に戻ると、わたしはベッドに横になった。そして、暫くの間、時々星でも眺めながら眠りにつこうと思った。まだ、夜が長いと感じた。
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