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2章 魔導院で働いてみましょう

16話 約束の

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●16話 約束の

帰ってきたばかりで悪いが父様の書斎にオーリと共にお邪魔する。
「父様、今お話よろしいですか?」
「どうしたんだい?エル、オーリ。」
「えーと…ですねぇ。」
誤魔化しも考えては来たけどいいづらい。
「エル様?私がいいましょうか?」
オーリが気遣ってくれるけど、わたくしが話すと首を降り口を開く。おおまかに起こったことを話し、一度口を閉じる。乙女ゲームの記憶を駆使したところは偶然見えたとかで誤魔化しておいた。
静かに聞いていた父様をちらりと見る。いや静かに聞いていたっていうか驚きすぎて声もでないって感じだな。
「という事で、白翼狼のウィトラス様は一度お帰りになられました。」
「………白翼狼が。エル達は無事?」
「ええ、全員無事ですわ。」
「無事に終わったからよかったもののエル様の行動は誉められたものじゃありませんからね?後でしっかり叱られてください。」
「…。結果よければ全てよしですわ。」
「あのあとまだ何か言いたそうにしてましたよね?あれは何です?あれが良いものでなければ結果よしとは言えませんよ?」
とうとう話さなければならない時がやってきた。
「エル?まだ何かあるのかい?」
ほらぁ…父様もこわごわとしてるじゃないか。わたくしもいやなのよこれ言うの。なんで安請け合いしちゃったんだか…。
「………実は、ですね。あー…1つ、ウィトラス様と約束してしまいまして。」
言葉を濁す。約束?と二人の疑問の声が重なる。
「その約束とはどんなものなんだ?」
父様がしぶるわたくしを促す。
「ウィトラス様は子持ちだと言いましたよね?」
ここまで言って言葉を一度切る。二人が、まさか、と言う顔をしたからだ。
「その、まさかです。ウィトラス様はわたくしにお子さんを預けたい、と。なんでも色んなものを見聞きしてほしいらしくて…。」
どうしましょう、と首を傾げてみる。
「どうしようもなにも、受けるしかないだろう…。」
「そうなんですよね。という事で一応受けてはあるのですが、問題なのはわたくしに預けたいと言っているということですの。」
「そうだねぇ…。エルの立場はまだいいとして、魔導院にも行っているし教育もある。数年たてば学園にも行かなければいかないし社交界もある。」
あれ、こうやって言葉で整理すると6歳ながらに忙し過ぎない?過労死しても文句はいえない。
「エル様、いつ休んでるんですか?」
オーリも同じことを思ったようで、問いかけてくる。
「今日、休みましたわ。休みじゃなくなったけれども。それに、定期的に休みを貰っていますわ。」
「…この間の休みの日に私のところに剣術の稽古つけてくださいって来たのは誰ですか。その前の休みも…。」
「さぁ?誰かしらね?
それよりも、こっちですわ。」
はぁ、と諦めたようにため息をつくオーリ。
「エル、ちゃんと休息も必要だからな?」
「分かっていますわ。
それで、数日後に来るということなのでここと、それから魔導院に連れていく許可は貰えますか?」
「大丈夫だと思うけど…。あの研究室ならちょっとやそっとのことじゃ何も言われないだろうし。」
「それもそうですわね。では、わたくしが預かるということで。何とかして見せますわ。」
「ああ、よろしく頼む。俺たちも極力協力しよう。」
「ええ、サポートします。」
これで話し合いは終わり、解散してその日はそのまま夕飯を食べ、休んだ。

そして、それはちょうど次の帰省の時だった。
「タイミングがいいわね。」
魔導院から帰って着替え終わった頃のことだった。屋敷内が突然あわたただしくなり、同時にわたくしの部屋をノックする音がなる。
「エリューシアお嬢様、ウィトラス様がおいでになりました。中庭でお待ちです。」
ついに、ウィトラス様がいらっしゃった。
中庭に行くとウィトラス様と、その背に隠れるように子狼がいた。
「お待たせいたしました、ウィトラス様。」
『エリューシア。 子が産まれたのでな。立派なオスよ。預かってくれるか?』
再度確認してくるウィトラス様に頷く。
「まずは、ご出産おめでとうございます。ウィトラス様の子を預かれること、光栄に思いこそ断ることなんてありませんわ。精一杯育てさせていただきます。」
『そうか、それは良かった。では、我が子を頼む。名前も、決めてやってくれ。』
「!?わたくしが、ですか?いいのですか?わたくしが名付け親で。」
『うむ。そなたなら良い名をつけてくれるであろうと思ってな。』
責任重大!!
どうしましょう…。白翼狼…白…ホワイト?ヴァイス?ニーヴェオ?ビアンカ、は女の子っぽいかしら。あ、ブランシュ。全部日本語にしたら白だけど。安直かもしれないが、この子にはブランシュがあうと思った。
「ブランシュ、はどうでしょう?」
『ブランシュ。ブランシュ、いい名だな。ブランシュ、元気にやるのだぞ。』
すでにブランシュには説明済みなのか、頼んだ、と再度わたくしに言うとそのまま帰って言ってしまった。中庭にはわたくしとブランシュのみ。
「ブランシュ、わたくしはエリューシア。これからよろしくね。」
『よろ、しく?』
こてん、と首を傾げるブランシュ。ブランシュはすでに柴犬の成犬ほどの大きさで、背中には白翼狼の証である翼がちょこんとついていた。
「もう暗いわね。中に入りましょう。おいで。」
ペットなんて飼ったことないけど、皆がサポートしてくれるらしいので、がんばろう、と再度気を引き締め屋敷の中に戻った。
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