113 / 172
1章 幸せの花園
37 踏み込めない領域 (1)
しおりを挟む魔女の言葉を受けたノアは、徐々に走るスピードを落とし、ゆっくりと立ち止まった。至極真面目な表情をしたノアの若葉の瞳が映すのは、ゆるい笑みを浮かべた魔女の姿。
「ねぇ?ノアぁ。どうしてぇ?」
青白い肌と黄金の瞳を縁取るように施された植物の化粧、そしてにぃっと歪められた青いリップの塗られたくちびる。
言われなくとも分かる。
ノアは試されている。
ノアは拒絶されている。
魔女とは孤高を生きる生き物だ。
その力は簡単に一国を滅ぼすことを可能とし、その力はすべての人々に羨望と恐怖を植え付ける。
魔性と言っても過言ではない圧倒的美しさを持つ魔女は、人々に畏怖の対象として、そして何よりも厄災として語り継がれてきた。
一国の王子として赤子の頃から徹底的な教育を受けてきたノアだからこそ知っている。
魔女の残酷さを、魔女の非道さを、そして何よりも、魔女が絡んだ時の人間の歪み切った行動や考え方を。
ある時代の王は、魔女にハニートラップを仕掛け、無理矢理に娶り、そして彼女を兵器として用いた。
魔女の産んだ強い魔力を持つ子供を魔女からの人質とし、その子供までもを平気として用いた。
王族たるもの子供を道具としてもち要らねばならぬ時もあるということは、元王子のノアとて痛いほどに重々承知している。
しかしながら、魔女の子供たちと似たような立ち位置にいたノアは、どうしても彼らに感情移入をせざるを得なかった。
愛されたい。
愛したい。
抱きしめてほしい。
抱きしめたい。
褒めてほしい。
構ってほしい。
どんなことでも良いから、———両親の役に立ちたい。
*******************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる