完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

水鳥楓椛

文字の大きさ
11 / 18

11 わたくし再起不能

しおりを挟む
「あぁ、エリー。そんな可愛い顔をしないでおくれ。食べちゃいたくなってしまう。というか、食べていい?」
「はい?」

 なんだか不穏な声が耳に響いて首を傾げた瞬間、わたくしの目前にはレオンさまの超絶美形なお顔があって、わたくしのくちびるに温かなものが触れた。1度じゃない。2度、3度と触れられては離れて、また触れられる。

「〰︎〰︎〰︎———!?」

 ただでさえ赤かったであろう顔が熱くなり、茹で蛸状態になってしまったわたくしは、再起不能に陥りふしゅうぅーという効果音と共に床に崩れ落ちた。

(あぁー、わたくしの5箇条があぁぁぁぁー………)

 守れなかった5箇条に気落ちしながら、わたくしははたっと気がつく。

(あれ?ここってアイーシャではなく、わたくしへの断罪じゃなかったかしら?というか、なんでレオンさまはわたくしのところに………?)

 ただでさえ茹で蛸状態で思考が回らないのに、処理速度を超えた案件をいくつも持ち込まれ、わたくしは視界をぐるぐると回してしまった。

「あれ?なんで?わたくし断罪されるんじゃ………?えぇ、悪役令嬢のお役目の時間は?というか、ヒロインちゃんなんか変じゃない?そもそも、レオンさまの側近たち攻略対象者じゃなくなってるし………?あれ?今思えば、ここにあるほとんど全部ゲームと違うわよ?おかしくない?」

 扇子を閉じて握り込んだわたくしは、ぶつぶつと念仏のように唱えて、最終的に涙をいっぱいに貯めた瞳でレオンさまのことを見上げた。

「何がどうなっておりますの!?」
「いや、それはどちらかというと僕が聞きたい案件だね。まあいいや。あとでたっぷりお仕置きしながら聞けばいいし」

 にっこりとジルコンの美しい輝きを放つ瞳を怪しく細めたレオンさまに、わたくしはひょえっという悲鳴を上げながら、ぎゅっと自分を抱きしめる。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

最近のよくある乙女ゲームの結末

叶 望
恋愛
なぜか行うことすべてが裏目に出てしまい呪われているのではないかと王妃に相談する。実はこの世界は乙女ゲームの世界だが、ヒロイン以外はその事を知らない。 ※小説家になろうにも投稿しています

婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。 しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

モブ令嬢アレハンドリナの謀略

青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。 令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。 アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。 イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。 2018.3.26 一旦完結しました。 2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。

他には何もいらない

ウリ坊
恋愛
   乙女ゲームの世界に転生した。  悪役令嬢のナタリア。    攻略対象のロイスに、昔から淡い恋心を抱いている。  ある日前世の記憶が戻り、自分が転生して悪役令嬢だと知り、ショックを受ける。    だが、記憶が戻っても、ロイスに対する恋心を捨てきれなかった。 ※ 三人称一視点です。

婚約を破棄して気づけば私は悪役令嬢でした。

hikari
恋愛
妹に婚約者を奪われて狼狽していたら、自分はある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気づく。 妹のナタリーがヒロイン。両親は妹の味方。唯一の味方が弟のルイでした。 しかも、何をしてもダメ出しをする間抜けな平民のダメンズに言い寄られ、しつこくされています。私に分相応なのはこの平民のダメンズなの!? 悪役令嬢ものは初めてです。 今作はギャグがメイン

婚約を破棄するって言いましたよね?

碧井 汐桜香
恋愛
突然婚約破棄されたユリア・ウザボラ公爵令嬢。 婚約破棄された夜の夜会には、秘密があって? ブラック版では、ウザボラ公爵家には、秘密があって?

処理中です...