赤銅の髪の魔術士 ―― 支配樹の眠り

「術者がまず、心得なければいけないことは?」
「己の力の際限を知ること。心を平静に、取り乱さず、感情に流されず、死ぬことを恐れなければならない」
「よくできました。死にたくなければ決して忘れないように」



 故郷を丸ごと焦土へと変えた大火事から、奇跡的に生き残れることができたファロウは当時まだ五歳。あやふやな記憶が覚えていたのは自分を助けた人物の顔ではなく、炎の熱気に揺らぐ鮮やかな赤銅色の長い髪だった。
 その人が魔術士であるということはだいぶ後になってから知った。
 憧れて。忘れられず自分も魔術士になることを決意した。
 大火事の後、親戚の家に身を寄せてから数年後、今から三年前、偶然にも若き魔導師ゼルデティーズと出会った。
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