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猟師と青年 2
猟師、戦のあとを駆ける
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ソラ君…ソラ君、どこ?
戦場に転がってる人間を、一人ひとり調べる。
息のあるやつは荷車に積む。
そんで、荷車がいっぱいになったら帰る。
血の匂いがひどくて、ソラ君の匂いが辿れない。
だから必死で目で探す。
ここには帝国兵がたくさん転がっていて、髪の色だけじゃ探しきれない。
茶色い髪の人が多いけど…たまに黒っぽい人もいて、ドキッとする。
オレ、戦に出るかわりに、みんなに頼んだんだ。
ソラ君のこと探して欲しいって。
でもその時になって分かったんだ。
悔しいけど、オレ、匂いや思い出ばっかりで、ソラ君の顔の特徴をあまり覚えてない。
外見で覚えてるのは…ほくろだけ。
それも服で隠れる場所にある、1個だけ。
だって、見た目はとても普通の子だったから。
だから黒目黒髪の人を見たら教えて、って。
何でも手伝うから…って。
それで、今はこのお手伝いをしてる。
「いないな…」
荷車に人がいっぱいになってないけど、1度帰ろう。
もしかしたら、砦に情報があるかもしれないし…。
------------
砦に帰ると、一人の衛生兵が話しかけてきた。
「あの、ロウさん。ロウさんが探してるのって…黒髪黒目で顔に特徴的なところはないけど腰の左のとこに色っぽいほくろがある人、ですよね」
「そう、その人!いたの!?」
オレは彼の肩をつかんで揺する。
「います、いますけど…
ソラって人じゃない…と思いますよ?
でも、一応、万が一ってことがあるから…」
「何でもいいよ、すぐ会わせて!」
「それはもちろん、ですが…」
気もそぞろで彼についていくと、
砦の中の大広間の怪我人を収容してる場所で、
黒髪の人が、包帯でぐるぐる巻きにされて、
床に寝かされていた。
その人から、あの、大好きな匂いがした。
「…!」
間違いなくソラ君だ!
「ありがとう!君!」
「…は、へっ?ほんとにその人で合ってます?」
「うん!合ってる!連れてっていいよね!」
「いやっ困ります!…その人、「鬼神」ですよ?」
は?キジン?いやいや、ソラ君でしょ。
「その人、戦場では有名な人なんですよ。
北の最強騎兵、通称「鬼神」。
今回だって、どこからか涌いて来て凄い勢いで陣の最奥まで単騎で突破してきたんです。
僕も初めて見ましたが、まさに鬼神の如くというか、鬼神そのものというか…!
エース様がいなかったら、どうなっていたか…。
彼は、一人で戦況をひっくり返せる人間です。
だから間違いなく要注意人物なんで……」
「……そう、なの?」
そんな強かったの?ソラ君。
「知らなかったな…」
オレの前で、強そうなとこなんて1つも見せなかった。可愛くて、ちょっとお馬鹿で、……寂しがり屋で。
一人でさみしいって、泣いて。
「普通の男の子だって、思いたかったのかな」
よく考えたら、色々普通じゃないこと言ってた。
小さい頃から皇太子の友だちだって言ってたし。
戦場でも背中を預けられるくらい信用されてたって言ってた。
そもそも、一人で木を切り倒して何本も運ぶなんて、普通じゃできないことだもの。
しかもあの日、馬で山を登ってきたんだよ?
馬に乗り慣れてる人じゃなきゃできないよ。
「たくさん殺してるって、思いたくなかったのかな」
ソラ君、オレ、それでもいい。
ソラ君だったら何でもいい。
オレは君の匂いがないと、もう駄目なんだ。
「…………そら、くん…………」
じっとソラ君を見つめるだけのオレを可哀想だと思ってくれたのか、案内してくれた人が言った。
「…ダメ元で、動かしていいか聞いてきますよ。
意識も戻ってないし、武器も無いし…
ロウさんなら、国を裏切ることもないと思うし」
オレは、彼に深々と頭を下げて頼んだ。
「よろしくおねがいします」
戦場に転がってる人間を、一人ひとり調べる。
息のあるやつは荷車に積む。
そんで、荷車がいっぱいになったら帰る。
血の匂いがひどくて、ソラ君の匂いが辿れない。
だから必死で目で探す。
ここには帝国兵がたくさん転がっていて、髪の色だけじゃ探しきれない。
茶色い髪の人が多いけど…たまに黒っぽい人もいて、ドキッとする。
オレ、戦に出るかわりに、みんなに頼んだんだ。
ソラ君のこと探して欲しいって。
でもその時になって分かったんだ。
悔しいけど、オレ、匂いや思い出ばっかりで、ソラ君の顔の特徴をあまり覚えてない。
外見で覚えてるのは…ほくろだけ。
それも服で隠れる場所にある、1個だけ。
だって、見た目はとても普通の子だったから。
だから黒目黒髪の人を見たら教えて、って。
何でも手伝うから…って。
それで、今はこのお手伝いをしてる。
「いないな…」
荷車に人がいっぱいになってないけど、1度帰ろう。
もしかしたら、砦に情報があるかもしれないし…。
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砦に帰ると、一人の衛生兵が話しかけてきた。
「あの、ロウさん。ロウさんが探してるのって…黒髪黒目で顔に特徴的なところはないけど腰の左のとこに色っぽいほくろがある人、ですよね」
「そう、その人!いたの!?」
オレは彼の肩をつかんで揺する。
「います、いますけど…
ソラって人じゃない…と思いますよ?
でも、一応、万が一ってことがあるから…」
「何でもいいよ、すぐ会わせて!」
「それはもちろん、ですが…」
気もそぞろで彼についていくと、
砦の中の大広間の怪我人を収容してる場所で、
黒髪の人が、包帯でぐるぐる巻きにされて、
床に寝かされていた。
その人から、あの、大好きな匂いがした。
「…!」
間違いなくソラ君だ!
「ありがとう!君!」
「…は、へっ?ほんとにその人で合ってます?」
「うん!合ってる!連れてっていいよね!」
「いやっ困ります!…その人、「鬼神」ですよ?」
は?キジン?いやいや、ソラ君でしょ。
「その人、戦場では有名な人なんですよ。
北の最強騎兵、通称「鬼神」。
今回だって、どこからか涌いて来て凄い勢いで陣の最奥まで単騎で突破してきたんです。
僕も初めて見ましたが、まさに鬼神の如くというか、鬼神そのものというか…!
エース様がいなかったら、どうなっていたか…。
彼は、一人で戦況をひっくり返せる人間です。
だから間違いなく要注意人物なんで……」
「……そう、なの?」
そんな強かったの?ソラ君。
「知らなかったな…」
オレの前で、強そうなとこなんて1つも見せなかった。可愛くて、ちょっとお馬鹿で、……寂しがり屋で。
一人でさみしいって、泣いて。
「普通の男の子だって、思いたかったのかな」
よく考えたら、色々普通じゃないこと言ってた。
小さい頃から皇太子の友だちだって言ってたし。
戦場でも背中を預けられるくらい信用されてたって言ってた。
そもそも、一人で木を切り倒して何本も運ぶなんて、普通じゃできないことだもの。
しかもあの日、馬で山を登ってきたんだよ?
馬に乗り慣れてる人じゃなきゃできないよ。
「たくさん殺してるって、思いたくなかったのかな」
ソラ君、オレ、それでもいい。
ソラ君だったら何でもいい。
オレは君の匂いがないと、もう駄目なんだ。
「…………そら、くん…………」
じっとソラ君を見つめるだけのオレを可哀想だと思ってくれたのか、案内してくれた人が言った。
「…ダメ元で、動かしていいか聞いてきますよ。
意識も戻ってないし、武器も無いし…
ロウさんなら、国を裏切ることもないと思うし」
オレは、彼に深々と頭を下げて頼んだ。
「よろしくおねがいします」
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