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再見

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前話のタイトルを変更し、この話のタイトルにしました。



「何だと!?」

 ジェロムは、平民らしき男が身分や礼儀を弁えず、娘達の慈悲をはねのけたことに声を荒げた。
 しかしエレノアとクリスティアはと言うと、青年の口から出た名前に反応した。

「ゲルダですって?」
「お姉様は生きてるのね!? 捨てたなんて人聞きの悪い! はずれギフトのお姉様が可哀想だから、悪く言われないように避難させただけよ! お姉様! 私達と帰りま」
「……お心遣い、感謝しております。今後も、森番の務めを果たしてまいります」

 クロムが出ていったが、家族のやり取りが聞こえたのにゲルダも小屋から出て、かつての家族に挨拶――いや、森番を務める代わりに戻らないと宣言した。クロムに助けられてはいるが、守られてばかりいるつもりもない。
 もっとも、エレノアはゲルダの変化を見て忌々しそうに眉を顰めているし、クリスティアは納得出来ずに食ってかかってきたが。

「これだけ森が綺麗になったのなら、もう良いでしょう!? 今日、殿下が狩りに来たら一緒に帰りましょう?」
「狩り、ですか?」
「聞いてない」
「森番風情に、しかもはずれスキル持ちなんかにいう訳がないでしょう? 殿下とやり取り出来るのは、領主のお父様や私達貴族だけよっ」

 王族が来ると言われ、ゲルダとクロムの脳裏に浮かんだのは先日、森に来たレニエだった。
 確かにゲルダは森番でしかないのでクリスティアの言い分も解るし、秋から春までは狩猟シーズンだが――そこまで考えて、ゲルダはクリスティアとエレノアの厚化粧に気づいた。ゲルダが離れ、菌の加護が無くなった影響なのだろうか? そうなると、クリスティアがゲルダを連れ戻したがるのは解る。解るのだが、利用したいくせに貶めてくるのは良くないと思う。

(あら? でもお義母様とクリスティアは美の加護持ちよね?)

 そこでふと、ゲルダはあることに引っかかった。
 けれどその疑問をゲルダが口にする前に、馬のひづめの音と共に新たな声が聞こえてきた。

「はずれギフト? 興味深いな」
「殿下! よくいらっしゃいましたっ」

 声の主はジェロム達が待ち望んだ、そしてゲルダとクロムが予想していた通りのレニエだった。今日は、馬に乗ってやってきている。
 しかしレニエは弓を持っていないし、後ろには家臣らしい数人の連れの他、一台の馬車が控えている。

(やはり狩りは、クリスティアを城に連れていく為の口実か)

 思った通りの展開にほくそ笑むジェロムだったが、レニエが目線で家臣達を促し、馬車から荷物を降ろすのに「は?」と思わず間の抜けた声を上げた。

「ゲルダ嬢。今日は以前、頂いた美味しいパンとお茶のお礼をしに来たよ。これは食材と、保存食ね」
「あ、ありがとうございます」
「気が利くな」
「あの、殿下……?」
「……ああ、サブル伯爵。実は今日は以前、私をもてなしてくれたゲルダ嬢に対するお礼と……君の娘御が言っていた『はずれギフト』について、話があるんだ」
「は……はい……」

 にこにこ、にこにこ。
 予想外の展開と、笑顔で圧をかけてくるレニエに、ジェロムは笑顔を作るのを失敗し口元を引きつらせた。
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