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カトリーヌがいつも首から下げている革袋に母アディヤが、それは何?、と興味を示したので、以前キャサリンが発掘した土器の欠片を見せてやったら、彼女は突然はらはらと涙を流した。
驚いたカトリーヌにアディヤはその土器が故国ニレルの物だと言った。
土器の欠片を手に入れた経緯を話すと、アディヤがキャサリンに会いたがったので連れて来ることにした。
最初は宮殿のような邸宅に度肝を抜かれて縮こまっていたキャサリンだったが、古代ニレル王国の話しになると人が変わったかのように生き生きと淀みなく話し始めた。
驚くことにキャサリンはニレル語もある程度話せるらしく、久しぶりに母国語で会話ができたアディヤは感激して涙を流し、すっかりキャサリンと仲良くなってしまった。
「お母様にニレル語を習わなかったの?」
もっとも至極なキャサリンの指摘にカトリーヌは
「チャレンジはしたんだけど才能無くて」
と顔を赤くした。
だって文字も記号みたいだし、右から書くんだもの、なんて言い訳をしてみたが、キャサリンとニレル語で話す母親の嬉しそうな顔を見ると、
『なんでもっと真剣に習得しなかったんだろう』
と今更ながら後悔した。
アディヤはキャサリンに使用人の子供達の家庭教師になってくれないかとお願いをした。
提示されたアルバイト料はキャサリンにとって驚くほどの高額だった。
最初キャサリンはお金は要りません、と固辞したけれど、
「いずれ独立する時の資金にするのに必要よ」
と言われてありがたく申し出を受け入れることにした。
カトリーヌは学校が休みの日もキャサリンに会えるのが楽しみだったし、何よりキャサリンを捕まえてはお茶をする母の顔が以前より明るくなったのが嬉しかった。
ある日のこと、キャサリンが言いにくそうに
「相談したいことがあるんだけど」
とモジモジしている。
なかなか言い出さないキャサリンに
「なによ~。ハッキリ言わないと相談に乗れないじゃないよ~」
と、ダッテダッテやり取りをしばらく楽しむ。
そして漸くキャサリンが
「バレンタインデーにチョコレート渡したことある?」
と小声で聞いた。
「無い」
「え?無いの?」
「無い」
「「・・・・」」
「渡さないの?」
「キャサリン渡すの?」
「・・・・」
「誰?誰?もしかしてヒース?」
「違うよ!」
「誰誰誰誰誰!!」
「・・・ヴィッラーニ先生」
「エエーーッ!!ヴィッラーニせんせぇ~?!」
「ちょっ、声、大きいって」
「ごめん、ごめん」
二人は急にヒソヒソ声になる。
「キャサリンって、ヴィッラーニ先生が好きなの?」
「・・・好きっていうか、・・・お世話になってるから」
「そんなに交流ある?」
「図書館で本の話したり・・・。
・・・家庭教師のことで相談に乗ってもらったりとかもしてるし・・」
「ほーほー。
それで私に一緒にチョコレートを買いに付き合って欲しいと。
わかった!そなたの願いを叶えてしんぜよう」
「・・・できれば、手作りとか、してみたいんだよね」
「・・・・手作り・・・。
キャサリンちゃん乙女~」
「私、叔父さんの家のキッチン使わせてもらえないから、・・・・それで・・・図々しいんだけど・・・」
「オッケー!
私の家で一緒に作ろうよ。
お菓子専門の料理人も何人かいるからどんなの作るか相談しよう」
「・・・お菓子専門の料理人・・・何人か・・・ソアルーサー、はかり知れねぇな!」
その後キャサリンと
「中身はともかく見栄えが大事」
ということになって、二人でラッピングの資材を買いに行くことにした。
放課後買い物に行こうとするとヒースもついてこようとする。
「今日は女の子だけで行きたいから」
と断ると
「なんだい、なんだい、仲間外れにしやがって」
と分かりやすく拗ねる。
そこに通りかかったクラスメートが、
「ほら、あれじゃん。バレンタインデー近いもんな!」
と余計なことを言うと、
「なんだ、そういうことか」
と機嫌を直して
「いってらっしゃ~い!
ボクはナッツが入ってるのが好きだよ~!
楽しみにしてるよ~」
と手を振っている。
そんなやり取りもグレアムは苦々しい顔で見ていた。
驚いたカトリーヌにアディヤはその土器が故国ニレルの物だと言った。
土器の欠片を手に入れた経緯を話すと、アディヤがキャサリンに会いたがったので連れて来ることにした。
最初は宮殿のような邸宅に度肝を抜かれて縮こまっていたキャサリンだったが、古代ニレル王国の話しになると人が変わったかのように生き生きと淀みなく話し始めた。
驚くことにキャサリンはニレル語もある程度話せるらしく、久しぶりに母国語で会話ができたアディヤは感激して涙を流し、すっかりキャサリンと仲良くなってしまった。
「お母様にニレル語を習わなかったの?」
もっとも至極なキャサリンの指摘にカトリーヌは
「チャレンジはしたんだけど才能無くて」
と顔を赤くした。
だって文字も記号みたいだし、右から書くんだもの、なんて言い訳をしてみたが、キャサリンとニレル語で話す母親の嬉しそうな顔を見ると、
『なんでもっと真剣に習得しなかったんだろう』
と今更ながら後悔した。
アディヤはキャサリンに使用人の子供達の家庭教師になってくれないかとお願いをした。
提示されたアルバイト料はキャサリンにとって驚くほどの高額だった。
最初キャサリンはお金は要りません、と固辞したけれど、
「いずれ独立する時の資金にするのに必要よ」
と言われてありがたく申し出を受け入れることにした。
カトリーヌは学校が休みの日もキャサリンに会えるのが楽しみだったし、何よりキャサリンを捕まえてはお茶をする母の顔が以前より明るくなったのが嬉しかった。
ある日のこと、キャサリンが言いにくそうに
「相談したいことがあるんだけど」
とモジモジしている。
なかなか言い出さないキャサリンに
「なによ~。ハッキリ言わないと相談に乗れないじゃないよ~」
と、ダッテダッテやり取りをしばらく楽しむ。
そして漸くキャサリンが
「バレンタインデーにチョコレート渡したことある?」
と小声で聞いた。
「無い」
「え?無いの?」
「無い」
「「・・・・」」
「渡さないの?」
「キャサリン渡すの?」
「・・・・」
「誰?誰?もしかしてヒース?」
「違うよ!」
「誰誰誰誰誰!!」
「・・・ヴィッラーニ先生」
「エエーーッ!!ヴィッラーニせんせぇ~?!」
「ちょっ、声、大きいって」
「ごめん、ごめん」
二人は急にヒソヒソ声になる。
「キャサリンって、ヴィッラーニ先生が好きなの?」
「・・・好きっていうか、・・・お世話になってるから」
「そんなに交流ある?」
「図書館で本の話したり・・・。
・・・家庭教師のことで相談に乗ってもらったりとかもしてるし・・」
「ほーほー。
それで私に一緒にチョコレートを買いに付き合って欲しいと。
わかった!そなたの願いを叶えてしんぜよう」
「・・・できれば、手作りとか、してみたいんだよね」
「・・・・手作り・・・。
キャサリンちゃん乙女~」
「私、叔父さんの家のキッチン使わせてもらえないから、・・・・それで・・・図々しいんだけど・・・」
「オッケー!
私の家で一緒に作ろうよ。
お菓子専門の料理人も何人かいるからどんなの作るか相談しよう」
「・・・お菓子専門の料理人・・・何人か・・・ソアルーサー、はかり知れねぇな!」
その後キャサリンと
「中身はともかく見栄えが大事」
ということになって、二人でラッピングの資材を買いに行くことにした。
放課後買い物に行こうとするとヒースもついてこようとする。
「今日は女の子だけで行きたいから」
と断ると
「なんだい、なんだい、仲間外れにしやがって」
と分かりやすく拗ねる。
そこに通りかかったクラスメートが、
「ほら、あれじゃん。バレンタインデー近いもんな!」
と余計なことを言うと、
「なんだ、そういうことか」
と機嫌を直して
「いってらっしゃ~い!
ボクはナッツが入ってるのが好きだよ~!
楽しみにしてるよ~」
と手を振っている。
そんなやり取りもグレアムは苦々しい顔で見ていた。
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