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21 女の子は切り替えが早いのよ
しおりを挟む港湾事務所の廊下でランディーがローリーを呼び止める。
「ちょっと話したいことがあるんだ。
時間をもらえないだろうか」
「いいですよ。じゃpanicで落ち合いましょう」
仕事帰りにランディーがpanicに行くと、ローリーは既にカウンターにいてカリスと喋りながらパスタを食べていた。
メニューには無い軽食でラウラがよく食べているがランディーが頼んでも絶対に出してもらえない一品だ。
珍しくテーブル席に座ったランディーは、ウイスキーをちびちびやりながらローリーが食べ終わるのを眺めていた。
しばらくするとローリーがやって来て向かいに座った。
居心地の悪さに何度も座り直したりしていたランディーだが、意を決したように、
「言わなきゃいけないことがあって・・」
ローリーは黙って真っ直ぐ見つめてきて、ランディーに助け船を出してくれる様子はない。
「あのさ、オレ、本当はずっと好きな人がいるんだ」
「知ってる~。ラウラさんでしょ?」
えっ!と驚くランディーにローリーは、
「態度を見てればすぐ分かりますよ。
それに、ラウラさんと話してみれば聞いてたような人じゃないってスグ気づきますって」
ランディーは苦笑いする。
「私、言ったんですよ。ラウラさんに。
職場のみんなに本当の事話しますって。
そしたらラウラさん、
『知らない人に悪く思われたって気にしないわ』って。
もっともマークス先輩の困った幼馴染みの名前や勤め先を知ってるのは私くらいだから、あんまり意味無いんですけど」
ランディーは溜め息を吐いた。
「で、私ラウラさんに言ったんですよ。
ラウラさんに対してはどうか分からないけど、マークス先輩はすっごく人望があって皆に好かれてるって。
新人が大きなミスした時も庇ってくれて一人で責任を取ってくれたし、港で事故があった時にも危険を顧みずに一番に助けに行ったんですよって」
「ラウラ何か言ってた?」
ランディーの声は期待に満ちていた。
「『アイツ双子だったのかな?』だって」
「ラウラさんは
『ランディーの職場での信頼を崩壊させてまで自分の正統性を主張しなくていい、所詮港湾事務所の人達とは無関係なんだし』
って言ってましたよ。
恋人になれる可能性は低いと思うけど、幼馴染みとしての情は残ってるってことじゃないんですか?
まあ、カンバレー」
ランディーは気が抜けたようになってソファーの背に深く凭れかかった。
「あと、マークス先輩。
先輩のことはキッパリサッパリ諦めますけど、これからもpanicには来ますから。
口止め料として私の飲み代は先輩のオゴリでヨロシク~」
『こんなに年下の女の子に気を使わせるなんて、オレはどうしようもないな』
ランディーは声を出す元気もなく、無言のまま何度も頷いていた。
その後も示し合わせているのかなんなのかラウラがpanicに来る時は必ずローリーが来る、といった調子でランディーはなかなかラウラと距離を縮められないでいた。
ローリーは最近ではルネにご執心のようで、ランディーはそんなローリーを少し羨ましいような気持ちで眺めていた。
『オレもラウラじゃなくても良かったらいいのに・・・』
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