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鰆のムニエルと肉じゃが
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まずは副菜が一箸ずつくらい減っていく。
それぞれ好みが違うのか、柔らかいものを好む人、硬いものを好む人。というか猫。
だし煮大根はしっかり味が濃く、味噌をつけて食べる。
根菜のきんぴらは食感の違いが楽しい。
さつまいもの甘露煮は女子に人気だ。
共通して聞こえてくる「美味い!」の声に、ぼくはとても嬉しくなる。
メイン二品。
肉じゃがはほくほくと野菜が煮えて、旨みをたっぷりと吸ったじゃがいもがホロリと溶けた。思わず「うまっ」と声が出る。
牛肉は濃厚でひと噛みごとに風味が広がる。
鰆のムニエルは白身の淡白な味と、柔らかさが魅力的だ。
ごま油を足しているから、和食中心の食卓によく合う。
ぺろりと一切れを完食する。
温かいほうじ茶を一口。
箸が止まらにゃい!
…………ちょっと猫になりすぎた。
ほら、目の前に黒猫がいるからさ。
心の中で喋っただけだけど、なんだか気恥ずかしくなってしまって、それを誤魔化すように黒猫に話しかける。
「ユウレイ。どう? って聞くまでもなさそうか。すんごい勢いでガッついてる……」
「んにゃあ」
申し訳程度にぼくに返事をした黒猫。
ぺろぺろと口の周りを舐めて、空っぽになったお皿をじーっと見つめている。
「鰆、おかわりする?」
「にゃっ!」
即答だ。
ぼくの手にすりすりと頭をすり寄せてくるくらいの媚びよう。
鰆が欲しくて、なりふり構ってられないらしい。
「おう美味いか!? そうだよな俺もそう思うぜ!」
魚屋さんがわははと豪快に笑った。
この人、ほうじ茶飲んで顔を赤らめて酔ってるようなんだけど!?
楽しそうだから、まあいいか……。
ぶ厚い一切れの鰆をほぐして、黒猫の前に皿を置いてやる。
あ、即効、顔を突っ込んでら。
うずうずしてしまって、黒猫の体にそっと指を触れさせる。
…………通り抜けるんだよな。
「はあっ! 陸くんが禁断の確認をしている……!」
「あたしたちがやりたくてもやれなかったやつを、こんなにもあっさりと……! ぐぬぬ! ところで、実際どう……? ユウレイの体内に、ごはん入ってるの?」
そう、それがみんな知りたかったんだよね。
ごくりと生唾を飲んで、黒猫を凝視している。
ぼくの指が動くたびに、みんなの猫耳もびくん! と反応する。
「口で溶けているのかな……黒猫の体内に固形物の感触はないな」
「そうなんだ~!」
はああ、とみんな感嘆の息を吐いた。
「不思議だねぇ」
「そうですよねぇ」
「ふしゃあ!」
あっ、さすがにごはん中に触られまくるのは嫌だったよな。
ごめんごめん。
じいっと観察に専念しよう。
食事する黒猫を眺める会。
……空気がまったりとしている。
「猫用にこれは油控えめにしたんですけど、もうそこまで健康面を気遣うことないのかなぁ……ユウレイは幽霊なんだし」
「陸くんほんとうにマメね」
泉さんがぱちぱち瞬きして、驚いている。
彼女の唇はムニエルの油でいつもよりさらに潤っているように見えた。
ぺろりと舌が唇を舐める仕草は、すごく猫らしい。
「あたし、そこまで気にしてなかったわ……」
「俺もです。言われてみれば、塩分とか、猫のために考えるべきでしたね……」
「玉ねぎとか、チョコとか、食べちゃダメな奴を避けるくらいしかしてなかったなぁー。陸くんはえらーい!」
雨宮さんに褒められて、ぼくの猫耳の動きをからかわれて、この話題は終わった。終わってくれ。よし!
それぞれ好みが違うのか、柔らかいものを好む人、硬いものを好む人。というか猫。
だし煮大根はしっかり味が濃く、味噌をつけて食べる。
根菜のきんぴらは食感の違いが楽しい。
さつまいもの甘露煮は女子に人気だ。
共通して聞こえてくる「美味い!」の声に、ぼくはとても嬉しくなる。
メイン二品。
肉じゃがはほくほくと野菜が煮えて、旨みをたっぷりと吸ったじゃがいもがホロリと溶けた。思わず「うまっ」と声が出る。
牛肉は濃厚でひと噛みごとに風味が広がる。
鰆のムニエルは白身の淡白な味と、柔らかさが魅力的だ。
ごま油を足しているから、和食中心の食卓によく合う。
ぺろりと一切れを完食する。
温かいほうじ茶を一口。
箸が止まらにゃい!
…………ちょっと猫になりすぎた。
ほら、目の前に黒猫がいるからさ。
心の中で喋っただけだけど、なんだか気恥ずかしくなってしまって、それを誤魔化すように黒猫に話しかける。
「ユウレイ。どう? って聞くまでもなさそうか。すんごい勢いでガッついてる……」
「んにゃあ」
申し訳程度にぼくに返事をした黒猫。
ぺろぺろと口の周りを舐めて、空っぽになったお皿をじーっと見つめている。
「鰆、おかわりする?」
「にゃっ!」
即答だ。
ぼくの手にすりすりと頭をすり寄せてくるくらいの媚びよう。
鰆が欲しくて、なりふり構ってられないらしい。
「おう美味いか!? そうだよな俺もそう思うぜ!」
魚屋さんがわははと豪快に笑った。
この人、ほうじ茶飲んで顔を赤らめて酔ってるようなんだけど!?
楽しそうだから、まあいいか……。
ぶ厚い一切れの鰆をほぐして、黒猫の前に皿を置いてやる。
あ、即効、顔を突っ込んでら。
うずうずしてしまって、黒猫の体にそっと指を触れさせる。
…………通り抜けるんだよな。
「はあっ! 陸くんが禁断の確認をしている……!」
「あたしたちがやりたくてもやれなかったやつを、こんなにもあっさりと……! ぐぬぬ! ところで、実際どう……? ユウレイの体内に、ごはん入ってるの?」
そう、それがみんな知りたかったんだよね。
ごくりと生唾を飲んで、黒猫を凝視している。
ぼくの指が動くたびに、みんなの猫耳もびくん! と反応する。
「口で溶けているのかな……黒猫の体内に固形物の感触はないな」
「そうなんだ~!」
はああ、とみんな感嘆の息を吐いた。
「不思議だねぇ」
「そうですよねぇ」
「ふしゃあ!」
あっ、さすがにごはん中に触られまくるのは嫌だったよな。
ごめんごめん。
じいっと観察に専念しよう。
食事する黒猫を眺める会。
……空気がまったりとしている。
「猫用にこれは油控えめにしたんですけど、もうそこまで健康面を気遣うことないのかなぁ……ユウレイは幽霊なんだし」
「陸くんほんとうにマメね」
泉さんがぱちぱち瞬きして、驚いている。
彼女の唇はムニエルの油でいつもよりさらに潤っているように見えた。
ぺろりと舌が唇を舐める仕草は、すごく猫らしい。
「あたし、そこまで気にしてなかったわ……」
「俺もです。言われてみれば、塩分とか、猫のために考えるべきでしたね……」
「玉ねぎとか、チョコとか、食べちゃダメな奴を避けるくらいしかしてなかったなぁー。陸くんはえらーい!」
雨宮さんに褒められて、ぼくの猫耳の動きをからかわれて、この話題は終わった。終わってくれ。よし!
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