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黒猫へお願い
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体が内側からほこほこ温まっている。
お腹は満たされている。
コタツに入っていると、眠くなってくる……。
ここにいるみんなは黒猫耳の仲間だからか、妙に他人感がなくて、緊張しないんだよなぁ。
先週一回会ったばかりなのに、それに美人の女性もいるのに、こんなにリラックスして過ごせてるなんて、驚くばかり。
「はふ……眠ぅい……」
「分かります、でも眠っちゃダメですよ泉さん。ぼくの部屋を集会所にするのは良いですけど、えーと、異性の寝泊まりはさすがに困りますから……」
「ん? 年頃の女性じゃなければセーフかな? ふあ……」
「神谷さん、ずるいのでダメです!」
「ああ、こんなに気持ちいいのになぁ。残念。僕はコタツでこんなに眠くなったのは初めてだけど、もしかして猫になったからかな?」
神谷さんの言葉で、この黒猫耳の影響について考える。
ぼくたちがなんとなく確認しているのは、聴覚と視力の向上、眠くなりやすいってところかな……?
仕事の時には困るよね、と軽く話す。
「むにゃ……デザートぉ……」
熟睡しかけていた雨宮さんがしっかり要求したので、笑ってしまった。
ぼくたちはそれで目が覚めたので、彼女の天然に感謝だな。
雨宮さんが持ってきたのは、フルーツゼリー。
「きっと陸くんの美味しいご飯でお腹十分目まで満たしちゃうと思ったので、サラッと食べられるゼリーにしましたっ」
「とてもいい選択だわ」
泉さんが雨宮さんの頭を撫でる。
ぼくの料理もそこまで評価してもらえると、ありがたいよね。
日常でこんなに褒められることって無いから……やばいな、集会、あらゆる意味でクセになりそう。
豪華食材は貰えるし、褒められるし、猫だらけで癒されるし。
集会、続いていくといいなぁ……って期待してる。
ゼリーはつるんと喉を通り過ぎていき、フルーツは瑞々しく香り高い。
驚愕する。
150グラム150円。
これがコンビニ商品!?
「最近のコンビニデザートはこんなにクオリティが高いのか……!」
「ノンノン。スイーツって表現なのですよ?」
雨宮さんがドヤ顔でぼくの発言を訂正し、
「名称のマーケティングは大事なんだからね! 」
泉さんが真顔で強調した。
ほ、本気の目だ。仕事人として譲れないところなのだろう。
心得ておきますね。
「じゃあ、黒猫ユウレイ集会、って名称は?」
「分かりやすくて、幽霊とユウレイがダブルミーニングで、珍しさもあるし、満点じゃないかしら?」
「やったーー!」
泉さんが雨宮さんを甘やかして、雨宮さんは無邪気にバンザイして喜ぶ。
ああ、一週間の疲労が癒されていくようだ。
黒猫が、厚人くんのところに寄っていく。
彼のゼリーは赤……苺のゼリー? そういえば苺は、春先の黒猫の好物だった。
「与えていいやつですか? これ。陸さん」
「うん、苺はセーフ」
さっき黒猫は幽霊だからって話をした後なのに、彼は律儀にぼくに確認してから、ゼリーをスプーンですくって与えた。
黒猫と触れ合えて嬉しいらしく、彼の口元がやんわり微笑んでいる。
それを眺めながら、雨宮さんがぽつりと呟く。
「そういえば。黒猫は幸運の象徴だって話しましたよねー? 日本では『福猫』って言われて、昔から商売繁盛と厄除けの守り神でした。イングランドの結婚式は黒猫モチーフだったり、フランスで魔法の猫って言われてたり、外国でも様々なジンクスがありますよ」
へえ、とぼくたちが耳を澄ませる。
弾むような声は、すんなりと耳に届いた。
「美味しいごはんをあげている飼い主には幸運をもたらしてくれるそうですよ~?」
みんなで顔を見合わせた。
「そうなの? ユウレイ」
黒猫はコタツの上で、ぷうぷうと妙な寝息を立てて寝こけている。
泉さんがわくわくと顔を輝かせて、言った。
「じゃあ、ユウレイにお願い事をしてみましょうよ!」
「いいですねー!」
お願い事……か。
「あたしはねー! TOEICに合格したいんだよね! 海外にも自社商品を売り込みたくて、自分の言葉で行動できるように、勉強してんの!」
「俺はボクシングの試合で勝ちたいっすね。次の相手、因縁のやつなんで……」
「かあちゃああああん! 戻ってきてくれー!」
「お願い、黒猫ユウレイ!」
「にゃ?」
──みんなはワイワイ話している中、ぼくには、何一つ浮かんでこなかった……。
お腹は満たされている。
コタツに入っていると、眠くなってくる……。
ここにいるみんなは黒猫耳の仲間だからか、妙に他人感がなくて、緊張しないんだよなぁ。
先週一回会ったばかりなのに、それに美人の女性もいるのに、こんなにリラックスして過ごせてるなんて、驚くばかり。
「はふ……眠ぅい……」
「分かります、でも眠っちゃダメですよ泉さん。ぼくの部屋を集会所にするのは良いですけど、えーと、異性の寝泊まりはさすがに困りますから……」
「ん? 年頃の女性じゃなければセーフかな? ふあ……」
「神谷さん、ずるいのでダメです!」
「ああ、こんなに気持ちいいのになぁ。残念。僕はコタツでこんなに眠くなったのは初めてだけど、もしかして猫になったからかな?」
神谷さんの言葉で、この黒猫耳の影響について考える。
ぼくたちがなんとなく確認しているのは、聴覚と視力の向上、眠くなりやすいってところかな……?
仕事の時には困るよね、と軽く話す。
「むにゃ……デザートぉ……」
熟睡しかけていた雨宮さんがしっかり要求したので、笑ってしまった。
ぼくたちはそれで目が覚めたので、彼女の天然に感謝だな。
雨宮さんが持ってきたのは、フルーツゼリー。
「きっと陸くんの美味しいご飯でお腹十分目まで満たしちゃうと思ったので、サラッと食べられるゼリーにしましたっ」
「とてもいい選択だわ」
泉さんが雨宮さんの頭を撫でる。
ぼくの料理もそこまで評価してもらえると、ありがたいよね。
日常でこんなに褒められることって無いから……やばいな、集会、あらゆる意味でクセになりそう。
豪華食材は貰えるし、褒められるし、猫だらけで癒されるし。
集会、続いていくといいなぁ……って期待してる。
ゼリーはつるんと喉を通り過ぎていき、フルーツは瑞々しく香り高い。
驚愕する。
150グラム150円。
これがコンビニ商品!?
「最近のコンビニデザートはこんなにクオリティが高いのか……!」
「ノンノン。スイーツって表現なのですよ?」
雨宮さんがドヤ顔でぼくの発言を訂正し、
「名称のマーケティングは大事なんだからね! 」
泉さんが真顔で強調した。
ほ、本気の目だ。仕事人として譲れないところなのだろう。
心得ておきますね。
「じゃあ、黒猫ユウレイ集会、って名称は?」
「分かりやすくて、幽霊とユウレイがダブルミーニングで、珍しさもあるし、満点じゃないかしら?」
「やったーー!」
泉さんが雨宮さんを甘やかして、雨宮さんは無邪気にバンザイして喜ぶ。
ああ、一週間の疲労が癒されていくようだ。
黒猫が、厚人くんのところに寄っていく。
彼のゼリーは赤……苺のゼリー? そういえば苺は、春先の黒猫の好物だった。
「与えていいやつですか? これ。陸さん」
「うん、苺はセーフ」
さっき黒猫は幽霊だからって話をした後なのに、彼は律儀にぼくに確認してから、ゼリーをスプーンですくって与えた。
黒猫と触れ合えて嬉しいらしく、彼の口元がやんわり微笑んでいる。
それを眺めながら、雨宮さんがぽつりと呟く。
「そういえば。黒猫は幸運の象徴だって話しましたよねー? 日本では『福猫』って言われて、昔から商売繁盛と厄除けの守り神でした。イングランドの結婚式は黒猫モチーフだったり、フランスで魔法の猫って言われてたり、外国でも様々なジンクスがありますよ」
へえ、とぼくたちが耳を澄ませる。
弾むような声は、すんなりと耳に届いた。
「美味しいごはんをあげている飼い主には幸運をもたらしてくれるそうですよ~?」
みんなで顔を見合わせた。
「そうなの? ユウレイ」
黒猫はコタツの上で、ぷうぷうと妙な寝息を立てて寝こけている。
泉さんがわくわくと顔を輝かせて、言った。
「じゃあ、ユウレイにお願い事をしてみましょうよ!」
「いいですねー!」
お願い事……か。
「あたしはねー! TOEICに合格したいんだよね! 海外にも自社商品を売り込みたくて、自分の言葉で行動できるように、勉強してんの!」
「俺はボクシングの試合で勝ちたいっすね。次の相手、因縁のやつなんで……」
「かあちゃああああん! 戻ってきてくれー!」
「お願い、黒猫ユウレイ!」
「にゃ?」
──みんなはワイワイ話している中、ぼくには、何一つ浮かんでこなかった……。
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