僕と君を絆ぐもの2

はやしかわともえ

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一話

宝物

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「愛莉、久しぶりだな」

「ちい、久しぶり!」

千尋のことをこうやって気安く呼べる女性は多分、この世に数人しかいないと思う。
だいたいの女性が千尋を異性として特別視するからだ。
千尋は本当にかっこいい。
でも、僕の隣にこうしていてくれる。多分、僕の宝物は・・・。

「二人とも、あたしがいなくて寂しかったんじゃない?」

愛莉ちゃんが差し出してきたもの。それは日本酒の瓶だった。初めて見る銘柄だ。

「日本酒を飲んでいるアイドルなんていいのかよ」

千尋の突っ込みに愛莉ちゃんが口をとがらせる。可愛い。

「いいのー。あたし、利き酒もできるんだよ。すごいでしょー」

「愛莉ちゃん、毎日ライブ頑張ってるってお母さんから聞いているよ。僕も今度観に行くね」

ぱああと愛莉ちゃんが笑う。

「やったあ!あたしがセンターの曲もあるんだよ。絶対来てよね!」

こうしてみると僕の周りの顔面偏差値は高い方だと思う。


「二人でお鍋なんて楽しそうー」

「お前も食っていけよ」

「いいのー?」

こうして愛莉ちゃんも僕らの仲間に加わった。

「え?加那ちゃん、中学校の先生なの?」

「一応ね」

そっか。愛莉ちゃんにはまだ言ってなかったっけ。
近況を話しながら僕はそんなことに気が付いていた。
今日あったことも一緒に話す。

「え?総合的な学習の時間なんてまだあるんだ?懐かしい!
宝物ならあたしも持ってるよ」

そう言って愛莉ちゃんが小さな箱を見せてくれた。
手のひら大の銀色の四角い箱だ。

「あたしの宝物は絶対これ」

にっこり笑って言う彼女に僕の心は温かくなった。
その銀色の箱は彼女のデビューのお祝いに僕と千尋から彼女に送った贈り物だった。
中にはシルバーのブレスレットが入っていた。
彼女はそれを常に付けてくれている。

「いつも持ってんのか?」

「あたしのお守りだもん」

愛莉ちゃんの言葉に千尋も嬉しそうな顔をしている。
僕も同じ気持ちだった。

「愛莉ちゃんはいい子だねえ」

「本当だなあ」

千尋と一緒にふざけて彼女の頭を撫でる。

「もー、茶化さないでよね?」

愛莉ちゃん可愛いなあ。

「でも見えない宝物かあ」

うーん、と愛莉ちゃんが考えている。

「今時の中学生って難しいこと習うんだねえ」

「うん、それについて作文の宿題が出たんだって」

「あたしには無理かも」

愛莉ちゃんが即降参してみせる。

「難しいよね」

確か次の授業は来週のはずだ。
どんな作文を子供たちは書いてくるんだろう。
気になるからそっと読ませてもらおうか。
紫先生に試しに明日聞いてみよう。

それからたっぷりおじやまで楽しんで鍋会は終わりを告げた。

「じゃ、また来るね!」

「気を付けて帰るんだよ」

愛莉ちゃんのお母さん(僕のお母さんのお姉さんだ)が車で迎えに来て彼女は帰っていった。

「加那、風呂入れよ」

「ねえ千尋」

「ん?」

「僕の宝物は千尋だから・・・」

そう言って彼の袖を掴んだら、千尋が抱きしめてくれた。

「俺もだよ」

「うん」

千尋は見える。でも僕の心の中にも千尋は存在している。
宝物だ。
ずっと。
ずっと変わらない。
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