僕と君を絆ぐもの2

はやしかわともえ

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一話

すれ違い

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あっという間に次の週がやってきた。
今日は確か総合的な学習の時間の授業がある。

「おはようございます。加那先生」

「おはよう、月くん。作文は書けた?」

月くんが困ったように笑う。

「すごく時間かかっちゃったんだ。航太くんと一生懸命書いたよ」

「航太くんも書けた?」

そう尋ねると彼がそっぽを向く。

「俺は別に」

「航太くん、作文も上手なんだよ」

「月!余計なことは言うな」

「航太くん、なんで加那先生にそうやって当たるの?」

月くんが僕の腕を掴む。

「加那先生は優しい先生じゃん!航太くんなんてもう知らない!」

「月!!」

月くんが走って行ってしまう。

あちゃあ、喧嘩になっちゃった。
普段の彼なら考えられないことだ。もしかしたら二人の間になにかあったのかもしれない。
僕達はしばらくそこに立ち尽くしていた。

「航太くん、大丈夫?」

この言葉は適切かどうかわからなかったけど、僕は尋ねた。

「大丈夫なわけない」

彼の顔は真っ青だった。

「航太くん、少し僕と話さない?」

「え?」

「君の話、聞きたいんだ」

僕は彼と職員室に向かった。
担任である紫先生に少し時間をもらえないか尋ねて、許可をもらった。

「あんた、変なやつだな」

「よく言われる」

図書室に着いて航太くんはこう言った。思わず僕は笑ってしまう。
航太くんはこうじゃなくっちゃ。椅子に座るように彼に示す。
僕も対面に座った。

「なんで喧嘩になったのかな?月くんとなにかあった?」

「それは・・・」

決まりが悪そうに彼は椅子の上でもぞもぞしている。

「月はあんたが好きなんだ。二人でいる時もあんたのことばっかり話してる。だから俺、月にあんたは信じられない大人だって」

「そうなの?」

信じられない大人かあ。なるほど。

「俺の方が月をよく知ってるのに」

それってつまり。僕に嫉妬していたってこと?

「君、月くんが好きなんだよね?」

「え?ま、まあ」

「ならちゃんと伝えたほうがいい。月くんだって君が大切なはずだよ」

「月が?」

「気が付かないなんて言わないよね?」

僕は彼に笑いかけた。

「でも・・・もし俺のこと、許してくれなかったら」

「大丈夫。きっと・・・」

「本田先生!」
紫先生が図書室に飛び込んでくる。どうしたんだろう?

「桐谷くんが居なくって!」

「ええ?」

月くんがいなくなるなんて。落ち着け、僕。

「下駄箱の靴は見ましたか?」

紫先生がはっとしたように言う。

「まだ見ていませんでした」

僕たちは慌てて昇降口へ向かった。
下駄箱に月くんの上履きはなかった。
まだ校内にいるようだ。

「あいつ、どこに行ったんだ?」

航太くんがどんと壁に拳を打ち付ける。

「そんなに遠くへは行ってないよ。きっと航太くんを待ってる」

「俺を?」

「ん?」

僕はふと気になって床を見た。なにか落ちている。
キーホルダー?
それはクイズの載っている豆本のキーホルダーだった。懐かしいなあ。
誰かの落とし物かな?

「それ月の・・」

「え?」

また僕の背筋に冷たいものが流れる。
見えない力がまた働いている。

僕はそれを持ってそっと目を閉じた。
月くんはどこにいるんだろう。

頭の中に映像が流れる。
泣いている月くんが見えた。ここがどこの教室かはわからない。

「先生、月は美術室にいると思う」

「航太くん、わかった」

彼の頼もしい言葉に僕はほっとした。
紫先生には教室で待って居てもらうことにして、僕たちは美術室に向かった。
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