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二話

相談

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「わ、ホントに来てくれたんだ!!」

「よう、小林」

あれから既に一週間が経過していた。
千尋が僕の休みに合わせるように休みを取ってくれて、僕達はその日の昼間、小林さんのお店に来ていた。
今日は平日だ。それでもお店はそれなりに混んでいるようで、店員さんが忙しそうに働いている。
小林さんもまたカウンターで接客をしていたようだ。
僕達に気が付いて声を掛けてくれた。

「助かるよ、倉沢」

「まだ忙しそうだし、俺達、昼飯まだなんだ。ミックスサンドイッチ2つ頼む。あとコーヒー、ホットで。あと」

「お、了解」

千尋がサクサク注文してくれて、僕達は席についた。
テイクアウトもしているようで、どんどんお客さんがやってくる。
昼時とはいえ、すごいなぁ。

「千尋、小林さん忙しそうだけど大丈夫?」

サンドイッチを食べながら、そう小声で尋ねたら千尋が腕時計を見た。

「あいつ、もうすぐ休憩だから」

「倉沢ー!」

小林さんがサンドイッチを手に駆け寄ってくる。
どうやら本当に休憩時間らしい。
千尋、ここに相当通ってるな。

「お前、なかなか店、繁盛してるじゃないか」

「いやー、おかげさまで」

小林さんが笑う。
こりゃあ、本当に儲かってるんだろうなぁ。

「で、加那に相談したいことって、なんなんだ?」

千尋がこう尋ねると、小林さんが目線を泳がせた。
やっぱり言いにくいことらしい。

「レシピのこと…なんだけど」

そう彼は呟いた。
レシピかぁ、確かに本ではある。

「実は俺の作るサンドイッチのレシピは元になっているレシピのアレンジから生まれているんだ。まぁそのレシピは師匠のなんだけど」

「そのレシピがどうしたんだ?」

小林さんが身を縮ませる。

「この前、レシピを見ながらコーヒー飲んでたらこぼしちゃって」

それってつまり。
千尋もため息をついている。

「お前なぁ…」

「加那くん、なんとか復元できないかな?」

それは完全に僕の専門外だ。
本の修復というのは技術も要るし、時間も 
それなりにかかる。

「そのレシピ、僕が見ても大丈夫ですか?」

でも一応、と思って僕はこう尋ねた。
なにか力になれるかもしれない、そう何故だか感じた。

「じゃあ事務所に行こうか」

僕達は店の奥にある事務所に通された。
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