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二話
ブレイクタイム
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小林さんに案内されて入った部屋は、正に事務所だった。
事務所というテンプレートがあるとするならばこの部屋を指すんだろう。
周りを見渡すと、沢山の棚にファイルが並んでいる。大きなデスクも3つほどあった。
この部屋には僕たちの他には誰もいない。普段から誰もいないんだろうか。
「まぁ適当に座ってくれる?」
小林さんにそう促されて、僕達は椅子をあちこちの机から引っ張って、中央の机に寄せて座った。
小林さんはしばらく棚をゴソゴソやって、
冊子を取り出す。
「これ、なんだけど」
小林さんに手渡された冊子は確かに茶色く汚れていた。
相当読み込んであるらしく、紙がよれよれになっている。黄ばんでいる箇所も何箇所か見受けられた。
僕はぱらり、とページを捲った。やはり茶色く汚れてしまっている。
「これは読めないね」
「やっぱり無理かぁ」
小林さんが肩を落とす。
僕は諦めきれずにその次のページを捲った。
『美味しい玉子焼きの作り方』
辛うじて読める部分もある。
ふわふわな玉子焼きを焼くための大事なポイントが女性のイラストの横に書かれている。あれぇ?
僕はなんだか不思議な感覚に襲われていた。
「あのー、小林さん?」
一応聞いてみよう、そう思って僕は小林さんに声を掛けた。
「なんだい?加那くん」
「これってレシピっていうか、料理雑誌…ですよね?」
さっき師匠がどうとか言っていたような。
でもこのページ、昔どこかで見たことがある。気のせいにしてははっきり覚えているんだよな。
「そう、俺の心の師匠!というかばあちゃんなんだけどね」
それってつまり…。
「俺のばあちゃん、ちょっと有名な料理研究家なんだ。今もめちゃくちゃ元気で全国を飛び回ってる」
「じゃあおばあさんに頼んだらまたレシピを作ってもらえるんじゃないか?」
千尋がそう言うと、彼は大きな体を縮ませた。
「それができたら苦労しないっていうか…できないから困ってるんだけど」
「おばあさん、もしかして厳しい方なんですか?」
僕の言葉に小林さんは頷いてため息をついた。
「かなり。本を読みながらコーヒー飲んでたなんて知ったら…」
どうやら話は振り出しに戻ってしまったようだ。
今回ばかりは僕にもどうしようもできなさそうだ、なんて一瞬思ったのだけど。
「うーん」
「加那?どうした?」
車を走らせながら、千尋がそう聞いてくれた。千尋になら話してもいいかもしれない。
「ねえ千尋、僕の話、笑わないで聞いてくれる?」
隣の千尋にそう呟いたら彼は頷いてくれた。いつものことながら有り難い。
「あの雑誌、お母さんの店にあるかもしれなくてさ」
「それ、本当か?」
「うん。見覚えあるよ」
信号で千尋が車を緩やかに停める。
「なら里奈さんとこ、行ってみるか」
「でも小林さんはおばあさんにちゃんと理由を話すべきだと思う」
「それはそうだな」
僕はお母さんに電話を掛けて、これから行く旨を伝えた。
事務所というテンプレートがあるとするならばこの部屋を指すんだろう。
周りを見渡すと、沢山の棚にファイルが並んでいる。大きなデスクも3つほどあった。
この部屋には僕たちの他には誰もいない。普段から誰もいないんだろうか。
「まぁ適当に座ってくれる?」
小林さんにそう促されて、僕達は椅子をあちこちの机から引っ張って、中央の机に寄せて座った。
小林さんはしばらく棚をゴソゴソやって、
冊子を取り出す。
「これ、なんだけど」
小林さんに手渡された冊子は確かに茶色く汚れていた。
相当読み込んであるらしく、紙がよれよれになっている。黄ばんでいる箇所も何箇所か見受けられた。
僕はぱらり、とページを捲った。やはり茶色く汚れてしまっている。
「これは読めないね」
「やっぱり無理かぁ」
小林さんが肩を落とす。
僕は諦めきれずにその次のページを捲った。
『美味しい玉子焼きの作り方』
辛うじて読める部分もある。
ふわふわな玉子焼きを焼くための大事なポイントが女性のイラストの横に書かれている。あれぇ?
僕はなんだか不思議な感覚に襲われていた。
「あのー、小林さん?」
一応聞いてみよう、そう思って僕は小林さんに声を掛けた。
「なんだい?加那くん」
「これってレシピっていうか、料理雑誌…ですよね?」
さっき師匠がどうとか言っていたような。
でもこのページ、昔どこかで見たことがある。気のせいにしてははっきり覚えているんだよな。
「そう、俺の心の師匠!というかばあちゃんなんだけどね」
それってつまり…。
「俺のばあちゃん、ちょっと有名な料理研究家なんだ。今もめちゃくちゃ元気で全国を飛び回ってる」
「じゃあおばあさんに頼んだらまたレシピを作ってもらえるんじゃないか?」
千尋がそう言うと、彼は大きな体を縮ませた。
「それができたら苦労しないっていうか…できないから困ってるんだけど」
「おばあさん、もしかして厳しい方なんですか?」
僕の言葉に小林さんは頷いてため息をついた。
「かなり。本を読みながらコーヒー飲んでたなんて知ったら…」
どうやら話は振り出しに戻ってしまったようだ。
今回ばかりは僕にもどうしようもできなさそうだ、なんて一瞬思ったのだけど。
「うーん」
「加那?どうした?」
車を走らせながら、千尋がそう聞いてくれた。千尋になら話してもいいかもしれない。
「ねえ千尋、僕の話、笑わないで聞いてくれる?」
隣の千尋にそう呟いたら彼は頷いてくれた。いつものことながら有り難い。
「あの雑誌、お母さんの店にあるかもしれなくてさ」
「それ、本当か?」
「うん。見覚えあるよ」
信号で千尋が車を緩やかに停める。
「なら里奈さんとこ、行ってみるか」
「でも小林さんはおばあさんにちゃんと理由を話すべきだと思う」
「それはそうだな」
僕はお母さんに電話を掛けて、これから行く旨を伝えた。
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