獅子王晶の恋と日常の謎(怪盗編)

はやしかわともえ

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ホスピタル

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キラキラと強い陽射しが差し込んでいる。ここは山の麓にある富裕層向けのホスピタリティだ。ここまで電車で2時間程揺られる必要がある。広い庭には色とりどりの花が咲き誇っていた。まだまだ夏は盛りだ。そのはずなのにここは何故だか涼しい。そして空気が静かだった。不思議な雰囲気だなと思いながら、片手に持ったお土産をもう一度確認して庭にある石でできた道を通った。
「すみません、あの…面会をしたいのですけど」
あれから晶はここでしばらく入院することになった。メールでは頻繁にやりとりしていたけれど、晶は退屈そうだ。趣味のゲームもほとんどクリアしてしまったらしい。仕事をしたいとお医者さんにわがままを言っているとお屋敷でご飯を食べている時にふと聞こえてしまった。僕は、中にいた看護師さんに晶の病室を教えてもらった。ここは全部の病室が個室だ。さすが富裕層向け。僕は扉をノックした。
「どうぞ」
晶の声は少し元気じゃなかった。扉を横に引いて入ると晶がいた。前より痩せた?今までも小さいと思っていたのに。
「晶、こんにちは。久しぶり」
晶がベッドから身を乗り出してくる。僕は慌てて晶を抱き留めた。そのまま抱き寄せて膝の上に乗せる。
「深見!寂しかったよ!」
ひしぃと晶が抱き着いてくる。僕は晶の頭を撫でた。
「ごめんね。夏休みの後に開催されるコンクールに出すケーキの練習を学校でしていて」
「メールで言っていたね。すごく美味しそうなケーキだった」
僕は脇に置いたお土産を晶に渡した。
「食べてくれる?」
「え!もしかしてこれが?」
「うん。保冷剤に包んだから大丈夫だと思うけど」
「嬉しいよ。ここと来たら甘味は寒天入りのあんみつばかりでね」
確かに晶が好きそうなものは出なさそうだな。ポテトチップスとか買ってくるべきだったのかも。
晶は箱を開けて歓声を上げている。今回のケーキはドーム状の形をしている。見た目は華やかなピンク色だ。晶はスプーンを手にすると大事そうに切り分けた。中のスポンジからカスタードクリームが溢れてくる構造になっている。晶は嬉しそうに一口頬張った。
「ん!美味しい。クリームが優しいね」
「よかった」
晶がケーキを噛み締めながら遠くを見た。
「晶?」
「入院しなかったら僕はとても落ち着いていられなかった。でもそんな弱い僕に僕はがっかりしている」
「怖いことがあれば誰でもそうなるよ。僕もごめん、もっと穏便に出来たら良かったんだけど」
「深見は悪くない。僕を守ってくれた」
「晶」
僕は晶にキスをしていた。晶も僕を受け入れてくれる。僕たちはそっと離れた。
「僕は晶を絶対に守るよ。怪盗になんか渡さない」
「深見、無理はしないで欲しい。僕が君を愛していることを分かってくれ。僕も怪盗に屈するつもりはないよ」
「うん」
僕たちは抱き合っていた。
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