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対峙
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「深見、帰らないでほしいよ」
さっきから晶に泣きながら抱き着かれている。ホスピタリティに着いた瞬間、晶の【嫌々】が始まってしまったのだった。
「晶、落ち着いて。もうすぐ夏休みに入るし、そしたら毎日来れるから」
「本当かい?」
僕は屈んだ。晶の手の甲にキスをする。
「お姫様を放っておく騎士がいるの?」
「深見」
晶に抱き着かれる。僕は晶をそのまま横抱きに抱き上げた。
「ほら、行こうね」
「あぁ」
晶を個室のベッドに座らせる。晶が持っていたバッグもベッドの脇にある白い棚に置いた。
「晶、何かあったらメールちょうだいね」
「分かった。深見、ありがとう」
僕が手を振ると晶が振り返してくれる。
僕は晶の住むお屋敷に戻った。
*
屋敷に入った瞬間、スマホがメール着信の通知が来た。晶かなと思って開いたら、画像が添付されている。晶が下着姿で縛られている。口にはガムテープが貼られていた。本文に目を通す。
「お久しぶりです。騎士様。姫君は我が手中にいます。宝を頂ければ無傷でお返し致します」
僕は怒りのあまり、顔が急激に熱くなった。
「くそっ!」
「涼介様!!」
屋敷の中にいた使用人さんたちが僕に駆け寄ってくる。
「坊ちゃまが!!」
「はい…僕にもメールが来てます」
なんとかしなくちゃ。でもどうすれば。
僕は写真をじっくり眺めた。写真を見る限りホスピタリティではない。あそこは綺麗で新しいのがウリの施設だ。メールが来たのは僕が屋敷に帰ってきてすぐ。もし僕がホスピタリティを出てすぐに攫われたのなら、遠くに逃げられている可能性が高い。ならどこだろう?晶は両手足を縛られてしまっている。きっと怖い思いをしているだろう。
僕は思い切って電話を掛けてみた。奴は晶のスマホを持っている。数コール呼び出し音が鳴る。そして相手は出た。
「やぁ、騎士様。お久しぶり」
「怪盗!晶を解放しろ!」
「そんなに慌てなくても。私はただ石が欲しいのですよ。しかもその石は普通じゃないと噂があります。なんでも願いを叶えてくれるのだとか」
こいつ、正気か?ただの宝石にそんな力があるわけない。
「晶に代わってほしい。無事かどうか確かめたい」
「仕方ないですね」
「晶!聞こえる?」
「深見、怖いよ…宝石って何のことだい?」
そうだ。晶が鍵になっていることを晶は知らないんだ。
「晶、落ち着いて。必ず助けるから」
「でも…」
「ダメですよ、姫君。勝手なことを言っちゃ」
「ぐぁぁ」
晶のうめき声。殴られている?
「やめろ!晶に暴力を振るうな!」
怪盗は僕を鼻で笑った。
「姫君の身体を認証させられる程の施設。そういうと随分規模の大きなものと断定出来ますね」
「なんでお前は石に固執する?!」
「言ったでしょう?なんでも願いを叶えてくれる石があるんですよ」
僕は通話の後ろから音がすることに気が付いた。なんだろう、祭囃子?太鼓や笛が鳴っている。
きっと夏祭りだ。
「失礼しますよ、騎士様」
プツン、と通話は切れてしまった。
「涼介様!坊ちゃまは?」
「晶はかなり弱ってしまっています。早く助けないと」
僕はスマホの検索窓に都内近郊で行われている夏祭りについて調べた。もちろん膨大な結果が出てくる。時間もあまりない。どうすれば。
「涼介様、何をお調べで?」
「はい。怪盗の方から祭囃子が聞こえたんです。この時期なら夏祭りかなって」
「それならホスピタリティからそこまで離れていないはずだ」
「旦那様!」
晶のお父さんは騒ぎを聞いて駆けつけてくれたらしかった。
「本当ですか?」
「黒島、車を」
「は!」
「涼介くん、よく聞き取ってくれた」
「たまたまです。あの、晶…くんは怪我をしているかもしれません」
「晶で構わんよ。あの子の身体を傷付ける者は万死に値するがね」
お父さん、さすがに怖いです。車の用意が出来て僕たちは目的地に向かった。
さっきから晶に泣きながら抱き着かれている。ホスピタリティに着いた瞬間、晶の【嫌々】が始まってしまったのだった。
「晶、落ち着いて。もうすぐ夏休みに入るし、そしたら毎日来れるから」
「本当かい?」
僕は屈んだ。晶の手の甲にキスをする。
「お姫様を放っておく騎士がいるの?」
「深見」
晶に抱き着かれる。僕は晶をそのまま横抱きに抱き上げた。
「ほら、行こうね」
「あぁ」
晶を個室のベッドに座らせる。晶が持っていたバッグもベッドの脇にある白い棚に置いた。
「晶、何かあったらメールちょうだいね」
「分かった。深見、ありがとう」
僕が手を振ると晶が振り返してくれる。
僕は晶の住むお屋敷に戻った。
*
屋敷に入った瞬間、スマホがメール着信の通知が来た。晶かなと思って開いたら、画像が添付されている。晶が下着姿で縛られている。口にはガムテープが貼られていた。本文に目を通す。
「お久しぶりです。騎士様。姫君は我が手中にいます。宝を頂ければ無傷でお返し致します」
僕は怒りのあまり、顔が急激に熱くなった。
「くそっ!」
「涼介様!!」
屋敷の中にいた使用人さんたちが僕に駆け寄ってくる。
「坊ちゃまが!!」
「はい…僕にもメールが来てます」
なんとかしなくちゃ。でもどうすれば。
僕は写真をじっくり眺めた。写真を見る限りホスピタリティではない。あそこは綺麗で新しいのがウリの施設だ。メールが来たのは僕が屋敷に帰ってきてすぐ。もし僕がホスピタリティを出てすぐに攫われたのなら、遠くに逃げられている可能性が高い。ならどこだろう?晶は両手足を縛られてしまっている。きっと怖い思いをしているだろう。
僕は思い切って電話を掛けてみた。奴は晶のスマホを持っている。数コール呼び出し音が鳴る。そして相手は出た。
「やぁ、騎士様。お久しぶり」
「怪盗!晶を解放しろ!」
「そんなに慌てなくても。私はただ石が欲しいのですよ。しかもその石は普通じゃないと噂があります。なんでも願いを叶えてくれるのだとか」
こいつ、正気か?ただの宝石にそんな力があるわけない。
「晶に代わってほしい。無事かどうか確かめたい」
「仕方ないですね」
「晶!聞こえる?」
「深見、怖いよ…宝石って何のことだい?」
そうだ。晶が鍵になっていることを晶は知らないんだ。
「晶、落ち着いて。必ず助けるから」
「でも…」
「ダメですよ、姫君。勝手なことを言っちゃ」
「ぐぁぁ」
晶のうめき声。殴られている?
「やめろ!晶に暴力を振るうな!」
怪盗は僕を鼻で笑った。
「姫君の身体を認証させられる程の施設。そういうと随分規模の大きなものと断定出来ますね」
「なんでお前は石に固執する?!」
「言ったでしょう?なんでも願いを叶えてくれる石があるんですよ」
僕は通話の後ろから音がすることに気が付いた。なんだろう、祭囃子?太鼓や笛が鳴っている。
きっと夏祭りだ。
「失礼しますよ、騎士様」
プツン、と通話は切れてしまった。
「涼介様!坊ちゃまは?」
「晶はかなり弱ってしまっています。早く助けないと」
僕はスマホの検索窓に都内近郊で行われている夏祭りについて調べた。もちろん膨大な結果が出てくる。時間もあまりない。どうすれば。
「涼介様、何をお調べで?」
「はい。怪盗の方から祭囃子が聞こえたんです。この時期なら夏祭りかなって」
「それならホスピタリティからそこまで離れていないはずだ」
「旦那様!」
晶のお父さんは騒ぎを聞いて駆けつけてくれたらしかった。
「本当ですか?」
「黒島、車を」
「は!」
「涼介くん、よく聞き取ってくれた」
「たまたまです。あの、晶…くんは怪我をしているかもしれません」
「晶で構わんよ。あの子の身体を傷付ける者は万死に値するがね」
お父さん、さすがに怖いです。車の用意が出来て僕たちは目的地に向かった。
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