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ユキ

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ヒメリがまだ眠っているユキを抱いて居間に向かうと、クロード以外の者全員、ユキに驚いていた。それはそうだろう。こんなに巨大な蜘蛛を日常で見かけることなどないのだから。

「大きな蜘蛛だね。でも可愛い」

スバルが驚いたように言う。オリオも頷いていた。オリオがユキをどうしても抱っこしたいと言うので、ヒメリは注意するように言った。彼女は見た目に比べて軽い。

「わ、本当に軽い!」

「オリオ、気を付けて!」

スバルとオリオがバタバタやっているのを見て、ヒメリはつい笑ってしまった。

「スバルー、弁当出来たから持ってけー」

「はーい」

いつの間にかクロードが日々の食事を作ってくれるようになっている。
まるで新しい本当の家族が出来たようで、ヒメリはそれに温かい気持ちになる。
彼らとはずっと一緒にはいられない、そんな寂しい気持ちももちろんある。だが今はこの温かい感情を大切にしたい。

クロードが作った朝食をみんなで食べる。ヒメリはこれからパンの焼きの作業に入る。
それをクロードが当然のように手伝ってくれる。初め、彼に雇ってくれと頼まれたのに、クロードは給金を受け取ってくれない。
それどころか、そのまま家賃にしてくれと釘まで刺されてしまっている。

「キュ」

しばらくするとユキが目を覚ました。蜘蛛の姿から人間の姿になる。それにオリオとスバルは当然驚いていた。

ヒメリがユキにクロードの作ったスープを食べさせるとあっという間に完食してしまった。小さな体のどこに入っていくのか誰にも分からない。
ユキはお腹がいっぱいになって満足したのか、またぼうっとしている。

「ユキ、俺オリオ!こっちが大好きなスバル兄ちゃん!」

オリオがスバルと共にぼうっとしているユキに話し掛けている。彼女の自我が成長で発現するのかすらも分からない。相手は蜘蛛で人間ではない。
ヒメリはユキがずっと心配だった。そして、ユキの母親のことも。

「ユキ、学校が終わったら俺と遊ぼ!」

オリオがユキをソファに座らせると、ユキはきゅっと体を縮こませた。
それを見て、怖いのかとヒメリは思ったのだが、ユキはオリオの方をじっと見つめている。
彼女は確かに外の世界に働きかけている。彼女は見ることで学習しているのかもしれない。

「じゃあヒメ兄ちゃん、行ってくるね」

スバルは今日、カウンセリング初日だった。
紹介された、カウンセリングをするクリニックが少し遠い。終わり次第学校へ行くことになっている。
送迎はもちろんクロードがしてくれる。

「あぁ。気を付けてな」

ヒメリの言葉にスバルは頷いた。オリオも学校に行く時間になる。ユキに構いすぎていてそれに気付かず、慌てて家を飛び出していった。

「ユキ、おいで」

ヒメリはユキを抱き上げて、厨房にある椅子に座らせた。ユキは椅子に大人しく座っている。

「ヒメ様、ワタクシめが見ておりますので」

ボーがそう申し出てくれたのでヒメリは彼に頼むことにした。パンを焼いている間、ユキはずっとじっとしていた。
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