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パン屋・リフィールその後
スバル・学校とアルバイトと④
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「うわ、病院なんて久しぶりに来た」
「うん、そうだね」
スバルとオリオはしっかり手を繋いでいる。スバルはまた気持ち悪くなったら困ると思い、エチケット袋を持参していたがどうやら大丈夫そうだ。
カウンセリングルームに通って、静かな雰囲気に慣れたお陰だろう。
ここはこの辺りでは一番大きな病院である。
受付で尋ねると、面談をするための書類を書かされた。
スバルがオリオをちらりと見つめると彼もまた緊張しているようだ。いつの間にかオリオの身長が伸びていることに気がつく。
自分たちは大人に少しずつ近付いてきている。
「二人共、お父さんは四階の403号室に居るみたいだ。どうする?二人だけで行けるか?」
スバルはオリオを見つめた。彼が頷く。
「うん、俺たちだけで行くよ。待っててくれる?」
「あぁ、他の患者さんの迷惑にならないようにな」
ヒメリの言葉に、スバルとオリオは頷いた。
「俺たちは食堂にいるからな」
ヒメリとクロードに手を振って、二人は四階に向かった。
「兄ちゃん、またお父さんに打たれないかな?」
オリオが明らかに怖がっているのが分かる。スバルは彼の肩を軽く叩いた。
「大丈夫、俺がそんなことさせないよ」
「兄ちゃん…、うん」
病室に入ると、驚くほど静かだった。
部屋にベッドが4つ並んでいる。
一番手前のベッドにスバルとオリオの父が横になっていた。どうやら彼は眠っているようだ。
スバルは驚いた。前に見た父とは全く様子が違う。肌はどす黒くなり、頬がこけてしまっている。急に父親が唸る。
二人はそれに驚いたが、意識が戻ったわけではないことにホッとした。
やはりまだどこかに父親に対する恐怖心が残っている。父親に今、そんな力が残されているはずがないのにだ。二人や母親に暴力を振るった父はもういない。
「父さん、来たよ」
スバルが静かに声を掛けるが、父親は反応しなかった。ずっと意識がないとヒメリから聞いていたので、覚悟はしてきたつもりだった。
「お父さん…」
オリオが泣きながら父親の手を握る。スバルもそうした。
「俺、あんたを許せるかまだ分からない。でもずっと忘れないから」
「お父さんも俺たちを忘れないでね」
二人はしばらく黙って手を握っていた。面会時間のリミットが迫ってきている。
「オリオ、そろそろ行こうか」
「うん…そうだね」
二人は病室を後にして、食堂に向かった。
ヒメリとクロードはコーヒーを飲んでいたらしい。
「二人共、大丈夫か?」
ヒメリが慌てたように駆け寄ってくる。スバルとオリオは笑った。
「俺たち、そんなひどい顔してる?」
「二人共、顔が真っ青だから驚いた」
二人はそっと頷きあった。
「お父さんに会えて良かった。まだ気持ちはモヤモヤしてるけど」
そうオリオが言うと、ヒメリにぎゅっと抱き締められる。母親がいたらこんな感じなのかな、とスバルはぼんやり思った。ヒメリはいつでも優しく自分たちを見守ってくれる。
「二人共、何か飲んで気分を変えよう。食べれそうならそれでもいいけどどうする?」
クロードがそう言ってくれたので、二人はジュースを頼んだ。
「うん、そうだね」
スバルとオリオはしっかり手を繋いでいる。スバルはまた気持ち悪くなったら困ると思い、エチケット袋を持参していたがどうやら大丈夫そうだ。
カウンセリングルームに通って、静かな雰囲気に慣れたお陰だろう。
ここはこの辺りでは一番大きな病院である。
受付で尋ねると、面談をするための書類を書かされた。
スバルがオリオをちらりと見つめると彼もまた緊張しているようだ。いつの間にかオリオの身長が伸びていることに気がつく。
自分たちは大人に少しずつ近付いてきている。
「二人共、お父さんは四階の403号室に居るみたいだ。どうする?二人だけで行けるか?」
スバルはオリオを見つめた。彼が頷く。
「うん、俺たちだけで行くよ。待っててくれる?」
「あぁ、他の患者さんの迷惑にならないようにな」
ヒメリの言葉に、スバルとオリオは頷いた。
「俺たちは食堂にいるからな」
ヒメリとクロードに手を振って、二人は四階に向かった。
「兄ちゃん、またお父さんに打たれないかな?」
オリオが明らかに怖がっているのが分かる。スバルは彼の肩を軽く叩いた。
「大丈夫、俺がそんなことさせないよ」
「兄ちゃん…、うん」
病室に入ると、驚くほど静かだった。
部屋にベッドが4つ並んでいる。
一番手前のベッドにスバルとオリオの父が横になっていた。どうやら彼は眠っているようだ。
スバルは驚いた。前に見た父とは全く様子が違う。肌はどす黒くなり、頬がこけてしまっている。急に父親が唸る。
二人はそれに驚いたが、意識が戻ったわけではないことにホッとした。
やはりまだどこかに父親に対する恐怖心が残っている。父親に今、そんな力が残されているはずがないのにだ。二人や母親に暴力を振るった父はもういない。
「父さん、来たよ」
スバルが静かに声を掛けるが、父親は反応しなかった。ずっと意識がないとヒメリから聞いていたので、覚悟はしてきたつもりだった。
「お父さん…」
オリオが泣きながら父親の手を握る。スバルもそうした。
「俺、あんたを許せるかまだ分からない。でもずっと忘れないから」
「お父さんも俺たちを忘れないでね」
二人はしばらく黙って手を握っていた。面会時間のリミットが迫ってきている。
「オリオ、そろそろ行こうか」
「うん…そうだね」
二人は病室を後にして、食堂に向かった。
ヒメリとクロードはコーヒーを飲んでいたらしい。
「二人共、大丈夫か?」
ヒメリが慌てたように駆け寄ってくる。スバルとオリオは笑った。
「俺たち、そんなひどい顔してる?」
「二人共、顔が真っ青だから驚いた」
二人はそっと頷きあった。
「お父さんに会えて良かった。まだ気持ちはモヤモヤしてるけど」
そうオリオが言うと、ヒメリにぎゅっと抱き締められる。母親がいたらこんな感じなのかな、とスバルはぼんやり思った。ヒメリはいつでも優しく自分たちを見守ってくれる。
「二人共、何か飲んで気分を変えよう。食べれそうならそれでもいいけどどうする?」
クロードがそう言ってくれたので、二人はジュースを頼んだ。
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