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おにいちゃん

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家に帰るとお兄様達に一斉に取り囲まれてしまった。
皆、私を待っていてくれたんだ。
嬉しい。

「ムギ!!相手の男に何かされたりしてないよな!!」

「ムギちゃん!!どうだったの!!」

「もし何かしていたら、このヘンリが直々に!!」

「つーか、兄貴達、落ち着けよ。ムギが困ってんだろーが」

ユイ兄様の冷静な言葉に他のお兄様達も静かになった。

「で、ムギ。どーだったわけ?」

ユイ兄様が尋ねてくる。

「キリト様っていうんだけど、優しい方だったわ」

私の言葉にお兄様達はホッとしたようだった。

「まあ第一試練は突破したようだな!」

トーマス兄様が高らかに笑う。

「女の子に優しくするのは男として当然だもんね!」

とサンデ兄様。

「ムギ、困ったことがあったらすぐ言いなさい」

とヘンリ兄様が呟く。

「ま、ムギが幸せならなんでもいいよ、俺は」

「ユイ!なんて冷たいことを言うんだ!!」

「ちょ、トーマス兄貴!技かけないで!ギブギブ!!」

ユイ兄様がバシバシトーマス兄様の腕を叩いている。

「お兄様達、いつもありがとう。私、幸せになれるように努力するわ」

私が笑いながら言ったらお兄様達は頷いてくれた。
貴族同士の結婚はすぐにはできない。

いくつかの儀式を経てようやく一緒になれる。
私とキリト様は今日、婚約を結んだ。
ここから少しずつ結婚に向けて儀式は進んでいく。
キリト様に会うには今日のように公式な場でないと会えない。
寂しかったけれど、帰り際に手紙を書くとキリト様は言ってくれた。

私からも書くと約束をしたので、夕飯を食べ終えたら書こうと思っている。

「ねえ、ムギ。キリトさん、のこともっと聞かせてよ」

「俺も聞きたい!!」

お兄様達が詰め寄ってきたので、私は慌てた。お母様がやんわり止めてくれたからよかった。
私はキリト様が戦争で大きく傷付いてしまっている事をお兄様達に話した。

前に会ったことがあるかもしれない、ということは敢えて言わなかった。
私自身が確証を持てなかったし、お母様にそっと聞いたら、キリト様には初めて会うとのことだったからだ。

(なんで記憶のつじつまが合わないんだろう?
キリト様は会ったことがあるって確かに言っていたのに。勘違いとも違うような…)

考えても分からない。
もやもやするけれど今はそのままにしておくしかなかった。
もしかしたらこれから何か思い出すかもしれない。そうなることを祈ろう。

(キリト様はどんなお手紙をくれるんだろう)

それが今は待ち遠しい。

「ムギ、お茶だってさ」

ユイ兄様が呼んでくれた。

「はぁい」

キリト様に送るお手紙に何を書こう。私は考えながら立ち上がった。
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