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薬液Y

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三階に上がると、突然空気が冷たくなった気がする。

「キリト、子供達はどこにいたの?」

「しっ」

キリトにぐいと肩を抱き寄せられる。僕達は物陰に隠れる形になった。
すーっと眼の前を何かが通った。あれって。

「キリト…」

「さっきからあいつがウロウロしててさ」

「あれもバーサーカーモードなのかも」

キリトが僕を見つめてくる。

「もしかして攫われた子供が何かでああなってるってことか?」

僕は頷いた。キリトが続ける。

「じゃあ薬が絶対に必要ってことか」

「うん、そうなるね」

僕達は静かにその場を動いた。
床を踏みしめた瞬間、ギイイと床が軋む。
やばい。

「グギュアアア!!!」

やっぱり出てきた。
バーサーカーは皆同じ姿らしい。
白髪に長い腕を垂らしながら浮遊している。

「むぎ!俺がここでこいつを足止めする!
お前はこのフロアの部屋を探してくれ!」

「分かった!」

僕は走った。一番奥の部屋に駆け込む。
薬の入った容器を探す。棚の中や机の上を漁る。

「ない…ここは!ない!」

もしかして初めからないんじゃないか、という暗い考えがよぎる。

「大丈夫…諦めちゃ駄目だ」

自分にそう言い聞かせる。

僕はその隣の部屋に向かった。
そこも同じように探す。

「これは…あった!!」

薬液Yと確かに記されている。
キリトのいる所へ僕は慌てて戻った。
早く下の階で薬を作るんだ。

「ギュルル」

バーサーカーはキリトに抑えつけられていた。
キリト、強過ぎない?

「むぎ、見つけたか?」

僕は頷いた。瓶を掲げて見せる。
キリトが容赦なくバーサーカーの意識を手刀で奪った。

「薬を作りに行こう」

バーサーカーを背負ってキリトは歩き出す。
一階に戻るとアカツキさん達が待っていてくれた。

「おいキリト、そいつは」

「リリ!」

キリトが背負っているバーサーカーを見て子供達が声を上げる。

「リリって?」

キリトが優しく尋ねると、子供達の内の一人が言う。

「リリは変な注射を打たれたんだ。そしたらこんな姿になっちゃって。それは俺の妹なんだ!だから殺さないで!」

「大丈夫。殺したりなんかしないよ」

やっぱり仮説は正しかったらしい。
バーサーカーになっていたのは子供達だった。
でもまだ疑問点が残る。
他の攫われた子供達はどこに行ったのか。
そして、ビャクヤを連れ去った黒い影。
あいつは何者なんだろう。

「とにかく薬を作ろう」

「そうだな」

僕達は先程の部屋に戻って、薬を作った。
ライトの明かりを頼りに手順を踏む。
薬は飲むタイプらしい。

「出来た…」

僕は薬を一回分量った。それをバーサーカーになったリリに飲ませる。

「ギュルル」

バーサーカーだった部分が溶けて消えていく。
リリが元の姿に戻った。

「おにい…ちゃん」

「リリ!!」

リリはそのまま意識を失ってしまった。

「早く医者に見せないと」

「アカツキ、子供達を連れて先に行ってくれ」

「どういうことだ?キリト?」

「俺達は他の子供を探す」

アカツキさんは迷っているようだった。

「分かった。絶対無事に戻れよ!」

「大丈夫だ」

アカツキさんが子供三人を背負って走り出す。

「むぎ、付き合わせてゴメンな?」

僕は首を横に振った。
キリトらしい選択だ。

「でも僕達は大体の所を見て回ったよね?」

「地下室か隠し部屋があるんじゃないかって」

「なるほど」

探す価値はありそうだ。
キリトが何かに気付いたようだ。

「むぎ、風だ。風が吹いてくる」

「本当だ」

どこから吹いてくるんだろう。
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