「何でも欲しがる妹に、嫌いな婚約者を押し付けてやりましたわ。ざまぁみなさい」という姉の会話を耳にした婚約者と妹の選択

当麻月菜

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姉アンジェラの仕返し

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 リリーナに仕返しをすることを決めたアンジェラは、さっそく二人を引き合わせることにした。

 とはいえセルードは、あの容姿に加えて長男でありながら家督すら継げない男。さすがのリリーナだって、絶対に欲しがるとは言い切れない。

 だからアンジェラは、策を練った。

 まずリリーナに、セルードがとても素晴らしい男だと嘘を吹き込んだ。

 アンジェラを恋慕うがために、家督を継がないといけない身を捨て自分の元に婿に入ってくれるのだと。あんな容姿であるが実は、とても優男だと。ボソボソ喋るのはただ単にアンジェラのことを好きすぎて緊張してしまうだけなのだ、と。

 幸い政治や貴族の噂話に関心が無いリリーナは、鵜呑みにしてくれて顔を輝かせた。

 姉妹揃って夜会に出席すれば、セルードを悪く言う貴族令嬢達に対して自ら彼を庇う発言すらしてくれた。

 それからごく自然に自宅の茶会の席で、リリーナとセルードを引き合わせた。

 まんまとリリーナは、アンジェラの思惑通り「お姉さまの婚約者、素敵な方ね」とセルードを欲してくれた。
 
 後はとても簡単だった。いつも通りにすれば良いだけ。

 少し困った顔をして、でも可愛い妹に甘い姉の顔をして「リリーナがそこまで言うなら仕方がないわね」と言って、婚約者を譲った。

 無論、婿養子となるセルードをほいほい妹に譲ったとなれば、両親は黙っていない。

 でもその点も、アンジェラはちゃんと考えていた。

 実はアンジェラには恋人がいた。

 セルードとの婚約が正式に発表される直前のとある夜会の場で、偶然知り合った男だった。

 優しく穏やかで、甘い容姿に恋人を喜ばす術も心得ている。それに何より、一度もリリーナと比べるような発言をしない。

 そんな彼は、アンジェラより7つ年上の紳士で、名をリブロスという。

 リブロスは一応貴族だが、ネリム家より遥かに格下でおまけに長男。

 知り合ってすぐリブロスは、そのせいで君に求婚できなかったと悔しげに呟いてくれたのを、アンジェラは覚えている。付け加えるように、それでも好きなんだと言ってくれたことも。

 それほどまでに自分を求めてくれた。また、求婚できなかった理由を誠実に語ってくれたこと。この事実を知ってアンジェラは転がるように恋に落ちた。

 彼と一緒に未来を歩めるのなら、もうなにも要らないと思えるほど。

 だから......そう、だからアンジェラはリブロスと身体を重ねた。

 たとえセルードとの結婚が婿を取るものだとしても、妻となる女は夫に純潔を捧げなくてはならない。

 言い換えるなら純潔を失った時点で、アンジェラはセルードとは結婚できなくなったのだ。

 しかも今、アンジェラはリブロスの子供を宿している。既成事実と妊娠という現実を突きつければ、身分差はあれど両親はリブロスとの結婚を認めざるを得なかったのだ。
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