「何でも欲しがる妹に、嫌いな婚約者を押し付けてやりましたわ。ざまぁみなさい」という姉の会話を耳にした婚約者と妹の選択

当麻月菜

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セルードの企み

1

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『失礼。貴方が、あまりに愚かで可笑しくて』

 我ながら酷い言い様だと思った瞬間、目の前の少女はくしゃりと顔を歪めた。

 泣くか。いや、おそらく泣くだろう。

 セルードはじっとリリーナを見つめながら冷静に思う。

 ただ己の言葉は訂正しない。実際、リリーナは全て自分が悪いと思い込んでおり、桃色の唇から語られる全てが愚かだとしか思えなかったから。

 そう冷たく切り捨てるセルードであったが、泣いたら泣いたで慰めの言葉と共にハンカチくらいは手渡すつもりだった。

 しかし、リリーナは泣かなかった。

 ぐっと唇を噛んで、大きく息を吸って、丸い宝石みたいな瞳をぐっと開いて、目尻に浮かんだ涙が零れないように懸命に力を入れている。

 その姿はいじらしく、無条件に庇護欲をそそるもの。

 だがしかし、やはり愚かなものは愚かである。

 セルードはまた低い声で笑う。

 そこに悪意は無い。本気で泣かせてやりたいという男性特有の意地悪心も無い。無意識と言っても過言では無かった。

「ーー……私が愚かなのは言われなくてもわかってます」

 少し間を置いて、リリーナが震える声で言った。抗議に近い口調で。

「そうか。でも、貴方が自覚しているより、現実はもっと愚かだ」
「……っ」

 さすがにこれは言い過ぎたか。

 内心、焦ってはみたが気丈にもリリーナは泣くことは無かった。ただしおれた花のように項垂れる。

「そう……そうですよね、わかっています。……それと、ごめんなさい。セルード様にそのようなことを言わせてしまって」
「……は?」

 思わず首を傾げてしまったが、幸い俯くリリーナには見られずに済んだ。

 それにしてもと、セルードは顎に手を当て考える。
 
 この少女はどうしてこうも内気で自分を責めるような考え方しかできないのだろうかと。

 確かにこれまでの話で、彼女がトラウマを持っていて、姉に対して罪悪感も持っていることはわかった。

 だから姉を庇う気持ちはわからなくもない。だがしかし、現実を何も見ていないのはかなり問題がある。

 セルードからすれば、アンジェラは強欲で相当な食わせ物だ。加えてかなり我が強い。
 
 いずれは女当主となるから、多少は気が強くあるべきだが、全てに対して己の考えを通すのは短所でしかない。

「ーーあの……セルード様、お願いがあります」

 セルードがこれまでのアンジェラの言動を思い返していれば、横からリリーナの掠れ声が聞こえ、そこに目を向ける。

 こっそり涙をぬぐったのだろうか。リリーナの目はほんのり赤かった。
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