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旅路と再会の章
人は見かけによらない※トーマスの失言②
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ラバンと並んで庭を通り抜ける途中に番獣ガーゴイルのガーちゃんとルーちゃんに大きく手を振り、門の外に出る。
予定では、グロッソが迎えに来てくれてそのまま旅に出る流れとなっている。ついでに言うと、宿の手配も全部やってくれるとセンティッドから事前に聞いている。
その点は有難い。用事がなければ……いや、そもそも外出する用事を作らないファルファラは、胸を張って引きこもりと言える。
そんな自分が、宿の予約をするなんて苦痛だし、上手くできるか自信が無い。おそらく野宿になっていたことだろう。
(あとは、ラバンとグロッソさんが仲良くしてくれたら良いんだけど……)
並んで歩くラバンをチラッと見つめ、ファルファラは心から祈る。
ついさっきの爽やかな笑みと物騒な台詞のアンバランスさが、この後の道中の全てを表しているようで怖くて仕方がない。
といっても、魔物調査はさほど難しくない。それに調査を終えたら、帰りは個人門プライベートゲートを使って帰宅すれば良い。
どんな種類の門ゲートも、本来は使用する前に魔術師協会に申請が必要だけれど、ファルファラは<慧眼の魔術師>の特権で、いつでもどこでも無許可で使用が許されている。
つまり往路さえ恙なく過ごすことができれば良いだけだ。
ただその”恙なく”が、難題すぎて気が遠くなる。
「ーーまさかアレに乗って行くとでも。まるで荷物だ。舐め腐っているな」
ファルファラが足を止めずに、うーんうーんとこれからの道中について頭を悩ましていると、横から不機嫌な声が降ってきた。
景色など視界に入れてなかったファルファラは、ここで門前に1台の馬車が停まっているのに気付く。遅れてグロッソと従者らしき青年も。
ファルファラは小走りに二人に駆け寄った。
「おはようございます。グロッソさん。長旅になりますが、どうぞよ」
「お嬢、お待ちください」
何事も最初が肝心という気持ちで、ファルファラが精一杯にこやかに挨拶をしようとしたが、それをラバンが遮った。
「ラバン、どうしたの?」
「こんなのは、馬車とは言いません。お嬢、少し待っててください。お嬢に相応しい馬車をすぐに持ってきます」
「は?……んっ?……はぁ!?」
ファルファラが移動魔法が使えるため、この屋敷には馬車は無い。
どうしても必要な時はセンティッドが用意してくれる。というか強制的に押し付けられる。
そんなわけでラバンが知っている馬車というのは、王室御用達のピカピカの4頭立てのもの。言っておくが、そっちのほうが珍しく、今、ここにある無骨な馬車の方がメジャーである。
「ちょ、いいからっ。ラバン、私はこれで良いからっ」
ファルファラは悲鳴に近い声を上げながら、ラバンの腕を掴んで首を横に振る。
どっかから持ってくるという発言もものすごく気になるし、なによりグロッソの前でこんな偉そうな会話はしたくない。それなのに、
「いえ、従者殿の手をお借りする必要はありません。今すぐ私の方で新しい馬車を用意します」
グロッソは一歩ファルファラ達に近付くときっぱりと言った。
すぐさまファルファラは「結構です!」と拒絶すると共に首を横に振る。
これから山を越え、谷を越え、北方に向かうのだ。丈夫さが一番大事で、キンキラさなんて必要ない。それなのに……
「なら、早く持ってこい」
ラバンは、グロッソの言葉に同意した。ここは是非とも反発して欲しいというのに。
しかもずいぶんと上から目線の発言に、ファルファラは冷や汗をたらす。
(ねえ……お願いだから穏便に行こうよぅ)
そんなことを心の中で呟くと共に、まだ出発すらしていないのにファルファラは既に胃がキリキリと痛んだ。
予定では、グロッソが迎えに来てくれてそのまま旅に出る流れとなっている。ついでに言うと、宿の手配も全部やってくれるとセンティッドから事前に聞いている。
その点は有難い。用事がなければ……いや、そもそも外出する用事を作らないファルファラは、胸を張って引きこもりと言える。
そんな自分が、宿の予約をするなんて苦痛だし、上手くできるか自信が無い。おそらく野宿になっていたことだろう。
(あとは、ラバンとグロッソさんが仲良くしてくれたら良いんだけど……)
並んで歩くラバンをチラッと見つめ、ファルファラは心から祈る。
ついさっきの爽やかな笑みと物騒な台詞のアンバランスさが、この後の道中の全てを表しているようで怖くて仕方がない。
といっても、魔物調査はさほど難しくない。それに調査を終えたら、帰りは個人門プライベートゲートを使って帰宅すれば良い。
どんな種類の門ゲートも、本来は使用する前に魔術師協会に申請が必要だけれど、ファルファラは<慧眼の魔術師>の特権で、いつでもどこでも無許可で使用が許されている。
つまり往路さえ恙なく過ごすことができれば良いだけだ。
ただその”恙なく”が、難題すぎて気が遠くなる。
「ーーまさかアレに乗って行くとでも。まるで荷物だ。舐め腐っているな」
ファルファラが足を止めずに、うーんうーんとこれからの道中について頭を悩ましていると、横から不機嫌な声が降ってきた。
景色など視界に入れてなかったファルファラは、ここで門前に1台の馬車が停まっているのに気付く。遅れてグロッソと従者らしき青年も。
ファルファラは小走りに二人に駆け寄った。
「おはようございます。グロッソさん。長旅になりますが、どうぞよ」
「お嬢、お待ちください」
何事も最初が肝心という気持ちで、ファルファラが精一杯にこやかに挨拶をしようとしたが、それをラバンが遮った。
「ラバン、どうしたの?」
「こんなのは、馬車とは言いません。お嬢、少し待っててください。お嬢に相応しい馬車をすぐに持ってきます」
「は?……んっ?……はぁ!?」
ファルファラが移動魔法が使えるため、この屋敷には馬車は無い。
どうしても必要な時はセンティッドが用意してくれる。というか強制的に押し付けられる。
そんなわけでラバンが知っている馬車というのは、王室御用達のピカピカの4頭立てのもの。言っておくが、そっちのほうが珍しく、今、ここにある無骨な馬車の方がメジャーである。
「ちょ、いいからっ。ラバン、私はこれで良いからっ」
ファルファラは悲鳴に近い声を上げながら、ラバンの腕を掴んで首を横に振る。
どっかから持ってくるという発言もものすごく気になるし、なによりグロッソの前でこんな偉そうな会話はしたくない。それなのに、
「いえ、従者殿の手をお借りする必要はありません。今すぐ私の方で新しい馬車を用意します」
グロッソは一歩ファルファラ達に近付くときっぱりと言った。
すぐさまファルファラは「結構です!」と拒絶すると共に首を横に振る。
これから山を越え、谷を越え、北方に向かうのだ。丈夫さが一番大事で、キンキラさなんて必要ない。それなのに……
「なら、早く持ってこい」
ラバンは、グロッソの言葉に同意した。ここは是非とも反発して欲しいというのに。
しかもずいぶんと上から目線の発言に、ファルファラは冷や汗をたらす。
(ねえ……お願いだから穏便に行こうよぅ)
そんなことを心の中で呟くと共に、まだ出発すらしていないのにファルファラは既に胃がキリキリと痛んだ。
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