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4.女神の一本釣りと、とある軍人の涙
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「......なにそれ」
ミランダとレネーナの呟きに、フローチェは小馬鹿にしたように笑う。
「あら、ちっともご理解いただけないお顔をされておりますわね……。残念だわ。まぁ、定番ドレスを定型通り以下にしか着ることができない貴方達に、モードを語るのは無理がありましたわね。ごめんあそばせ」
暗に「あんた達、超ダサい」と言われたミランダとレネーナは、大いに自尊心を傷つけられたようだった。
顔を真っ赤にして、唇を震わせ、鬼の形相でフローチェを睨みつける。
しかし彼女たちが最も得意とする罵倒は、一切出てこない。
まぁ……それは仕方がない。だって、彼女たちを小馬鹿にした相手は、普段着だというのに桁違いに奇麗で垢ぬけているから。
そんな格上の同性に食ってかかろうもんなら「ダサい女の戯言」として一蹴されて終わるだろう。
お洒落に無頓着なノアからしたら、ダサいと言われたところで痛くも痒くもないが、一般女性にとっては、かなり屈辱的なものなのだ。
だから女のプライドを守ることを選んだミランダとレネーナは……尻尾を巻いて逃げ出すことしかできなかった。
「もう結構ですわ。失礼します!」
「こんなものを見せられて、大変不快ですわっ」
同時に言い捨てた二人の台詞は、まさに負け犬の遠吠えであった。
そして乱暴にソファから立ち上がると、出口扉に起立している未だ涙目のラルクを押しのけて、そのまま姿を消してしまった。
開け放たれた扉から「お客様、出口はこちらでございます」というメイドの慌てた声と、「うるさいわねっ。そんなこと知っているわよ!」という義理の姉二人のコントのような会話が聞こえてくる。
それを遮るようにラルクはそっと扉を閉めた。
ついでにぐすっと鼻をすすりながら、目尻に溜まった涙を手の甲で乱暴にぬぐったけれど、ここにいる全員が見て見ぬふりをした。
─── それから数分後。
サロンに戻ってきたメイドが、無事(?)ミランダとレネーナが屋敷の敷地外に出たことをフローチェに報告した。
そうすればフローチェは、鏡に向かって声を掛ける。
「終わったわよー。ベルちゃん、こちらにおいでなさい」
鏡越しに呼び出しを受けたベルは、慌てて隣のサロンに移動する。
そうすれば一仕事終えた表情を浮かべるフローチェに出迎えられ……ると思いきや、此度の結果に大爆笑しながらラルクの背中をバンバン叩く彼女がいた。
「あははっははっはは。あーもー可笑しかったっ。ラルク、あなた最高だったわ! ねぇ、このまま軍人辞めて私の専属モデルにならない?給金は弾むわよ」
「……謹んでお断りします」
言葉遣いこそ丁寧であるが、ラルクは本気で怒っている。
きっとこれが上官の従妹ではなく、女神でもなく、美人でもなく、女性でもなかったら、それこそ張り倒しそうな勢いで。
「えっと……あの……ラルクさん、今日はありがとうございました」
淑女として如何なものかと思う爆笑をかましているフローチェのことは一旦放置して、ベルは身を挺してミランダとレネーナを追い払ってくれた勇者に頭を下げた。
しかしラルクはベルに目を向けることなく「ああ、着替えしてぇ」と呟くだけ。
確かにその通りだと思ったベルは、小さく「そうですね」と言ってラルクの言葉に同意した。
ミランダとレネーナの呟きに、フローチェは小馬鹿にしたように笑う。
「あら、ちっともご理解いただけないお顔をされておりますわね……。残念だわ。まぁ、定番ドレスを定型通り以下にしか着ることができない貴方達に、モードを語るのは無理がありましたわね。ごめんあそばせ」
暗に「あんた達、超ダサい」と言われたミランダとレネーナは、大いに自尊心を傷つけられたようだった。
顔を真っ赤にして、唇を震わせ、鬼の形相でフローチェを睨みつける。
しかし彼女たちが最も得意とする罵倒は、一切出てこない。
まぁ……それは仕方がない。だって、彼女たちを小馬鹿にした相手は、普段着だというのに桁違いに奇麗で垢ぬけているから。
そんな格上の同性に食ってかかろうもんなら「ダサい女の戯言」として一蹴されて終わるだろう。
お洒落に無頓着なノアからしたら、ダサいと言われたところで痛くも痒くもないが、一般女性にとっては、かなり屈辱的なものなのだ。
だから女のプライドを守ることを選んだミランダとレネーナは……尻尾を巻いて逃げ出すことしかできなかった。
「もう結構ですわ。失礼します!」
「こんなものを見せられて、大変不快ですわっ」
同時に言い捨てた二人の台詞は、まさに負け犬の遠吠えであった。
そして乱暴にソファから立ち上がると、出口扉に起立している未だ涙目のラルクを押しのけて、そのまま姿を消してしまった。
開け放たれた扉から「お客様、出口はこちらでございます」というメイドの慌てた声と、「うるさいわねっ。そんなこと知っているわよ!」という義理の姉二人のコントのような会話が聞こえてくる。
それを遮るようにラルクはそっと扉を閉めた。
ついでにぐすっと鼻をすすりながら、目尻に溜まった涙を手の甲で乱暴にぬぐったけれど、ここにいる全員が見て見ぬふりをした。
─── それから数分後。
サロンに戻ってきたメイドが、無事(?)ミランダとレネーナが屋敷の敷地外に出たことをフローチェに報告した。
そうすればフローチェは、鏡に向かって声を掛ける。
「終わったわよー。ベルちゃん、こちらにおいでなさい」
鏡越しに呼び出しを受けたベルは、慌てて隣のサロンに移動する。
そうすれば一仕事終えた表情を浮かべるフローチェに出迎えられ……ると思いきや、此度の結果に大爆笑しながらラルクの背中をバンバン叩く彼女がいた。
「あははっははっはは。あーもー可笑しかったっ。ラルク、あなた最高だったわ! ねぇ、このまま軍人辞めて私の専属モデルにならない?給金は弾むわよ」
「……謹んでお断りします」
言葉遣いこそ丁寧であるが、ラルクは本気で怒っている。
きっとこれが上官の従妹ではなく、女神でもなく、美人でもなく、女性でもなかったら、それこそ張り倒しそうな勢いで。
「えっと……あの……ラルクさん、今日はありがとうございました」
淑女として如何なものかと思う爆笑をかましているフローチェのことは一旦放置して、ベルは身を挺してミランダとレネーナを追い払ってくれた勇者に頭を下げた。
しかしラルクはベルに目を向けることなく「ああ、着替えしてぇ」と呟くだけ。
確かにその通りだと思ったベルは、小さく「そうですね」と言ってラルクの言葉に同意した。
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