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お仕事のはずなのに、そんな顔であんなことをするのは少し狡いと思う
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『やあ、久しぶりだねノア嬢。ご機嫌いかがかな』
『……』
にこやかに笑う次期国王陛下に向けて、ノアはとてもとても丁寧に無視をした。
ここは、お城のどっかの豪華なサロンの一室。そこでテーブルを挟んで向き合うこの赤髪の男が、出会って数分で自分のことを醜女と呼んだのをノアは忘れていない。
そんな失礼千万な男は次期国王陛下となるお偉い人なのかもしれないが、その前に人として色々問題がある。
望まぬ再会をしてあげたというのに醜女と呼んだことに対して詫びるわけでも、言い訳するわけでもなく、ましてや「だってそう見えたんだもん」と開き直ることもしないということは、この男は既にあの一件を忘れているのだろう。
そんな記憶力が残念なヤツは、もはや人ではない。ニワトリだ。
(あ、ニワトリの鶏冠は赤い)
そんな奇跡的な共通点を見つけて、ノアはこの瞬間からローガンのことをニワトリ男と呼ぶことに決めた。
ただ正直美味しい卵を生んでくれるガチのニワトリの方がよっぽど尊い存在であるので、ちょっと申し訳ない気がする。でも他に代名詞が無いので、どうか許してほしい。
などということをノアがぼぉーっと考えていれば、現在進行形で無視をされているローガン改めニワトリ男の頬が引きつった。
『ノア嬢、私は君に質問をしているんだが?』
あいにくノアは人間なので、ニワトリ語は理解できない。
なのでこれもまた無視をして、部屋の隅にいるフレシアに眼を向ける。
首を動かした際に、ローガンの隣に着席しているクリスティーナが憎々しげにこちらを睨んでいるのが見えたけれど、既にノアはベニテングダケは食したことがあるので、もはや彼女には興味はない。
そしてすぐに、壁と同化しているフレシアとばちっと音が鳴るほど目が合った。けれど、彼女は相も変わらず無表情だった。
それを見たノアは突き放されたと落ち込むどころか、どんな場所でもマイスタイルを貫くフレシアがカッコイイと思ってしまう。
『おいっ、聞いているのか!?小娘っ。くそっ人が下手に出たというのに───』
『まぁ殿下、そうムキになってはいけませんわ。あの娘は、殿下を前にしてきっと緊張されてるのです。それに無言でいたって私達の声は聞こえているのですから、問題は無いのでは?』
『そうか。……よし、クリスティーナがそう言うのなら、聞こえていることにしよう』
『ええ、それでよろしいですわ』
ノアがフレシアに見とれていれば、クリスティーナとローガンは夫婦漫才にすらならない馬鹿馬鹿しい会話を勝手におっぱじめる。
本題に入る前に、もうこの時点で嫌な予感しかしない。
というか、この二人がタッグを組んで自分を呼びつけた時に、ある程度は覚悟していた。だが、うんざりする顔を隠すことはどうしたって無理だ。
でも、表情一つ変えることで、より悪い方に向かう気がしてならない。
(よし、私もフレシアさんを見習おう)
ついつい感情が顔に出てしまうノアは、むむっと表情筋を引き締める。
グレイアス先生なら空気を呼んで、ここで自分の声帯を麻痺させるどころか表情を麻痺する魔法を強めにかけてくれるはずだか、それをフレシアに求めるのはちょっと鬼畜だろう。
いや、問答無用でフレシアからそんな魔法をかけられたら、ノアが彼女のことを鬼畜と思ってしまうから、どうかやめて欲しいと思っていたりする。
『……』
にこやかに笑う次期国王陛下に向けて、ノアはとてもとても丁寧に無視をした。
ここは、お城のどっかの豪華なサロンの一室。そこでテーブルを挟んで向き合うこの赤髪の男が、出会って数分で自分のことを醜女と呼んだのをノアは忘れていない。
そんな失礼千万な男は次期国王陛下となるお偉い人なのかもしれないが、その前に人として色々問題がある。
望まぬ再会をしてあげたというのに醜女と呼んだことに対して詫びるわけでも、言い訳するわけでもなく、ましてや「だってそう見えたんだもん」と開き直ることもしないということは、この男は既にあの一件を忘れているのだろう。
そんな記憶力が残念なヤツは、もはや人ではない。ニワトリだ。
(あ、ニワトリの鶏冠は赤い)
そんな奇跡的な共通点を見つけて、ノアはこの瞬間からローガンのことをニワトリ男と呼ぶことに決めた。
ただ正直美味しい卵を生んでくれるガチのニワトリの方がよっぽど尊い存在であるので、ちょっと申し訳ない気がする。でも他に代名詞が無いので、どうか許してほしい。
などということをノアがぼぉーっと考えていれば、現在進行形で無視をされているローガン改めニワトリ男の頬が引きつった。
『ノア嬢、私は君に質問をしているんだが?』
あいにくノアは人間なので、ニワトリ語は理解できない。
なのでこれもまた無視をして、部屋の隅にいるフレシアに眼を向ける。
首を動かした際に、ローガンの隣に着席しているクリスティーナが憎々しげにこちらを睨んでいるのが見えたけれど、既にノアはベニテングダケは食したことがあるので、もはや彼女には興味はない。
そしてすぐに、壁と同化しているフレシアとばちっと音が鳴るほど目が合った。けれど、彼女は相も変わらず無表情だった。
それを見たノアは突き放されたと落ち込むどころか、どんな場所でもマイスタイルを貫くフレシアがカッコイイと思ってしまう。
『おいっ、聞いているのか!?小娘っ。くそっ人が下手に出たというのに───』
『まぁ殿下、そうムキになってはいけませんわ。あの娘は、殿下を前にしてきっと緊張されてるのです。それに無言でいたって私達の声は聞こえているのですから、問題は無いのでは?』
『そうか。……よし、クリスティーナがそう言うのなら、聞こえていることにしよう』
『ええ、それでよろしいですわ』
ノアがフレシアに見とれていれば、クリスティーナとローガンは夫婦漫才にすらならない馬鹿馬鹿しい会話を勝手におっぱじめる。
本題に入る前に、もうこの時点で嫌な予感しかしない。
というか、この二人がタッグを組んで自分を呼びつけた時に、ある程度は覚悟していた。だが、うんざりする顔を隠すことはどうしたって無理だ。
でも、表情一つ変えることで、より悪い方に向かう気がしてならない。
(よし、私もフレシアさんを見習おう)
ついつい感情が顔に出てしまうノアは、むむっと表情筋を引き締める。
グレイアス先生なら空気を呼んで、ここで自分の声帯を麻痺させるどころか表情を麻痺する魔法を強めにかけてくれるはずだか、それをフレシアに求めるのはちょっと鬼畜だろう。
いや、問答無用でフレシアからそんな魔法をかけられたら、ノアが彼女のことを鬼畜と思ってしまうから、どうかやめて欲しいと思っていたりする。
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