銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 店主が愛想良く笑って次の言葉を待っている。
 僕に気持ちを打ち明けてからリアムが甘い。それに遠慮なく触れてくる。
 リアムに触れられるのは嫌じゃない。むしろ気持ちが温かくなって嬉しい。だけど時と場所を考えて欲しい。
 僕が困って見上げると、リアムが僕の額にキスをして話し出した。

「防寒具を探している。首と手を暖める物はあるか」
「ございますよ。こちらです」

 僕が額に手を当てて焦っているのに、リアムは澄ました顔のままだ。
 店主も気を使ってくれているのか、まるで気にしてない様子だ。
 僕は嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちと、そしてなぜかモヤっとする気持ちになった。
 リアムがストールと手袋を選んでいる間も、僕はモヤっとする原因を考えていた。

「これなんかどうかな?」
「……え?」
「どうした?傷が痛むのか?まだ馬に乗るのは早かったか…」
「傷は大丈夫だよ。医師からもらった薬を飲んでるし」
「そうか?辛かったら言えよ。思ったことは言う約束だろ?」
「うん…あ、僕それがいい」
「この茶色のか?俺はフィーには白がいいと思うのだが」
「白は汚れが目立つし…それに僕なんかに白は似合わない…」
「フィー、そんな言い方をするな。それにおまえは何色であっても似合う。綺麗だからな。店主もそう思わないか?」

 いきなり話を振られた店主が、慌てて頷く。

「はい、思います!私としましては、そちらの可愛らしい方は白、騎士様が茶色がよろしいかと」
「そうしよう。ではこれらの手袋とストールをもらおうか」
「かしこまりました。ありがとうございます!」

 店主がにこやかに出した掌に、リアムが数枚の銀貨を乗せる。商品の代金よりも多かったのか、店主が銀貨一枚を返そうとするのをリアムが止めた。

「いい、取っておいてくれ」
「ありがとうございます!」

 店主が笑顔で頭を下げる横で、リアムが僕の首に白のストールを巻き手袋をはめてくれた。

「暖かい。ねぇリアム、それ貸して」
「ん」

 僕はリアムから茶色のストールと手袋を受け取ると、背伸びをしながらリアムの首にストールを巻き、手袋をつけてあげる。

「リアムの方がどんな色でも似合うね!かっこいいよ」
「惚れたか?」
「うん、惚れそう」

 僕が笑って答えると、リアムの動きが止まり、すぐ僕の頭を引き寄せて頬にキスをした。
 一瞬、唇にされるのかドキリとした。ドキリとしたのと同時に、胸に針で刺されたような痛みも感じた。
 僕は驚いて咄嗟に胸を押さえる。

「どうした?」
「…ううん、リアムってキスが好きなの?それに慣れてる…」
「慣れてはいない。こんなにしたいと思うのはフィーだからだ」
「そうなの?」
「当然だ」
「でも…人前は恥ずかしいから止めてほしい」
「無理だな。可愛いフィーが悪い」
「なにそれ…」

 先程のモヤッとした原因がわかった。リアムがキスに慣れてると思ったから。でもそれは晴れた。今は胸の痛みが気になるけど、楽しそうなリアムの笑顔を見ているとどうでもよくなる。
 きっと気のせいだろうと僕も微笑み返して、店主に礼を言って店を出た。
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