銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 イヴァル帝国の王城もそうだけど、バイロン国の王城内には、王族が使う大きな浴室がある。リアムが王城で暮らしていた時には使っていたらしい。そして王族の各部屋にも小さな浴室が併設されている。
 その浴室で髪と身体を洗い、浴室に準備されていた香油を髪と身体に塗った。ほのかに甘い香りがする。僕の好きな匂いだ。塗りこんだ肌はなめらかで、髪も指通りがいい。
 これはどこの香油だろう。王都の店にある物なら買って帰りたい。王族専用の物なら、クルト王子に頼んで譲ってもらえないかな。
 いい香りに気持ちよくなり軽い足取りで扉を開けて、目の前の光景に僕の笑顔が一瞬で凍りついた。

「な…に…?離れてっ!」
「きゃっ」

 咄嗟に魔法を使ってしまった。
 右手から出した白い光が女の人に当たり、ソファーから落ちた。
 
「リアム!」
「…ん…フィー…」

 ソファーに走り寄り、倒れているリアムの顔を覗き込む。

「リアムっ、大丈夫?」
「ぐ…いきなり…薬を嗅がされた…」
「…え?」

 僕は顔を上げて匂いを嗅ぐ。香油の匂いに気を取られて気づかなかったけど、頭の痛くなるような変な匂いが残っている。
 僕は女の人を見下ろした。

「あなた、出迎えに来た人だよね。ここで何してたの?リアムに何するつもりだったのっ」

 怒りで声が震える。
 本当は何をしようとしてたのか聞きたくない。だって、僕が風呂場から出てきた時、女の人は自身のシャツのボタンを外しながら、リアムの足の上に座っていたのだ。僕とリアムが伴侶だと知ってるはずなのに。僕のリアムに手を出そうとするなんて!
 僕は持っていた布を女の人にかける。

「早くボタンしめて。ねぇ、どうしてこんなことしたのか教えて」
「あ…あのっ」
「なに、聞こえない」
「私は…命じられて…」
「誰に?」

 女の人が、黙ってうつむいた。
 ああ、イライラする。このままだと、僕はこの人を殴ってしまうかもしれない。
 なんとか怒りを収めようと手を固く握りしめていると、後ろからリアムに抱きしめられた。

「フィー、もう大丈夫だ…動ける。すまない…嫌な思いをさせてしまって。だが何もされてはいない。すぐにおまえが来てくれたから。ほら…もうそんなに震えなくていい。愛してるよ…俺のフィー」
「リアム…」

 僕は身体の向きを変えて、リアムにしがみついた。
 大丈夫。リアムの匂いしかしない。女の人に触られてはいないみたいだ。よかった…。
 ホッとしたら涙が出てきた。グズグズと泣く僕の髪の毛を撫でながら、リアムが優しく囁く。

「ゼノを呼んだ。ここが嫌なら部屋を変えてもらおうな。それにおまえ…髪が乾いてないぞ。風邪をひいてしまう」
「だって…それどころじゃ…」
「そうだな」

 リアムが僕の頬にキスをして、魔法で髪を乾かした。


 
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