銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「聞く…」
「だそうだ。俺はもちろん聞きたい。それで誰が命じた?」

 クルト王子は僕とリアムの背後に目をやり、騎士に「出てろ」と言った。

「しかし」
「大丈夫だから出てろ。外で待機だ」
「かしこまりました」

 後ろを向くと、僕達を案内してきた騎士が、しぶしぶ外へ出ていくところだった。クルト王子が心配なのだろうけど、僕とリアムは元より何もしない。
 扉が閉まり、僕は顔を前に戻した。
 リアムが、少し前のめりになる。

「それで?あの女は誰に命じられてやったんだ?」

 クルト王子がちらりと僕を見た。
 ああそうか。誰が命じたのかわかった気がする。僕は、膝の上のリアムの手の上に手を重ねて、強く握りしめた。

「フィー?」
「クルト王子…あの人は、王に…リアムの父上に命じられていたんでしょ?」
「えっ…」
「そうだ。正確には父上の側近だが」
「そう…。王は、僕とリアムのこと、認めてないんだね」
「そういうことになるな」

 とても王に挨拶なんてできる状況ではないままリアムは城を出てしまったし、たとえ正式に会って結婚したいと申し出て断られても、僕とリアムは結婚しただろうから、今さら認められてないとわかったところで何とも思わない。
 そのはずだけど、僕の気持ちが重たくて苦しいのはどうしてだろう。
 でも、強く握り返してくれるリアムの手が、僕の苦しい気持ちを軽くしてくれる。

「はあ?フィーを苦しめる者は、父上でも許さない!抗議してくるっ」

 今にも立ち上がり出て行こうとするリアムの腰に、僕は抱きついて止める。
 クルト王子は、お茶を飲みながら冷静に「やめておけ」と制した。

「父上はずっと寝込んでおられる。おまえが王城に来るとこを知って、少しはしゃがれたのだろう」
「意味がわからない」

 リアムが腰を下ろして僕の肩を抱き寄せる。

「おまえとフィルの絆を確かめたかったのだろう。失敗に終わって満足してるはずだ」
「俺の父親ながら、全く何を考えてるのかわからない。冗談だったと言われても、フィーは傷ついたんだ。俺は絶対に許さない」
「だが、父上の側近から聞いたのは、リアムに若い女の使用人をつけて、甲斐甲斐しく世話をさせてみろという話だった。昨日のことは、あの女が本来の命を無視してやり過ぎたのだ」
「え…」

 僕の胸が一気に苦しくなる。
 命じられてやったことなら仕方がないと思えるけど、あの女の人の意思でやったことなら、すごく嫌だ。一体どういう意図でやったのか。
 僕は不安になって、リアムの胸に頬を寄せてしがみついた。
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