銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「ご存知でしょうが、俺はフィル様が何よりも大切です。あなたに愛する人がいることを承知で言わせてください。俺は、あなたを愛しています」
「…うん、知ってる」

 フィル様は目をそらさない。まっすぐに俺の目を見つめ返して頷いた。
 照れて誤魔化ごまかそうとしないで、素直に気持ちを受け取ってくれるところも愛しく思う。というか、この方の全てが愛おしくてたまらない。心底愛している。
 ああ、また鼓動が速くなってきた。愛しい人に触れているのだから仕方がない。好きで好きでたまらないのだから、どうしようもない。
「俺は」と出した声が震えている。フィル様の前では常に冷静で完璧でいたいのに情けない。しかし、愛してるとはこういうことなのだ。愛する人の前で、平常心でいられるものか。

「俺は、本心を言えば、ずっと傍にいて守りたかった。俺の想いがかなわなくてもいいのです。ただ傍にいたかった。ですが、あなたに愛する人ができてしまった。そのことに関して、悔しい気持ちが無いとは言いきれませんが、良かったと思っています。今のあなたの幸せな姿を見て、本当に良かったと思っています」
「うん…ありがとう」

 フィル様がニコリと笑う。俺の中に、また愛しさが積もった。

「あなたがバイロン国に行かれ、離れてしまってからは、とても寂しく辛く思いました。それに比例するように、ますます愛しさがつのりました。それはもう、狂いそうなほどに。今回、思いもかけずあなたに会えて、限界を超えてしまいました。なので俺の想いを吐き出させてください。フィル様、愛しています。心から愛しています」

 吐き出された声は震え、フィル様の手を包む両手も震えている。いや、全身が震えているではないか。たとえ死が目前に迫っても震えはしなかったのに。俺にとって、真実この方が全てなのだ。
 うつむき震える自身の手を見つめていると、フィル様が手をほどいた。そして俺を抱きしめてささやいた。

「ラズール…ありがとう。ラズールの気持ち、すごく嬉しい。そんなにも想ってくれて、すごくすごく嬉しい。ラズールが僕を最優先に想ってくれてるの、わかってたよ。ラズールの気持ちには応えられないけど、尊重したいと思ってたんだよ」
「フィル様…」

 そうか。だからなのか。他の者達が、俺に恋人を作れだの結婚相手にこの人はどうかとすすめてくる中で、フィル様は何も言わなかった。俺に良い人がいるのかと聞いてくることもなかった。俺の気持ちを知って、尊重してくれていたからだ。
 ああやはり、俺にはこの方だけだ。生涯、気持ちは変わらない。代わりの者など、いようはずがない。
 俺は今だけと願って、柔らかく良い香りのする身体を強く抱きしめた。
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