銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 部屋に食事を運んでもらい、宿の別棟べつむねに風呂があると聞いて、食事の後に汗を流しに向かう。中級の宿にしては大きめの風呂で、誰も使用していなかったために時間をかけて汗を流すことができた。そして人に合わぬよう急いで部屋に戻る途中、思いもかけぬ人に声をかけられて驚く。
 その人は非常に人懐ひとなつこい笑顔で近づいてきた。

「あれ?ラズール殿では?」
「……ゼノ殿、どうしてここに?」
「ははっ!それは俺のセリフだ。もしかしてフィル様に会いに来たのか?それともラシェット様に?」

 軍服ではない上着を着ていて、すぐには誰かわからなかった。俺もシャツにズボンと楽な格好だったのだが、ゼノはすぐに気づいたらしい。

「いや、用があってデネス大国に行く途中だ。用が終わった後にラシェット殿に会いに行く。あなたは?」
「そうか。俺はリアム様の家に行った帰りだ。ラシェット様にラズール殿が来ることを伝えてもいいか?」
「もちろん。いつとははっきり言えないが。ところで、フィル様の様子はどうだったか聞いてもよいか」

 ゼノの顔が曇る。その顔を見て、何となく次に出る言葉が予想できた。

「フィル様は体調がよくなさそうだった。本人は元気だと仰るのだが、リアム様によると、数日前から微熱が続いているらしい。イヴァルに帰ってたらしいじゃないか」
「そうだ。イヴァルに滞在してる間も発熱していた。そうか…熱は下がったと思ったが、また熱を出されたのか」

 これは本当に早くデネスに行き、鉱石を手に入れなければいけない。明朝、明るくなる前に出発しようと心に決める。

「ゼノ殿、俺は明日かなり早くに出立する予定だ。なのでこれで失礼する。後日ラシェット殿の城で話すとしよう」
「そうだな。気をつけて行かれよ」
「ゼノ殿も」

 ゼノが笑って俺が来た方へと消える。入れ違いで風呂場に行くところだったらしい。
 俺は部屋に戻ると鍵をかけ、早々にベッドに横になり目を閉じた。

 
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