銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「さて、では始めるか。早く見つけてバイロンに帰ろう」

 そう言いながら、ジルが手のひらの光を大きくさせる。
 ゼノが背負っていた荷物を降ろし、ジルの荷物の隣に置きながらジルの方へと顔を向けた。

「祖母の容態はどうなんだ。傍にいなくていいのか?」
「いい。軽い風邪だった。もう回復に向かっている」
「そうか、よかった」

 俺は手のひらの光を消して、ゼノに続いて荷物を置いた。そしてジルを挟むように並んで立つと「どうするのだ?」と隣を見た。

「俺は、物質を反応させる魔法を使えるんだ。例えば料理に毒物が入っていた場合、その毒物が光って見える。だから俺が仕えてからは、ラシェット様は毒物を口にされたことは一度もない」
「なるほど…すごいな」
「まあな。そして鉱石を探すのは初めてなんだが、ラズール殿が探してる鉱石の中の物質にも反応させることができると思う」

「はあ?」とゼノが声を上げた。

「確信はないのかよ」
「ないな」
「おまえ…よく自信ありげに話したな」
「あらゆる物の中にある、求める物質を見つける自信はある」
「…まあ、おまえがそう言うなら信じるけど」
「見つかるよう祈っててくれ」

 なんだそれ…と笑ってゼノが口を閉じた。
 よくわからぬ鉱石を手当り次第探すよりは効率的だと思う。
 ジルが手のひらを前方に突き出した。広範囲が白い光に包まれる。白い光の中に変化はない。

「ふむ…この辺りにはないようだな。奥へ進むか」
「わかった」

 ゼノがうなずき荷物を背負う。
 ジルと俺も順番に荷物を持つと、更に奥へと進んだ。


「ここにもない…」
「ジル、本当にその魔法で見つけられるのか?」
「できる…はず」
「おいっ」

 ずいぶんと奥まで来た。だがいまだ鉱石に反応がない。やはり見つけることは難しいのかと諦めかけたその時、「あった!」と甲高かんだかい声がした。
 一度白い光を当てた場所に、ジルがもう一度光を当てている。だが何も変わったところはない。

「どこだ?」

 俺はジルよりも前に出て、白く光る岩盤を凝視する。

「ほらそこっ!もう少し右上だ」

 ジルに言われた箇所を探した。そして小さく声を上げる。
 あった…針の先ほどの小さな赤い点が見える。
 俺は指先で赤い点に触れた。

「これか…」
「しかしジル、そこは石壁だぞ」

 ゼノがジルの隣に並んで「本当にそこにあるのか」と聞いている。
 ジルがゼノの問いを無視して、俺に声をかけた。

「ラズール殿、攻撃の魔法が得意だと話していたな。悪いがその石壁を壊してくれ。石壁の奥に鉱石があるはずだ」

 

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