銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 連れて行かれた場所は、俺が寝ていた部屋と似たような作りの部屋だった。示された椅子に座りながら「ここは?」と聞く。

「俺が使ってる部屋。ところで、もう起きて大丈夫なのか?無理をしてはダメだ。足の怪我はかなり深かったぞ」
「大丈夫だ。世話をかけたな。あの程度で気を失うとは情けない」
「あれは相当な痛みだっただろう。誰であっても気を失う。手はどうだ?」

 俺は右手を見て開いたり閉じたりしてみる。

「…大丈夫そうだが。包帯を取ってはダメか?」
「ダメだ。薬が効いて痛くないだけで、まだただれている」
「そうか」

 よく見ると、包帯に薄く血がにじんでいる。太ももよりもこちらの方が重症のようだ。
「ところで」と向かいに座ったゼノに聞く。

「なんだ?」
「鉱石はどうなった?俺は早く鉱石から薬を作りたいのだが」
「まあ焦るな。ジルがデネス大国に残って、精製せいせいしてもらっている。二、三日中には薬を持って戻ってくるはずだ」
「…ジル殿に頼りっきりで申しわけない」
「いいんじゃないか?俺もジルも、リアム様の周りにいる者は皆、フィル様のことを大切に思っているんだから」
「ありがたい…」

 第二王子は気に入らないが、バイロン国でフィル様に関わる人達が優しくてありがたい。イヴァルにいた頃よりも居心地が良さげで良かった。

「ラズール殿は、フィル様に薬を渡した後は、イヴァルに戻るのか?」
「いや…そのことに関して、ゼノ殿に相談がある。聞いてもらえるだろうか」
「もちろん。優秀なラズール殿の役に立てるかどうか、わからないが…」
「むしろ、ゼノ殿にしか頼めない」
「え?なんだ?なんか緊張するな」

 ゼノが後ろにけぞる。そんな構えないでもらいたい。フィル様や第二王子には内緒にしたい。そうなるとゼノ殿にしか頼めないのだ。
 俺が「大したことではないよ」と笑うと、ゼノも「そうか」と笑った。


 翌日、デネス大国からジルが戻ってきた。思っていたよりも早くて安心した。
 ジルは出迎えた俺を見るなり、笑顔で近寄り肩を叩いた。
 俺は渋い顔をする。力いっぱい叩かれて痛い。元気になったとはいえ、全快したわけではないのだ。もう少し丁寧に接してほしい。

「ラズール殿!どうだ体調は?」
「もう大丈夫だ」
「そうか!悪かったな。俺が破壊した石壁の破片が突き刺さったのだ。治らなかったらどうしようかと焦ったよ」
「いや、俺の不注意でもある。ゼノ殿と共に治癒をしてくれたらしいな。感謝する」
「俺とゼノは応急処置だけだ。祖父母の元に来てくれる医師が優秀だと聞いて頼み込んだ。本当にいい腕をしていて助かった」
「祖父母殿にも感謝を」
「伝えておくが、気にしなくていい。それよりも薬が気になるのだろう?無事に出来上がった。ほら、これだ」

 ジルが首にぶら下げた革の袋の中から、小さな袋を取り出した。

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