銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 フィル様の視線の先へと目を向ける。
 馬に乗った第二王子が、フィル様に手を振っている姿が見える。第二王子の隣にもう一人、金髪の男がいる。

「あれは…」

 その男を見て、俺は不安になる。
 この国の第一王子であり半年前に新王となったクルト王ではないか。なぜここに?ただの休暇か?まさかフィル様がいると知って?今さら何もしてこないとは思うが、俺はあの男も嫌いだ。
 フィル様も苦手だろうに大丈夫なのかと隣を見ると、なんとクルト王にまで、にこやかに手を振っているではないか。ああ、そうだった。俺はいつまでもやられたことを根に持ち恨んでしまう情けないヤツだが、フィル様はすぐに許してしまわれる優しい方だった。今はもう、クルト王のことは義兄と慕っているのかもしれない。しかしさすがに今までの仕打ちを思い返して、まさかな…とフィル様に問う。

「フィル様、クルト王との仲はどうですか?」

「え?」と振り向く顔がかわいらしい。思わず手を伸ばして白い頬に触れる。途端に遠くから鋭い視線を感じて横目で見ると、第二王子が恐ろしい目で睨んできた。
 俺は気にもとめずに頬をするりと撫でる。
 フィル様がくすぐったそうにして、目を細めた。

「クルト王とはいい関係だよ?よく贈り物してくれるし困ったことがあれば助けてくれるんだ」
「…なるほど。第二王子もお許しに?」
「うん。ほら見て。二人を見てわかると思うけど、今は仲のいい兄弟だよ」
「そうですか…」

 フィル様の言葉に頷き、二人に視線を向ける。護衛を引き連れて並んで門を潜る二人の表情を見る限り、あまり仲良さげには見えないのだが。しかしフィル様は二人を見て満足そうに笑っている。
 俺はフィル様の肩を押して塀から離れる。

「フィル様、第二王子を迎えに下へ降りましょう」
「うん、そうだね」

 頷くなり走り出そうとするフィル様の手を、すぐさま掴む。

「走っては危ないですよ。早く第二王子に会いたい気持ちはわかりますが、ゆっくりと降りましょう」
「大丈夫だけど…わかったよ」

 しぶしぶ頷くフィル様の背中に手を添えると、階段に向かって歩き出す。走りはしないが、どうしても足早になってしまうフィル様に苦笑しながら、ブーツの音を響かせて階段を降りた。
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