116 / 168
第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編
第38話
しおりを挟む
癒やしの木の下で、みんなの寝息が聞こえて来た頃にわたしは動き出す。
「…さてと」
みんなを起こさないようにそっと立ち上がると、ラーロさんに魔法を習いに魔法協会へと向かった。
その後はお父様と荷馬車で森に出かけて、チシャの葉とひよこ豆を育てて、魔法協会に納品。
ラーロさんの家にいるマリーに最近料理を習い始めた。
まぁ、腕前は……普通のチシャの葉サンドに、形の悪い卵焼きが作れるようにはなった…
(まぁ、味の保証は……まだ、ないんだけどね)
帰りは魔法訓練をしながら、のろのろとホウキに乗って戻る…と言うより、ホウキにまたがり歩いている。
ホウキに乗るにはわたしには、まだ時間がかかりそうだ。
わたしは魔法協会の中を歩き、ラーロさんの研究室の扉をノックした。
ミルちゃんに「ラーロ帰ってきてよ!」と、聞いたから。
欲を言って一時間、出来たら三十分はラーロさんに魔法を習いたい。
「はーい」
ノックの後に部屋の中から、ラーロさんの声が聞こえた。
「ラーロさん、よろしいですか?」
「おっ、シャルちゃん? 扉は開いてるから入っていいよ」
入っていいと言われて、扉を開けたけど部屋の中に驚く。
「…失礼します、ラーロさん……今日もよろしくお願いします」
お父様以上の書類の山。書斎やソファーが書類やら本に、魔法道具で埋まっていた。その書類の中でゴソゴソ動くラーロさんがいた。
「シャルちゃんごめんね、少し待ってて」
「は…い」
ラーロさんが書類を探すたびに、書類の雪崩が起きてしまい、入り口付近に立つわたしの足元にまで、書類の波がやってきた。
その、書類を見ていいものかと迷う。
あっ、また雪崩れた!
「探しますか?」
「いいや、必要な書類は見つけたから大丈夫」
書類を見つけたのか書斎に戻りハンを押す、ハンを押された書類は、ラーロさんの手を離れてふわりと浮き上がると、目の前でパッと消えた。
(まっ、魔法の書類⁉︎)
「ふふっ、気になった?」
「はい、とても」
と言うと、ラーロさんは何も書かれていない紙を、一枚手に取った。
「ここで使用されている紙はね。それぞれに魔法陣が裏に描かれているんだ、シャルちゃんこれを見てみて」
ラーロさんが紙の裏を裏返すと、その裏には緑色の魔法陣が描かれていた。
「魔法陣は合計で七色あるんだよ。色によって届く場所が変わるんだ。これ以上、詳しい事は言えないけどね…さぁ、時間もないから始めようか」
「お願いします、ラーロさん」
湖で青桜の木を育て始めたすぐの頃。魔法協会のラーロさんの元を訪れて『聖女の力』を使わず回復魔法を覚えたいと伝えた。
それは、シーラン様やリズ様にリオさんは「大丈夫だ」と言う。
ーーしかし、わたしは。
皆んなが訓練で作る傷がどうしても、気になっていた、その傷を気付かれずに治せないかと考えた。
傷薬をぬる。薬草ジュース。回復魔法! それだと思い付く。
わたしの真剣な願いにラーロさんは笑い『なんだ、チビ竜達のためか』と、すぐにラーロさんに、わたしの思いは見破られていた。
ラーロさんとの魔法訓練の前。
「魔力が回復していないね。先ずはこれを飲もうか」
ラーロさんは書斎の引き出しを開けて、見慣れた茶色の瓶を出した。
(……出た!)
それはアル様特製ポーションだ。わたしはそれをラーロさんから受け取る。
回復魔法を教えてもらう条件には、このポーションを飲む事が入っている。
魔力切れを起こさない為でもある。
茶色の瓶の蓋を開けた瞬間から、薬草の独特の匂いがする、目を瞑り特製ポーションを一気に飲み干す……苦い、渋い…うっうう、ラーロさんに飲み切った瓶を見せた。
「飲み終わりましたよ、ラーロさん!」
「わかった。では、回復魔法の訓練を始めようか……と、言いたいけど、先ずは書類を片付けるのを手伝って欲しいな」
「はい、わかりました」
足元に散らばった書類を片付けてから、ラーロさんとの魔法訓練が始まった。
♢
魔法訓練にチシャの葉の納品。それら全てが終わり癒やしの木の下へと戻って来た、わたしの手にはバスケットが握られている。
ラーロさんの家のキッチンを借りて、マリーと一緒にチシャの葉のサンドイッチを作り、林檎のジャムにスコーンを焼いた。
そっと、足音をださない様にみんなの所へと近付くと、シーラン様達はまだ眠っているみたい。
(竜人王様との訓練で、相当疲れたのね? 寝ている間にやってしまいましょう)
バスケットを近くに置き、わたしはシーラン様の頬の傷にラーロさんに習った『ヒール』を掛けた。その後に、手にも出来ている擦り傷や切り傷を治した。
次は隣で眠るリズ様の傷、そのお隣のリオさんの傷と次々と傷を治す。
(これで、よし!)
『ヒール』のお陰で、みんなの傷が綺麗に治ったのを見て、ニマニマしていた。
安心と疲れが来たのか、それともみんなの寝顔を見たからか、目蓋が重くなり眠気がやって来る。
「ふわぁぁっ、わたしもみんなが起きるまで、お昼寝をしようっ、と!」
明日の午後にラーロさんは毒の花を見にアル様と、獣人の国ルーベスを見に行くと言っていた。
わたしも「行きたい」とラーロさんにお願いをしたし、みんなにもどうするかを起きた後で聞かないと……シーラン様の横に座ると、癒やしの木に寄り掛かり目を瞑った。
♢
(……眠ったか)
しばらくして、シャルロットは眠ったのか寝息が聞こえた、俺はそれを聞き目を開ける。
俺が目覚めた事が分かったのか、隣に座る兄上とリオも目を覚ます。
「シャルロットちゃんは眠ったか?」
「ええ、兄上……気付きましたか? シャルロット嬢は新しい魔法を覚えた様だ」
「そう、みたいだね。訓練で出来た傷が綺麗に治ってるから、癒やしの木のお陰だと思っていたが、そうではなかったんだなー」
「シャルロット様が『ヒール』を使い、私達の傷を綺麗に治されました。余り無理をなさらない様にして、いただきたいものです」
俺の隣で肩に寄り添い眠るシャルロット。
君を何者からも守りたくて、竜人王様に頼んだ訓練なんだが、余計に心配をかけてしまったか。
寝ているはずの、シャルロット嬢が両手を前に出す。
「…むにゃ…ヒール…シーラン様の傷は治った?」
「なんて君は! 夢の中でまで俺の傷を治しているのか……ははっ、シャルロット嬢には勝てないな」
君が前に進むのなら、俺は離れず横に並び、一緒に前に進もう。
(守るよ、シャルロット嬢)
三十分くらい過ぎた頃に目が覚めたのか、すでに起きていた俺達を見て「お腹すいた? あの、これ食べよう」と、恥ずかしそうにバスケットを差し出した。
「シャルロット嬢が作ったのか?」
そう聞くと、シャルロット嬢はコクリと頷く。
「マリーと一緒に作ってきたの……みんなで一緒に食べよう」
と、はにかむように笑いながら言った。
「…さてと」
みんなを起こさないようにそっと立ち上がると、ラーロさんに魔法を習いに魔法協会へと向かった。
その後はお父様と荷馬車で森に出かけて、チシャの葉とひよこ豆を育てて、魔法協会に納品。
ラーロさんの家にいるマリーに最近料理を習い始めた。
まぁ、腕前は……普通のチシャの葉サンドに、形の悪い卵焼きが作れるようにはなった…
(まぁ、味の保証は……まだ、ないんだけどね)
帰りは魔法訓練をしながら、のろのろとホウキに乗って戻る…と言うより、ホウキにまたがり歩いている。
ホウキに乗るにはわたしには、まだ時間がかかりそうだ。
わたしは魔法協会の中を歩き、ラーロさんの研究室の扉をノックした。
ミルちゃんに「ラーロ帰ってきてよ!」と、聞いたから。
欲を言って一時間、出来たら三十分はラーロさんに魔法を習いたい。
「はーい」
ノックの後に部屋の中から、ラーロさんの声が聞こえた。
「ラーロさん、よろしいですか?」
「おっ、シャルちゃん? 扉は開いてるから入っていいよ」
入っていいと言われて、扉を開けたけど部屋の中に驚く。
「…失礼します、ラーロさん……今日もよろしくお願いします」
お父様以上の書類の山。書斎やソファーが書類やら本に、魔法道具で埋まっていた。その書類の中でゴソゴソ動くラーロさんがいた。
「シャルちゃんごめんね、少し待ってて」
「は…い」
ラーロさんが書類を探すたびに、書類の雪崩が起きてしまい、入り口付近に立つわたしの足元にまで、書類の波がやってきた。
その、書類を見ていいものかと迷う。
あっ、また雪崩れた!
「探しますか?」
「いいや、必要な書類は見つけたから大丈夫」
書類を見つけたのか書斎に戻りハンを押す、ハンを押された書類は、ラーロさんの手を離れてふわりと浮き上がると、目の前でパッと消えた。
(まっ、魔法の書類⁉︎)
「ふふっ、気になった?」
「はい、とても」
と言うと、ラーロさんは何も書かれていない紙を、一枚手に取った。
「ここで使用されている紙はね。それぞれに魔法陣が裏に描かれているんだ、シャルちゃんこれを見てみて」
ラーロさんが紙の裏を裏返すと、その裏には緑色の魔法陣が描かれていた。
「魔法陣は合計で七色あるんだよ。色によって届く場所が変わるんだ。これ以上、詳しい事は言えないけどね…さぁ、時間もないから始めようか」
「お願いします、ラーロさん」
湖で青桜の木を育て始めたすぐの頃。魔法協会のラーロさんの元を訪れて『聖女の力』を使わず回復魔法を覚えたいと伝えた。
それは、シーラン様やリズ様にリオさんは「大丈夫だ」と言う。
ーーしかし、わたしは。
皆んなが訓練で作る傷がどうしても、気になっていた、その傷を気付かれずに治せないかと考えた。
傷薬をぬる。薬草ジュース。回復魔法! それだと思い付く。
わたしの真剣な願いにラーロさんは笑い『なんだ、チビ竜達のためか』と、すぐにラーロさんに、わたしの思いは見破られていた。
ラーロさんとの魔法訓練の前。
「魔力が回復していないね。先ずはこれを飲もうか」
ラーロさんは書斎の引き出しを開けて、見慣れた茶色の瓶を出した。
(……出た!)
それはアル様特製ポーションだ。わたしはそれをラーロさんから受け取る。
回復魔法を教えてもらう条件には、このポーションを飲む事が入っている。
魔力切れを起こさない為でもある。
茶色の瓶の蓋を開けた瞬間から、薬草の独特の匂いがする、目を瞑り特製ポーションを一気に飲み干す……苦い、渋い…うっうう、ラーロさんに飲み切った瓶を見せた。
「飲み終わりましたよ、ラーロさん!」
「わかった。では、回復魔法の訓練を始めようか……と、言いたいけど、先ずは書類を片付けるのを手伝って欲しいな」
「はい、わかりました」
足元に散らばった書類を片付けてから、ラーロさんとの魔法訓練が始まった。
♢
魔法訓練にチシャの葉の納品。それら全てが終わり癒やしの木の下へと戻って来た、わたしの手にはバスケットが握られている。
ラーロさんの家のキッチンを借りて、マリーと一緒にチシャの葉のサンドイッチを作り、林檎のジャムにスコーンを焼いた。
そっと、足音をださない様にみんなの所へと近付くと、シーラン様達はまだ眠っているみたい。
(竜人王様との訓練で、相当疲れたのね? 寝ている間にやってしまいましょう)
バスケットを近くに置き、わたしはシーラン様の頬の傷にラーロさんに習った『ヒール』を掛けた。その後に、手にも出来ている擦り傷や切り傷を治した。
次は隣で眠るリズ様の傷、そのお隣のリオさんの傷と次々と傷を治す。
(これで、よし!)
『ヒール』のお陰で、みんなの傷が綺麗に治ったのを見て、ニマニマしていた。
安心と疲れが来たのか、それともみんなの寝顔を見たからか、目蓋が重くなり眠気がやって来る。
「ふわぁぁっ、わたしもみんなが起きるまで、お昼寝をしようっ、と!」
明日の午後にラーロさんは毒の花を見にアル様と、獣人の国ルーベスを見に行くと言っていた。
わたしも「行きたい」とラーロさんにお願いをしたし、みんなにもどうするかを起きた後で聞かないと……シーラン様の横に座ると、癒やしの木に寄り掛かり目を瞑った。
♢
(……眠ったか)
しばらくして、シャルロットは眠ったのか寝息が聞こえた、俺はそれを聞き目を開ける。
俺が目覚めた事が分かったのか、隣に座る兄上とリオも目を覚ます。
「シャルロットちゃんは眠ったか?」
「ええ、兄上……気付きましたか? シャルロット嬢は新しい魔法を覚えた様だ」
「そう、みたいだね。訓練で出来た傷が綺麗に治ってるから、癒やしの木のお陰だと思っていたが、そうではなかったんだなー」
「シャルロット様が『ヒール』を使い、私達の傷を綺麗に治されました。余り無理をなさらない様にして、いただきたいものです」
俺の隣で肩に寄り添い眠るシャルロット。
君を何者からも守りたくて、竜人王様に頼んだ訓練なんだが、余計に心配をかけてしまったか。
寝ているはずの、シャルロット嬢が両手を前に出す。
「…むにゃ…ヒール…シーラン様の傷は治った?」
「なんて君は! 夢の中でまで俺の傷を治しているのか……ははっ、シャルロット嬢には勝てないな」
君が前に進むのなら、俺は離れず横に並び、一緒に前に進もう。
(守るよ、シャルロット嬢)
三十分くらい過ぎた頃に目が覚めたのか、すでに起きていた俺達を見て「お腹すいた? あの、これ食べよう」と、恥ずかしそうにバスケットを差し出した。
「シャルロット嬢が作ったのか?」
そう聞くと、シャルロット嬢はコクリと頷く。
「マリーと一緒に作ってきたの……みんなで一緒に食べよう」
と、はにかむように笑いながら言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5,527
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。