鉄帽の碑(餓島)

<屑カゴの小説から>
       日本の戦争
 ガ島・転進(撤退)『八十周年記念』作品

  島の砂浜から日本兵の兜が出てきた。

自分(日下勇作・クサカ ユウサク)は陸軍士官学校を経て、出身地の「第2師団仙台若松歩兵第29連隊」にて編制された。
階級は「陸軍少尉」である。

 ジャワ島からの乗船時、「目的地」は知らされていなかった。
数日の航海の後、他の輸送船と合流、更に船は赤道近くを東進して行く。
船は急に敵の潜水艦から身を守る為、蛇行運航に入る。
暫くして突然、拡声器から、

 「この船は、これからソロモン諸島ガダルカナル島に向かう」

の発令があった。
第一次総攻撃に於ける川口支隊の壊滅を経(へ)た、『ガ島奪還の第二陣』である。
自分は入隊当初から「死」は当然、覚悟していた。
暫くして拡声器から、

 「総員、甲板に集合~!」

の号礼がかかる。
兵装を整え、急いで甲板に集合する兵士達。
全兵の士気は上がっていた。
第2師団長「丸山政男中将」の力強い訓示が始まる。

 「これより、ガダルカナルの奪還作戦を開始する。七度(タビ)人として生まれ変わり、朝敵を誅(コロ)して国(天皇)に報(ムク)いんの例(タト)えあり。死しても百鬼(幽霊)と成り目的を敢行すべし!」

佐伯陸軍少佐の悲鳴の様な号礼が掛かる。

 「全兵、皇居に向かって、奉げ~銃(ツツ)!」

 揚陸後、突撃開始。
数十分、いや数分? 
猛突進後、胸と頭に貫通銃創を受けて自分は死んで居た。

 この作品は戦後八十年、転生した再生兵達がこの小さな島で如何に戦い、『一万一千名もの兵士の撤収』を支えたかを『若松歩兵第29連隊日下勇作少尉(享年二二歳)の再生兵』を通して描いて行きます。お楽しみ頂けたら幸いです。

       参 考
  死者19,200人
  内、戦闘による死者8,500人
  *餓死・戦病死10,700人
  転進兵(撤退兵)10,652人

* なおこの作品は、著作権を放棄したものではありません。
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