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第2章 魔法の使える世界

第6話 世の中での魔法の波紋

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「皆さんご存じの通り、本日未明から魔法と思われる力を使えるようになっています。しかし、不用意な魔法による事故も多く。一時的ではありますが、混乱も発生しております」

「この状況を鑑み、早急に魔法に対する法整備と、国民への教育体制を整えます。意識するだけで発動するため、自制を心掛け、小さな子供さんには、特に周りが気を付けてください。また進展があれば、報告させていただきます」



 と、魔法が使えるようになった5日前、政府は急遽発表をしたが、それからも進展はほとんどなかった。

 それも当然で突然現れた現象。だれも魔法についての詳しいことは不明で話にもならず、打開策として有識者を召致することが決まった。作家やクリエイターを集め話を聞くと、延々と口にされる魔法談義。それにより政府関係者は先の見えない沼に沈むことになる……。

 そう、魔法の世界も人の数だけ創造され、発信されていく。魔法の世界もまた広大であった……。

 そして日夜議論され決定された結論は、特に規制はしないが、犯罪や事故に魔法の介在が認められた場合、量刑や過失割合が重くなることがある。と言うことであった。


 なお、魔法講座について、現在ダンジョンで活動している人間を講師として招き、開設する準備を進めている間に、民間の魔法講座が大量に開講されていた。

 そのため、すでに開設されている民間の魔法講座に、国として基礎的教育方針を指示して、簡単な精査で許可を発行する対応に切り替える事となる。
 すでに集めた人員は、保育園を含む教育機関に派遣して回すこととなった。

 野党は、免許制度を推進したが、誰もが使える状態でなんの意義があると一蹴されたが、後にマスターライセンス制度という、熟練度によるクラス分けがされることとなる。
 


 冬のある日。目が覚め、ズルズルと体を引きずりながら洗面台に向かう。そして鏡を見る。
 鏡に映っている…… たぶん俺を見て、俺は言った。

「あなたはだあれ?」

 鏡には何故か真っ白な…… 燃え尽きたぜ…… 真っ白にな…… と言ったときの矢○ジョーか、はたまた火閻魔人の桃源○那美か……
 なぜか、真っ白になっていた…… 気になった俺は、そっとズボンの中を覗く。

 なぜか、真っ白になっていた……。

 落着しかかった、カンヤヒャウ問題なんか話にならない。

 通りかかった、美月が、
「あれ、一司イメチェン? かっこいいよ」
 と、お気楽に言って来た。

「朝起きたら、この状態だった……」
「イメチェンで脱色したんじゃないの?」
「誰が、そんな事をするんだよ、そんなに若くないし」

 一応俺のことを心配したのか、
「病院へ行く?」
 と言って来た、だが俺は、
「んー……何科だ?」
 と返す。

 聞かれた美月は、少し考えて、
「皮膚科かな?」
 と言って来た。よし、その言葉、信じてやろうぞ。

 おれは珍しく、美月の言葉に従い、近所の皮膚科へ行く。
 ここはヤブで有名だがいているので重宝する。

「神崎さん、神崎一司さ~ん」
「……待合には、俺一人しか居ないんだから、呼ばなくてもわかるだろう」
 ぼやきながら、診察室へ入って行く。


 中に入ると、先生がくたびれた顔をして聞いてくる。
「今日はどうされました、なんの病気ですか? ……とりあえずズボンおろしてち○ちん出して。サンプル取って培養するから。若い子はすぐに生でしようとするから、最近また梅毒が増えちゃってねぇ。大変なのよ」
 そんな事をぼやきながら、検体用スピッツの袋を破り始める。

「……いや、病名はわからないんですけど。朝起きたら体中が真っ白になっていまして、とりあえずここへ来たんですけど……」
 それを聞いて、怪訝そうな顔をする先生。
「兄ちゃん若そうだし、その辺でお姉ちゃん拾って、生でしたら病気もらったわけじゃないの?」
「拾っていません」
 その瞬間、ガーンという表情をして、取り出しかかっていた、検体用のスピッツと綿棒を片付ける。それ専用の滅菌タイプだよな。開けたのに戻していいのか? それと、お姉ちゃん拾っていないだけで、なぜそんなに驚く。

 一応、悩んだようだが、
「うーん、色素の脱落ねぇ。通りすがりの魔人○ウと戦ったとか。朝仕事に遅れかけて、トースト咥えて走っていたら、曲がり角でぶつかったかわいい子が気に入って、何か言いたそうにしているのに、無視して強引に告白して、やっとOK貰って彼女にして、周りに言いふらしたら男の娘だったとか。なにか強烈なストレスを受けました?」
 そんな、質問が返って来た。

 途中のシチュエーション要らんだろ。
「長いよ……。そんな覚えはないんですけれど……」

 暇なのか、さらに質問が来る。
「道端に落ちていたデーモン・コアでも拾って、たまたま持っていた炭化タングステンで囲っちゃって、臨界状態になったから強烈な放射線浴びたとか……」
「そんな物どこに落ちているんですか、落ちていたほうが問題ですよ。それに炭化タングステンなんて持ち歩いていません、まったく覚えはないです……」
 これ、まともに答える必要あるのか?

「う~ん、分からんな? こんな所へ来ても、だめな感じの症状だよね。ちゃんとした病院に行って診てもらったほうがいいよ。とりあえず大学病院に紹介状書きますから、また下《しも》の病気でももらったら来てね」

「はい? しもの病気なんてもらってないですし、もらうこともないです…… たぶん? ……紹介状はお願いします」
 自分で、こんな所って……なぜか、すんごい疲れた。

 一言言ったら、話が続いた。
「もらうこともないって? だめだよ、梅毒とかキスでも感染るからね。出会ったら最初にひん剥いて、梅毒性バラ疹確認するのがおすすめだよ」
「はーい、気をつけます…… ってそれをすると、おれ捕まりますよね。いま絶対、良い子は真似しちゃだめのテロップ出ていますよね」

「3秒以内なら大丈夫」
 とサムズ・アップする先生……
「絶対だめでしょ……」

 すごく疲れた。会計時に伝票を見たが、無駄にしたスピッツは請求されていなかった。あれ、別の人に使わないよね。


 2日後、大学病院の皮膚科。

「突然真っ白ですか…… 白斑にしても…… うーん。検査、ちょっとサンプル貰って生検と、血液検査ですね。それと海外とか出てないですよね」
「海外は行っていないです、ダンジョンには潜っていますけれど」
「ダンジョンか…… なにか浴びた可能性もあるのか…… ちょっとまってください」


 どこかに行って帰ってきた先生は、右手に奇妙な筒の付いた機械を持っていた。
「おまたせしました。ちょっと計測したいので、すいません、立ち上がっていただけますか?」
「それはなんですか?」
「ああサーベイメーターと言って空間線量計です。放射線量が計測できます」

「放射線ですか?」
「ええ放射線を浴びると遺伝子とかに傷が出来て、他にもいろんな症状がでてひどいとやけどの症状とか…… 吐気とか倦怠感とかありませんか?」
「特には、ないです」

 上から下まで測り、特に胸部と喉、胃の辺りそれと肝臓かな? その辺りを念入りに調べる先生。
「フーム、内部からの線量はありませんし、甲状腺の腫れもありませんから、なにか線源になるような放射性物質を吸ったとかではなさそうですね。一応胸部レントゲンも撮っときましょう」



 放射線科でしばし待ち。うえーいとのりのりで撮影をして、動かないでと怒られる。
「おまたせしました、血液関係は異常なしです。けれど胸部レントゲンで変な空間が胸にできていますけれど、これは何でしょうか?」

 なんで患者に聞くんだ。
「空間ですか?」
「ええ、3cmくらいの、ここです」
 先生の示す所は、剣状突起から上に5~7cmくらいの胸骨体の内腔、心臓の脇に丸く抜けた所がある。

「息がしにくいとか、変な圧迫感はありませんか?」
「ええ特には感じません」
 と不安なことを言ってくる。
「じゃあ大丈夫かな? なにか違和感とか出たら、また来てください。大きくなっているようなら取ったほうが良いかもしれないですな」

「それで、この白くなったのはどうしてなんですか?」
「それですが、原因不明です。検査での問題でも異常はないし、なにか問題が出れば対処するくらいですかね。まあ感染症とかでもないようですし、イメチェンということで、良いでしょう。はたら○細胞の白○球みたいで、なかなかいけていますよ」

 と先生が白い歯を煌めかせながら、親指を立ててくれたが…… 微妙に嬉しくない……。

「ありがとうございました」
 まあ問題ないなら良いか。診察室を後にする。



「彼が神埼君か。細胞も採取したんだろう?」
「ああ、網場(アミバ)先生。ええ採取しています」
「遺伝子解析にも回しておいてくれ。彼は気がついていないだろうが、無意識だと採血用の21Gの針が全然刺さらなかったらしい。看護師が採血するから針を刺しますよと言って、意識を向けてもらうとやっと針が通ったようだ」

「昨今の魔法のせいなのか、未知の物質による汚染か。ダンジョンに入っている人間はかなり変質しているようだからな。これからの研究において重要なテーマの一つだ、研究をすすめれば、秘孔だけではだめだった奇跡も起こせるかもしれん。彼にもいつでも連絡を取れるようにしておいてくれ」
「はい」

「神埼一司くん、研究対象、登録……と、しかし網場先生って研究熱心だけどちょっと怖いよな……やばい実験をしているって噂もあるし……」
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