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第4章 少しずつ変わって行く世界

第48話 収穫

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〈バレたか。まあいい。こいつがモンスターなのは本当だ。そうだな、君、倒してくれ〉
 念話が来て、芳雄を指し示す。

「えっ俺ですか? 一司さん」
 と、言ってこっちを見るが、俺は真魚に襲われている最中で、キス攻めにあっていた。
「真魚。おまえ何やっているの?」
 芳雄も驚いている。

「まあ御使命だ倒せ。お前の為にもなるだろう。相手は俺の知り合いだ」
 ※御使命 与えられた役割。指名でも良いですが、上位者からの命令として使命を使用しています。

「えっ、そうなんですか。じゃあ」
 そう言って、結構高出力の炎を容赦なく撃ち込む。
〈うん。いいな〉
 そう言いながら、黒い煙となって消えて行く。

 当然ながら、芳雄の前にはクリスタルが浮いている。
 手を伸ばすと、胸に吸い込まれていく。

「うっ。があああぁ」
 芳雄がうめきだし、みゆきが癒そうとするので
「ああ大丈夫だ。体がなじめば落ち着く」
 そう言って止める。
 だが、みゆきは、
「でも。こんなに苦しんで」
 と言って、おろおろくるくるしている。

 俺の時とは違うな。
 あの時フレイヤは喜んで魔石を集めに行ったし? あれ? 芳雄は1個目だよな。1回目でこんなにくるのか? そう思っていると、体が光り出して体格も変わりスーパー芳雄が出来上がった。
「ああ。肉体があるのはいいな。力は貸すが、しばらくなじむまでは、寝るからな」
 そう言って、目を閉じる。

「一司さん。これは一体?」
 当然だが、みゆきが聞いてくる。
「お前と一緒だよ。中に居るのは孔雀様だ。問題があるとすれば、俺より上位だ。だが、おまえの中に居るのも、多分菩薩様クラスだから問題ないだろう。そして真魚。いい加減にしろ」
「冷たいわねあなた。久しぶりなのに」
 さっきの光は、きっと孔雀様のいたずらで、記憶を起こしやがったな。

「今の自分の状況は、理解しているだろう」
 そう言うと、一瞬きょとんとするが、
「そうね。自重するわ。……今はね」

「おーい。誰でも良いからクリスタルを取れ。場所はあそこだ」
 そう言って、壁を指し示す。

 一翔が走って行く。

 芳雄はすぐに目を覚ましたが、自分のマッチョな体に驚いていた。
 服を買わんと、ズボンもぴちぴちだな。

「これは一体? 何がどうなって?」
 霞ちゃんが、聞いてくる。
「気にするな。それよりお前だけ宿題だ。魔力操作をしろ。一日中。分かったな」
「でも。うまくできなくて」
「なら、なおさらだ。うまくできるまで、ずっとだ」
「えー」
 文句を言ってくるから、威圧をかけ、じろりと睨む。

「はーい」
 すると、一応返事はしたが、どうなる事か。


「よし。行くか」
 そう言って、フルーツなテーマパークに併設されたフルーツカフェへ向かった。
 食べていると、中学生たちが横の冒険コースを見たいと言い出す。
 まあいいかと、チケットを買い。入ってみた。 
 フルーツのゾーンや、色んなゾーンがありスタンプを集めていく。
 色々な所に色々なシーサーが飾ってあり、楽しめたようだ。

 特に神音ちゃんは、こういう所は初めてらしく、中学生らしく楽しんでいた。

「神音ちゃんは、こういう所あまり来ないのか?」
「まったくです。学校の行事でもあれば別ですけれど、そんな暇があれば修行でした」
「じゃあ、水族館にも寄って帰るか」
 そう聞くと、皆も賛成が来たので、移動をする。

 こういう時は真魚も普通だな、目をキラキラさせて楽しそうだ。
 でかい水槽の脇で、軽食もとり一回り見た後、外にあるイルカの水槽に行った時だ。
 丁度ショーをやっていたのだが、俺たちが現れた瞬間。プールサイドに集まってきてショーが中断されてしまった。
 誰に従っているのか…… ああ、みゆきか。

「ダメだな、帰るぞ」
 俺がそう言ったとき、ボソッとみゆきが
「舞い踊れ」
 と呟く。

 するとイルカたちは、我が意を得たりと言う感じで、自由に乱舞を始める。
 3匹が揃った、伸身宙返りのひねりが入ったものは、なかなか見事だったが、飼育員さんは当然涙目だ。


 皆は満足して、ジンベイザメや亀のぬいぐるみを買い込んで帰った。
 特に、始めて来た神音ちゃんは、終始口を開けたままきょろきょろと見て回り、大水槽の所ではしばらく離れなかった。そのために軽く飯を食ったのだが。
 俺は、ジーマーミ豆腐と海ブドウを買って帰った。
 

 神音は思っていた。
 こんな所があるなんて、壮二君と出会ってから世界が変わった。
 今までは、神社と山そして滝がすべてで、友達と話をしても話が合わず、遊びに行くことも許されなかった。

 それが、ガラッと変わった。
 口伝として伝えられた非常識なことは現実となり、力を得てそれを使う。
 でもそれ以上に、一司さんは瞬時に色々な所へ行き、私たちも色々な物が見られる。
 ここだって、壮二君達は2度目だと言うけれど、人の作ったと言うのが信じれないほどの施設。あの大きな水槽の中で泳いでいた魚たち。
 今度一司さんにお願いして、お母さんを連れて来てあげたい。

 家へ帰ると、美月が徘徊していた。
 真魚と会った瞬間。
 二人の額から、紫電の雷が放たれスパークする。
 美月は、「そうなの」とだけ言い。真魚は微笑む。
 俺は、
「家の中で、雷を飛ばすな」
 と言って、二人の頭に拳骨を落とす。

 そして、真魚から美月にお土産のぬいぐるみが渡され、なぜか二人が笑い合っている。
 まあ良いけれど、町は破壊するな。心の中で切に願う。

 その後、速やかに芳雄の服を買いに行った。
 制服も、着られなかったからな。
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