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第5章 空間崩壊と混ざり合う世界

第4話 世界の一部で起こった小さな騒動

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 クリスタルを得た者の中で、一部の物は一斉に行動を起こす。
「この体、使えねえ。器としては良いんだが、鍛え方が足りない」
 突然そんな事を言い出して、周りは驚く。

「おい隆二。お前突然どうしたんだ?」
 おれは、楡川 隆二(にれかわ りゅうじ) 大学生20歳。連れ4人とダンジョンで小遣い稼ぎをしていた。
 さっき現れたクリスタルは、伸ばした手を無視して、胸へと吸い込まれた。

 その後、すぐに出て来た、オーク。
 無造作に殴り飛ばして霧散させる。

 そこで、さっきの連れの言葉だ。

「さあな。今日は帰る」
 魔石を拾いながらつぶやく。
 ここは大学の近くにあるダンジョンで、週に1~2回。小遣い稼ぎに来ていた。
 俺たちは、まだ5階以上は行くなと、管理人に言われているレベルだ。

「待てよ。まだ3階だぞ。倒したモンスターだって、今のでまだ3匹目だ。ええと、お前が2400円で、俺のはゴブリンだから800円だ。帰っちゃだめだろう」
「分ったよ。一人いくら欲しい?」
「そりゃ、多けりゃ多いだけ」
「欲張るなぁ。分かったこっちだ」
 そう言って、隆二はずんずんと歩き始める。

 こいつどうしたんだ? 歩きだして、すぐにモンスターを見つける。そして、どんどん倒していく。遭遇率がおかしい。
 5階の階段を越えて進んで行く。
「おい不味いって、さっきの階段で5階が終わったぞ」
「大丈夫だ」
 そう言って、知らん顔で進んで行く。

 オークの群れに、オーガやホワイトウルフが混ざり始めて、俺達では目も体もついて行かない。
 ところがこいつは、出て来る前からモンスターに位置が分かるのか、出て来るはしから、殴る蹴るでガンガン倒していく。
「おい隆二。もういいよ帰ろう」
 誰かがそう言った。
「いいのか? なら帰ろう」
 そう言って、帰りもふらふら寄り道しながら、モンスターを蹴り飛ばして帰って来た。
 魔石を計数機に流して、皆に1万円ずつ渡して帰って行った。
「どうしたんだあいつ」
 そう言って、みんな呆然と見送った。




 平野 平太(ひらの へいた)25歳。
 先週、会社を首になった。
 会社自体も、かなりやばくて、首を切られたのは俺だけじゃないが。
 ハローワークの帰りに、ダンジョンへ寄ったが、3階以上には行くなとくぎを刺された。まあ3階でも、最近はオークが出て来る為危険は多い。

 だが、突然会う事はまずなく、気を付けていれば逃げられる。
 そんな事を考えたすぐ後、ちょっと見通しの悪い枝道がある曲がり角。
 突然、出会い頭にオークさん。

 最近言われ始めた『人も歩けばオークにあたる』とか『曲がる角にはオーク』事例に遭遇なんて、どんな確率だよ……。 
「あっ」
 なんてついていないんだと思いながら、脇道から出て来たオークをめがけて、思いっきりバットを振り回す。
 俺は死んだと思いながら、涙と鼻水をたらし、叫びながらひたすら殴った。

 なぜか、オークは棒立ちでされるがまま。
 俺はゴンゴンガンガン必死で殴る。
 すると限界を超えたのか、消えて行った。

 なんだったんだ今の? そう思った時に、目の前に綺麗な水晶? それがくるくると光りながら浮かんでいる。思わず手を伸ばす。

「ああ。行かなきゃ……。でも、こんな体じゃお役に立てない」
 俺はダンジョンを、後にする。


 藤原 音哉(ふじわら おとや)ホスト22歳。
 楽して金を稼ぎたいと思ったが甘くなく、成績が伸びない。先輩のヘルプに入らせてもらうが、それがせいぜい。
 仕方がなく、高校時代からの連れが、ダンジョンに通っているので、混ぜてもらう。
 一応チームが組まれていて、誘いと攻撃。フォローの3役があり、5階を超えて10階まで行ける。
「おーい。音哉行ったぞ」
「おー」
 そう返事をして、走って来るオークの向こう脛を思い切り殴る。
 もんどりうって転ぶオークに対して、攻撃部隊が滅多打ち。
 これがチームの勝ちパターン。

「もうお前、ホスト辞めて、チームに入れよ」
 そう言ってくれるのは、このチームをまとめている高校時代からの友人。ずっと柔道や空手をやっている。
 チームに居るメンバーも、格闘技や空手をやっている奴が多い。

「いやあ、たまに混ざるのは良いけど。やっぱ楽に生きたいし」
「そんなこと言って、本業の成績やばいんだろう?」
「げっ。何処でそんな話を」
「さすがに、ホストには通わんが、別の店で女の子に聞いた」
「狭いなぁ。女の子紹介してよ」
「お目当てがいるらしいから、駄目だろう」
「ああそれ、ダメです」

 そんな馬鹿話をしていたら、
「釣ったよ。オーガ」
 と、言い残してメンバーが駆け抜けていく。
 足音を聞き、タイミングを計る。
「うりゃ」
 ガンと手ごたえがあるが、硬い。
 さすが、オーガだぜ。

 ただ、転がす事は出来た。

 ガンガンと皆がタコ殴りにしていくと、やがて消えて行った。
「いやー。さすがオーガ固い」
 まで言ったところで、俺の前にクリスタル。
「何だこれ」
 と手を伸ばす。
 見ると、俺以外にも山中や南部の前にも浮かんでいた。

 山中 和樹(やまなか かずき) 20歳。格闘技。
 南部 寛人(なんぶ ひろと) 高校3年18歳 空手部。
 共にダンジョン探索チーム。
 蓮華(れんげ)の道のメンバー。

 皆の胸に、吸い込まれていく。

「なんだ今のは? 皆大丈夫か?」
「隊長。大丈夫です」
「こっちも大丈夫です。ですが、チームを抜けます」
 突然、山中が言ってくる。

「突然どうしたんだ?」
「すいません。俺も抜けます」
「南部お前まで、どうした?」
「しなきゃいけないことが出来たので。すいません」

 それを聞いて、おろおろしている奴にとどめを刺す。
「俺もだ。すまんな」
「いや、おまえば別にいいが、金大丈夫か?」
 あっさりそう言われて、思わず膝をついてしまった。
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