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第一章 事の始まり。あっちこっち

第4話 不穏な未来

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 夜明け前、部屋に戻る。

 ずるいことに、じいちゃんは今から少し、寝るそうだ。
「若いんだから、寝だめくらいマスターをしろ」
 俺の知っている寝だめとは、違う物が存在するようだ。

「睡眠のパラメーターを、分割管理しろ」
「どうやって?」
「知らん」
 どう考えても、適当のようだ。

 大体パラメーターって何だよ?
 調べた。
 パラメーターとは、数学用語では媒介変数のこと。 媒介とは受け渡しという意味で、受け渡しができる変数のことです。
 よくわからん。
 
 そして、学校に行く途中、また奴は捕まっていた。
 集落から小山を越えるルート。
 学校の裏へと続く抜け道とはいえ、少し行けば人通りが多い通りに抜ける所。
「なあ、絶対わざとだろ」
 状況はあれだが、見せたい性癖とか?

「違うわよ」
 声をかけてみたが、冷たいお返事。
 昨日と違うのは、パンツが少し色っぽい奴だった。
 さっさと助ける。

「あー。ひどい目にあった。うん? 今日は揉まなくてもいいの?」
「そうだな」
 そう言うと、杏の後ろだけ雷鳴が轟き、驚愕の表情。
 何でだよ。

「そっ。そうなんだぁ」
 そう言って、スタスタと歩き始める。
 なぜか機嫌が悪い。

 こうやって、後ろから見ると、育ったなあ。
 このご時世、肩までの黒髪で、適当に切りそろえた髪は良いとして、身長も、少し高くなって百六十ちょっとくらい?
 上から順に八十八、六十五、八十八だとか。

 少し細いのは、慢性的に食料が不足しているから。

 眉が細くされて、美人系なのは良いが、少しきつく見える。
 奥二重の、切れ長の目が、少しゾクゾクする。
 通った鼻筋と、薄い唇。

 俺が百七十五センチで、顔はまあ奥二重でおそろいだし、顎の線もほっそり目で、悪くないと思うけどなぁ。

「なによっ。今、お尻見てたでしょ」
 何の脈絡もなく、振り返りざまのお言葉。

「見てない」
「ホントに?」
 なんで残念そうに?

「うん」
 そう答えると、何か考え込み聞いてくる。

「その…… 私…… かわいくない?」
「うーん。どっちかというと、び……」
「やっぱり。いい」
 美人系だと言おうとしたが、走って行ってしまった。

「お年頃か?」


 もう。息吹に言われたとき、どうして素直に、うんって言わなかったんだろ。
「なあ、もう腐れ縁だ。他を探すのも面倒だし、付き合おうぜ」
 あの、適当に思いつきましたって言う態度じゃなきゃ、きっとうんて言ったのに。

「息吹のばか」
 声が大きく、周りの人が振り向く。
 げっ。恥ずかしい。もう。息吹のせいよ。

 周りに当たり散らしながら、奴は学校の門をくぐっていく。
 迷惑なやつ。


「うーす。先生。大作です。一次選考は通るはずです」
「おう。微妙だな。うーん? これ創作か? 事実か?」
 パラパラ読みをしながら、聞いてくる先生。
「検証したので、事実です」
 そう言うと、考え込む先生。

 実験の数々を、いえる部分だけ書いてある。
「人は魂と肉体を解放することで、上位の存在になれる。常識を捨てされ。その時、世の理は自身の味方となり、世界を助けうる力を得ることができるであろう。人よ、己が肉体。囚われている魂を解放しろ。解き放たれるのは今だ……」

 とまあ、多少大げさには書いたが、許されるだろう。

 これには、クリスタルを取り込み、一度死にかからないといけないが、そこは書いていない。

 じいちゃんから口止めされているし、実は、ダンジョンの奥に行ったからと言って、ぽんと置いてあるわけではない。
 空間的ゆがみのある壁を壊さなければいけないが、きっと、十センチ辺り一トンくらいの力が要る。
 じいちゃんは、まだ力を得る前なのに、ほいっ。とか言って、簡単に壊したが。

 大体、最初っからおかしいんだよな、妙に現象に詳しいし。
「まあ、そんな事もあるさ。ラノベが好きなんだ」
 とは言っていたが。


 そして、宇宙船は空間魔法を駆使して、長距離を飛ぶ。
 ゲートだったり、転移だったり。

 初めての所へ行くには、ゲートが多い。
 空間を曲げ移動をするが、向こうの状態が分からないと危険だからな。

 転移だと、向こうが惑星だったり、恒星だったり、リスクが高い。速度を保ったまま壁の中は避けたい。

「もう少しで、対象の星へ到着いたします」
「そうか……」
 派遣員。全権大使とも言うが、目的の第一位は、謝り許しを得ること。
 一方的な攻撃で壊滅状態。使用前使用後の影像を見た。

 クレーターだらけの大陸。

「許されると思うか?」
「さあ、私なら許しませんね」
「だよなあ」
 中央政府において、一番見目が良いという理由で選出され、よく分からないうちに、代表エイミー=エルズバーグ様に呼ばれた。

 そこで、任務内容を聞いて、驚く。
「そこは、かの英雄。勇者光希様の祖国かもしれない。君の対応に国の存続がかかっている。幸い、君達の種族は光希様に愛された種族。猫系獣人の力を存分にふるって、その…… 懐柔をしてくれ」

「はぁっ?」
「よし、良い返事だ。頼むぞ」
「いや、疑問……」
「見送りだ。急げー」
 あの、有無を言わさない出発式。
 あれは、私に死んでこいと言う意思表示で、失敗したらすべての責任がやって来る気がする。
 
 大体私は、単なる行政官。
 惑星ファジェーエヴァ。異常現象対策課。
 シーヴ=マリア=リナ=ヘイディーン。
 今は、特任大使という肩書きを貰った。

「日本国。勇者光希様の祖国」
 子供でも知っている英雄。

 怖い事を言っていた。
「勇者様がこちらに来られたのは、八百年も前だが、あの術式は不明なところが多く、光希様の知識から推測をするに、未来から招いた可能性もある」
「それは?」
 
 その瞬間、ものすごく、嫌そうな顔をした代表。
「ひょっとして、存命で今回の事件が、召喚の起点かもしれないと研究者が言っている」
 向こうに魔力が充満し、道が開いた可能性もあると言う事。

「光希様が、生きておられると……」
 あの失踪が、世界による揺り返しなどや、解明されていない干渉だとして、元の世界に帰っている可能性がある。

「そうだな。猫人族を気に入っていたようだし。上手くすれば、お手つきになって、お子を授かることも出来るかもしれんなあ。いやあ。羨ましい……」
 目を合わせることなく、そう言い残し、代表エイミー=エルズバーグは、足早に去って行った。
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