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第一章 事の始まり。あっちこっち

第3話 先制攻撃から始まる、お付き合いの難しさ

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 アンドロメダ銀河の、とあるところ。

 地球と似通った衛星を持ち、ハビタブルゾーン内に存在をして、水と大気を持った星の上に、これまた地球と似た炭素系生物が存在をしていた。

 だが地球よりも星が古く、また特殊な現象が起こったのか、別の切っ掛けがあったのか、マントルと核。星が冷えて来ていることが判った。

 その論文が出た後、早急に移住可能な星を探した。
 当然人の手では無く、中央マザーサーバがコントロールをする自動システムによって。

 だが、そのシステム。
 効率的運用では問題が出るため、揺らぎを創る人工的な感情回路を持たせていた。
 そいつが見つけた星に対して、勝手に宣言と、ついでに、環境調整を行った。

 移住先で、脅威となる現住生物の個体数を調整。都市と思えるところに攻撃。そのついでに、魔素を固まりにして降らせた。
 そう、地球に降ってきたのは、大きな魔石。魔結晶だ。

 そして、それを知った中央政府はパニックを起こす。

 マラートヴナ星系。惑星ファジェーエヴァ。
 中央政府マグナコーキ。

 代表エイミー=アンジェラ=リンジー=エルズバーグが、報告書を見たのは、すべての事後であった。

「これから、間借りでもしようというのに。ご挨拶前にいきなり先制攻撃。どうすれば収まると思います?」
 頭を抱えながら、議会の面々に問いかける。

「はっ、しかし…… 起こってしまったことは仕方が無いとして、事故だということで、交渉を始めませんか?」
「その場合、賠償から始まらないかしら?」
 エイミーは、あきれ顔で、議員を睨み付ける。
 切れ長の鋭い目。ある種ご褒美ともいえる。

「ああ、いえ。それで収まれば、良い方かと……」
 そう、彼の言っていることは正しい。
 得た情報の中に、私たちにとって、最悪の事実を発見した。

 調査対象。
 現地で、天の川銀河と呼称されている銀河に所属。
 さらに、渦を構成する、オリオン座腕と呼ばれる星の集まり部分から、少し外れた過疎部分に、その星は存在。
 原住民が存在している。
 そして、近年でも戦争を行っている、凶悪な種族。

 ファジェーエヴァ人からすれば、野蛮。
 まるで、何世紀も前。中世以前。
 大陸に王国が乱立し、血で血を洗う戦争乱が、歴史の中に存在をしていた。

 そこに、一人の勇者が現れて、圧倒的な魔法の力と剣技。そして緻密な戦略と政治手腕により、世界をまとめた。

 
 伝説の勇者は、黒髪黒目。神谷 光希かみや こうき。世界を統一し、平和な世界が訪れたとき、彼は忽然と姿を消した。

 元々はどこかの王が、教会の禁書庫に封印をされていた、その秘術を行ったとか。
 それにより、余所の世界から招いたとも言われている。

 そして、その時に光希が示してくれたもの。
 ファジェーエヴァ人が進む方向として、発電システムと、電動化。
 それによる、オートメーション化と半導体の理論。
 システム制御に関する理論と、交通インフラ。

 それと病気の蔓延を防ぐための、生活環境の整備として、上下水道などの各種インフラ整備。
 核融合炉と、そんな話を残した様だ。

 その時の指導者達には、理解ができなかったようだが、書かれていた説明に従い。ご先祖様達は努力を行った。

 中央政府の名称。マグナコーキは、偉大なる光希という意味を持つ。
 庁舎前の中央広場には、十メートルほどの大きさで、剣を突き上げる光希様の石像が、未だに樹脂強化を施されて残っている。

 何かを叫んでいるのは、ファジェーエヴァ人に対する鼓舞こぶだと言われている。
『ファジェーエヴァ人よ、人はわかり合えるものだ。平和の中で共に発展せよ』

 これは当時、敵対していた王国との戦闘中。
 女性士官と話し会いを行い。その時に言った言葉が元だと言われている。
「僕達もわかり合えたじゃないか。きっと、他の人たちもわかり合えるときが来るさ」
 彼女の頬にそっと手を添え、彼はそう言ったとか。

 この事は、双方の側近から隊に伝えられ、兵達が自主的に戦闘をやめた逸話だ。
 そう、国や指令部が命令をしても、従わなければ戦闘にならない。
 その事を事実として、歴史に示した。

 そこから、無能なものに従うな。その風潮が、一気に大陸を包んだ。

 歴史上の転換点。ファジェーエヴァ人においての、特異点とも言われている。
 
 だが歴史家によると、光希は恐ろしい人だとも伝えられている。
 敵対をして来た者達に容赦はなく、数万の死体が一瞬で作られたとも言われている。
 その歴史から消えた国は、ずるがしく、他国のものを盗み転売。
 近隣の村を蹂躙し、それを他国のせいにする。
 国同士の約定も守らず、国全体が盗賊のようであったらしい。

「あー。そう言う国は駄目だ」
 そんな国を見知っているようで、あっさりと彼はそう言って、一気に滅ぼした。そんな伝説が残っている。


 その故事に習い、政治体勢の基本としているのが我が国。
 清廉潔白。教えに従い、行動の中心に据えている。

 そんな国が。
 他の星を、いきなり先制攻撃。
 代表エイミー=エルズバーグが、頭を抱えた理由の一つである。
 
 そしてさらに、追い打ちをかける。
 情報の中に、とんでもない、危険なものを発見する。

 見知った文字と名前。
「日本国。そして日本語。黒髪黒目…… 日本人…… それは、光希様の祖国」
 歴史の授業で、国民全員。誰もが目にする文字。

 当然、それを知った絶望は、大きい。
 
 本来なら飛び上がり、国中に触れ回るべき情報。

 伝説の英雄。神谷 光希様の祖国を発見。
 この星すべての民が湧き上がり。国が主導でお祭りとなるような情報。

 ――だが、今回。
 この情報は、トップシークレットになった。

 秘密裏に、言い訳と陳謝の使節団が組織され、出発をする。
 胸も張れず、見送りも最小限。

 沈痛な雰囲気で、大恩人の星に向けて、それは送り出された。


 その頃。
「以上から、人はわかり合えるものだが、駄目な場合は殲滅すべし。立ち直れないほど徹底的に。点Pがどちらかは現状不明だが、動くのならば冷静に見極める必要がある。 神谷 息吹」

「宿題できたか?」
 気の変化を読んだのか、じいちゃんが、嬉しそうに呼びに来た。

「えー。今から行くの?」
「当然じゃ。技術は日々鍛錬。手を抜き、休むと枯れる」

 そうして俺は、日課のダンジョン巡りに突入する。
「もう十時だよ」
「宿題が終わらない、お前が悪い」
「ええっ……」

 どこかの国民的アニメの、旦那さんのような声が出た。
 そう、ま○おさんだ。
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