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第2章 広がる世界

第77話 勝政さん……REBORN 2

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 朝から、仕事場へ向かい。
 関係先に連絡をして、午前中が終わる。

 昼休みに役所へ向かい。
 離婚届を、破かれたりしてもいいように。5枚ほど失敬して来た。
 スマホにあったデータを、PCへと移し、それをさらに複製をする。

 1つは、SDカードにAVCHDへ変換して、保存。
 確か、うちのテレビは、SDカードを再生できたはずだ。

 もう一つ。フレームレートを24fps程度まで落とした、H.264コーディックのmp4へと変換。スマホへ戻す。これで、取り上げられて、消されても大丈夫。

 一応。知り合いの弁護士にも連絡。
 もめたらお願いと、連絡をする。

 相手の名前は、途中で叫んでいたし。
 見た感じ、うちと部屋の雰囲気が同じ。
 だから、同じマンションの気がする。必要なら調べよう。


 その晩に、妻に離婚届を突きつける。
 案の定。白を切って来たので、テレビのスロットへ。SDカードを突き刺す。
 その行動で、何かを察したのか。

「ちょっと待って。何を見せるつもり?」
「ビデオだよ」
「家の中を、盗撮したの?」
「家の中?」
 怪訝そうに聞き返す。すると、しまったという顔をする妻。
 いいや。もう、たんなる知り合いの女で良いな。

「そうか、家の中まで。引き入れて。していたのか」
 そう言って、ビデオを流す。

「昨夜。風呂から出てきたら。君が居なくてね。1時間しても帰らないから、電話をしたんだが。君は気が付かなかったようで、繋がらなかった。すると、すぐ折り返しの電話が来て。通話を受けたら、流れた映像がこれだ。これは、私に見せるため。わざと行った。悪趣味な行動ではないのかね? 残念ながら、妻と他人の睦事(むつごと)を見て、興奮する性癖は無くてね」

 そう言うと、しばらく放心状態だったが。自分の乱れた姿を見て諦めたようだ。
「分かったから、ビデオを止めて。届を書くわ。細かなことは、弁護士さんを通して決めましょう」
 そう言って、素直にサインをした。そして、自分の部屋へと戻り。ガサゴソと最低限必要な荷物を集めたのだろう。

 カギを、俺がビールを飲んでいる。テーブルの上に置くと。
 何も言わず。出て行った。

 そっと、後を付ける。
 なんとまあ。家の真下にある。部屋へと入っていった。

 根取 良男か、ねとり? 旧家の出身かな? 江戸時代に、そんな役職が、代官か何かにあった気がする。部屋番号と、名前をメモする。

 控えた男の情報と、あの女が取った不義の内容を、メールで弁護士へと送り。慰謝料請求の手続きを依頼する。

 翌朝。出先へ向かう途中。
 朝一で離婚届を提出。
 その後、週明けには、少なくとももう一基。発電機を調達すると、メーカーの部長さんと打ち合わせ。納品場所を確認。
「3台とも、同時に帰って来ても。大丈夫です」
 そう言って、にこやかな笑顔が帰って来る。

「制作してくれるのは、佐藤さんという方なので。彼の頑張り次第ですね」
「いやあ。この。魔石で動作する発電機。画期的ですよ。社長とも話をしたのですが。すでに、何十というレベルで。問い合わせが来ていましてね」
「それは良かった」
 こういう時の、笑顔は良い。心が癒される。
 家のことは、気にしなくて良くなったし。頑張ろう。


 その頃。
 どうして? 何が起こったの? あのビデオに映っていたのは間違いなく私。
 家で簡単にまとめた荷物を持ち、彼の家へと向かう。

 頭が完全パニックで、後ろを夫が付いてきているなんて。気が付く余裕なんて、ない。

 彼の家へ入り。落ち着く。
 スマホの履歴を確認する。
 確かに、私からの発信履歴がある。
 それも、4時間以上。

 今日。昼に起きて。充電が切れていたけれど。
 まさか、電池が終わるまで、映像を彼に、垂れ流していたなんて。
 キャリアの回線なら、パケット制限がかかるだろうが。この部屋は、自身の家に設置した、Wi-Fiに繋がってしまう。最悪だわ。
 昨日は、すごく良くて、舞い上がっていてから、無意識に触ったのかしら。

 彼と今日の出来事を話し合い。ばれる前に、引っ越しをすることに決めた。

 根取良男は、話を聞いて考えた。こいつとは、もう終わりだな。
 小遣いをくれるし、あっちもまあまあ。
 昨夜は何かやばいモノでもキメたのかという感じで。色々な事をしてくれ、そそられたが。引っ越しの時に、行先をごまかして逃げるか。

 だが、その晩も。晩飯の後、おかしなことになった。
 このおかずに、何か仕込まれている? ひょっとしたら、旦那は気が付いていて。確証を得るために、一服盛ったのか? だとしたら…… いや喰っても。俺は平気というのがおかしい。熱もないし。考えすぎか。


 その晩。勝政は、ちょっとご機嫌だった。
 久しぶりに、夜半まで仕事をして、家に帰る。

 玄関を開けて「ただいま」と言って、返事がないのはいつものことだが、電気がついていないのは少し寂しい。
 そんなことを考えながら、風呂の準備をして、台所へと向かう。
 残った、ブロック肉を薄切りにして、炒める。
 その間に、味噌汁を準備して。
 肉を焼くフライパンを火にかける。
 しょうゆ、みりん、酒、砂糖、ニンニクチューブを少しれて、さらに味噌を味噌汁に入れるついでに、すこし入れてみた。

 味噌汁と豚丼。それを晩飯にしながら、ビールを飲む。
 体全体に染み渡る気がする。

 早く寝ないと、数時間もすれば起きる時間だ。
「なんだか。疲れたな」
 そう言って、テーブルの上に突っ伏した。

 そこで、顔を上げると、なぜか白い部屋。
 椅子に座って。机に突っ伏したはずなのに。腹ばいに倒れていた。

 起き上がり、胡坐をかいて座る。だがすぐに、床が抜けたような浮遊感。

 また気が付くと。今度は、あおむけに寝ている。
 しかも。昼間のようだ。格好は、いつもの格好で、ネクタイとジャケットがないだけ。当然靴は無く。靴下だ。
 周りを見回して、見たことがあることに。気が付く。

 村へ向かって、歩きながら。
 自分の状態を理解する。

 風呂は、溜れば勝手に止まる。火は使い終わった後だ。
 電気は付きっぱなしだが、まあ、問題ないだろう。

 数日すれば、こちらへ神崎さんはやって来る。
 死後3日くらい? エアコンは、効いているし。そんなには傷まないだろう。

 そして、俺は。長尾さんに片手を上げて、挨拶をする。
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